【後編】作業服店から低価格アウトドアウェア市場へ業容を拡大/ワークマン

「ホワイトフランチャイズ」を実践、1500店舗体制へ



ワークマン

東京都台東区

小濱英之社長(52)



作業服専門店として40年間、地域密着型のチェーン店舗展開をするワークマン。個人向け作業服市場で圧倒的なシェアを誇る同社が、近年は「ワークマンプラス」の多店舗化で低価格アウトドアウェア市場を開拓し、快進撃を続けている。一方、FC運営では、設立当初から変わらない「加盟店ファースト」の精神で、ホワイトフランチャイズ経営を実践。2021年3月期のチェーン全店売上高は1466億円を記録した。加盟店の状況や新業態展開について、小濱英之社長に話を聞いた。

(ビジネスチャンス2022年4月号「トップインタビュー」より)


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小濱英之社長(52)

こはま・ひでゆき

1969年生まれ。群馬県出身。1990年ワークマン入社。2011年商品部海外商品部長に就任しPB製品開発を立ち上げ、高機能で低価格な製品づくりに取り組む。16年執行役員商品部長。17年取締役スーパーバイズ部長。18年9月、運営責任者としてワークマンプラス1号店を立ち上げ、客層の拡大に取り組む。19年4月、代表取締役社長(現任)。休日はPB製品を着用して釣りやトレッキングに出かける。

 


同社が目指すのは、100年の競争優位を築いていくこと。そのために加盟店と本部の関係がホワイトである「ホワイトフランチャイズ運営」を実践している。その結果、子どもなど2代目への継承率は47%、再契約更新率は99%を誇る。若者の加盟支援や店舗継承など、さまざまな支援制度も整えている。

 

契約終了時の在庫買い取り

引退時の退職金代わりに


――加盟契約年数が6年から3年になり、初期費用も約224万円と100万円以上安くなりました。ハードルが大分下がりましたね。

小濱 最近若い人の加盟希望者が増え、中には加盟金がないという方もいますので、初期費用を減額しました。


――契約継続期間も長いですよね。大体何年くらいですか。

小濱 2回目の契約を希望される方が99%です。ワークマンプラス前は加盟スタート時の店長の平均年齢が42歳でしたが、今は38歳と若くなりました。たとえば3年契約を10回更新で、68、69歳になりますから、30年加盟されて70歳くらいを定年というイメージで考えています。健康上の問題などがなければ長くやりたいという方が多いです。


――フランチャイズはどこも事業承継が問題になっていますが、御社で継承した店舗はどのくらいありますか。

小濱 FCを辞めたら99%は必ず次が決まりますので、決まらずに閉めるということはまずないです。よっぽどの赤字とか地主さんが土地を貸してくれなかった場合ぐらいですが、ここ数年赤字による退店はありません。


――人件費は売上の4・5%を推奨しているそうですが、アルバイトは何名くらいを想定していますか。

小濱 以前一番勧めたのは3名ですが、今はお店が忙しくなっていますので、希望は常に4名体制です。店長と奥さんとパートさんが2名体制でシフトを組むと、人件費はそれくらいになります。


――加盟時に店内在庫を約2200万円で購入するため、皆さん本部や銀行から借り入れします。その借り入れはどれくらいで返済する人が多いですか。

小濱 何年で返すかは、店長の考え方次第です。毎月返済していく人も、一括で入れてしまう人もいます。金利もありますので、銀行で借り、当社に一括で払う人もいます。当社は金融業ではないので、金利の引き下げはしています。今の平均売上から考えると、非常に負担だと感じている店長は少ないと思います。


――契約終了時に在庫を買い取ってもらえるというのも、他のFCでは聞いたことがありません。

小濱 日焼けしたものや期限がある電池や防毒マスクのフィルターなどは、当然廃棄しています。ただそれ以外のワークマンの商品は売り続けることができますので、次の店長に引き継げるものは基本的には全て本部で買い取ります。店長からするとそれが退職金みたいなイメージですね。


 

同社は粗利分配方式を採用している。コンビニチェーンなどでは売上高に応じてロイヤリティ率が変動し、売上増とともに本部に支払う額も増えるが、同社の場合、本部60%、加盟店40%の一定比率で分配する。そのため売上増に比例して、収入も増えていく。また副収入となる褒賞制度も充実しており、店長のモチベーション向上にも繋がっている。

 

粗利益を本部6対加盟店4で分配


――FCオーナーの手残りはどれくらいになるのでしょうか。小濱パートやアルバイトさんの人件費など全部引いて売上の1割くらいです。年商1億6000万円の方で1600万円ほどになります。


――褒賞制度(※詳細左下囲み参照)を年1回〜2回実施しています。これも年間平均で80万円〜100万円程の副収入になるそうですね。

小濱 もらっている店長だと年間で400万円くらいになる人もいます。最近は、「ステップ・アップ賞」がすごく多くなりました。店舗の平均売上が増えていますから、前年比101%以上で対象になる同制度は、もらえるお店が非常に多かったです。


――それは張り合いになりますね。これも御社独特の制度ですね。

小濱 他のチェーン店さんではないと思います。年商1億円を超すと「サクセス倶楽部」を目指すという流れが多かったです。結果、今はサクセス倶楽部が563店舗にも増えました。――すごいですね。みんなサクセスですね。小濱基準を年間1億5000万円に引き上げてますけど、平均売上が1億6000万円になっているんです。以前は5年、10年と連続サクセスを達成される方のお祝い会をやっていましたが、今はあまりに人数が増えてしまったため辞めてしまいました(笑)。


 

同社の成長を支えている1つが、「エクセル経営」。特に全社で取り組むのが、エクセルを活用したデータ分析だ。「ワークマンプラス」の品揃えをエクセル経営で決定したところ、各店の売上が大幅に伸び、同社の業績も急上昇した。一括発注できる需要予測システムの導入も進み、加盟店の効率化や売上増につながっている。


 

データ証明がSVの自信に繋がる


――御社は2014年からエクセル経営に取り組んでいますが、機会損失を防げる「未導入製品発見ツール」というのは、SVの方が独自に作られたのですか。

小濱 今まではSVが店長と売り場を見回りながら、POSデータと陳列台帳を見て在庫がない商品を確認して、店長に発注依頼をしていました。それを非常に苦労しながらやっていたSVが、各店舗の売れ筋商品や在庫がない商品をエクセルで分かるように作ったのです。


――データに基づいているので、SVの方が自信を持って店長に話ができるようになったそうですね。

小濱 売れ筋商品の店舗平均の販売数など、実際のデータで証明していますから、「店長、これを発注すれば売上がこれだけ上がりますよ」と言えますし、店長も「じゃあ発注しよう」となります。


――一括発注ができる需要予測発注システムも随分導入が進んでいますね。

小濱 約480店舗(21年11月時点)に入っています。需要予測発注システムは、毎回発注すべき商品が表示されます。それを店長がOKするだけです。1個1個修正もできますし、一括OKなら一括承認ボタンがあります。


――一括発注される方が多いみたいですね。

小濱 一括承認しているか、していないかのデータは取れていますので、一括承認しているお店の方が前年比の売上を上回っています。


 

今後本格的に展開するネット販売では、ネット限定商品を店舗受け取り限定のみにする形態を進めている。今後はキャンプギア、キッズ商品などをネット限定商品にラインナップし、ネット販売で5年後に200億円まで伸ばす計画だ。だが同社では、ネットECの展開についてもあくまでFC店のメリットになる仕組みづくりにこだわっている。

 

「加盟店ファースト」で共に発展していく


――Eコマースは今全体売上の何%程になりますか?

小濱 2013年からはじめて、前期の売上比率でいうと1・6%〜1・7%ほどです。今の目標は年間20億円ですが、5年後に200億円くらいまで伸ばしたいです。


――本格的にはまさに今からですね。どれくらいのラインナップで始めるのでしょうか。

小濱 キャンプギアがメインで、140アイテムくらいです。ジュニアも今度サイズを増やしてEC専売になります。今の売り場規模で場所が確保できるかというとちょっと難しいので、ネット限定にしようということです。


――ネット販売は宅配にすると本部の売上になってしまいますが、御社の場合、店舗決済なので店舗の売上になりますね。

小濱 今後店舗の売上分散をしていくと売上が減りますから、ネット限定商品を店舗受け取り限定にするという仕組みづくりをしています。ネット限定販売の商品を増やし、さらに店舗受け取り限定も増やして、お店の売上も増やしていこうという施策です。今は直送もやっていますが、最終的には直送は全部止めて店舗受け取りだけにします。


――つまりネットは店舗への送客装置ですね。ネットで本部売上になると店舗の売上に繋がらないので、他のフランチャイズ本部さんでも苦労されています。

小濱 ワークマンはネットが遅れているとすごく言われるわけです。なんでネットにもっと力入れないのと。でもやはり当社はフランチャイズシステムで発展している会社です。フランチャイズシステムは何かといったら、加盟店と本部が共に成長しながら共に繁栄して、共に豊かにならないと成功にはなりません。「ワークマンにとってのネットECとは何か」、「どういう形がワークマンらしいのか」と考えた時に、店の売上になるのが一番良いんです。


――そこが鍵になりますね。

小濱 そこを新たな発展のエンジンとして組み立てれば、加盟店としても非常に良いと思っています。ECも当社は加盟店ファーストで考えています。


――「加盟店ファースト」というのはいい言葉ですね。いつから使っているのですか。

小濱 ベイシアグループの土屋嘉雄代表の言葉です。「ワークマンが発展できたのは、フランチャイズシステムで加盟店さんと一緒にやってきたからなんだよ」と。「だから何をやるにおいても加盟店さんを第一に考えてやらなくてはいけないんだよ」という意味です。加盟店の不利益になることは絶対やってはいけない、加盟店と共に発展していくんだということを、私が引き継ぐ時に代表から言われました。


――それは忘れてはいけませんね。

小濱 大事なのは店長のやりがいだけでなく幸福度です。フランチャイズとして、幸福度と収入が良いバランスであることが大切だと考えています。

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