【やきとり大吉】入りやすさを重視したリブランド店「白い大吉」を積極展開

公開日:2024.02.22

最終更新日:2024.04.27

※以下はビジネスチャンス2024年4月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

「赤い大吉」のブラッシュアップを進め、赤と白の二軸で成長

 家族経営で地元密着が特徴の居酒屋「やきとり大吉」は、現在FCのみで全国498店舗を展開している。同チェーンを運営するダイキチシステムはサントリーホールディングス(大阪市北区)の完全子会社だったが、鳥貴族ホールディングス(大阪市浪速区)が全株式を取得し、 2023年1月に同ホールディングス傘下に入った。近藤隆新社長にグループ入りのメリットや、リブランド型店舗の狙いについて聞いた。

やきとり大吉 (ダイキチシステム:大阪市中央区) 近藤 隆 社長(56)

Profile こんどう・たかし
1967年生まれ、大阪府出身。1990年にサントリー株式会社(現サントリーホールディングス株式会社)に入社。ダイキチシステム株式会社を長きに渡り担当し、サントリー株式会社の市場開発部、経営管理部に所属。その後、株式会社プロントコーポレーション取締役を経て、2019年にダイキチシステム株式会社 取締役、2022年より同社常務取締役、2023年11月に代表取締役社長に就任(現任)。

 

 

 

 

チェーンながら個人店の魅力あり 2001年には1126店舗を展開

――近藤社長は、サントリー時代に約15年間ダイキチシステムに関わる仕事をされていて、社長就任前から同社との関わりが深いと伺っています。改めて近藤社長からみた「やきとり大吉」の強みは。
近藤 何といっても地域密着型のビジネスです。ご主人とパートナーの家族経営で、10坪20席の居酒屋を住宅街に出店しています。小さなパッケージなので賃料を圧縮できますし、ご主人とパートナー、アルバイト1〜2人でオペレーションが可能です。固定費が安いため損益分岐も低く、1日約20人の来店で商売が成り立ちます。
 大吉は全店FCですが、チェーンの強みと個人店の魅力が一緒になったブランドです。全国約500店舗を持つブランドやメニュー開発といったチェーンの強みに加えて、店主の個性が全面に押し出された店です。にこやかに色んなお客さんと話す店主もいれば、無口だけど気遣い上手な店主がいたりと、オーナーの魅力で地域のお客さんに愛されています。
――居酒屋ですが、住宅街に展開することでファミリー利用も多そうです。
近藤 2020年4月の健康増進法の改正から、大吉はほぼ禁煙となりました。禁煙の判断は店主に委ねていますが、お子さんも来るので禁煙を選ぶ方が多かったです。禁煙になって以降、ファミリー利用がなおさら増えた印象です。
 また、大吉が住宅街に展開するのは、賃料削減やファミリーに安心して来てもらうなどのさまざまな理由がありますが、看板を目立たせるためでもあります。仮に、繁華街に出店すると、大吉のシンボルである赤い看板がネオンに紛れてしまいますから。
――店舗数で見ると2022年7月期は517店舗、2023年7月期は503店舗、昨年末時点で498店舗となりました。減少傾向にありますが、現在の課題はどこにあると思っていますか。
近藤 店主の高齢化です。法人フランチャイジーの場合は運営元の会社が存在するため、店長を交代できますが、当社は完全個人のオーナーのため、簡単に交代できません。1100店舗超の勢いがあるときに年間100〜120店舗をオープンしたのですが、その世代がリタイアの時期に差し掛かっています。新店オープンもありますが、閉店の方が多くて純減している状況です。
 そのため、最近ではFC契約更新の際に「息子さん継ぎたいって言っている?」と、1人15〜20分かけて面談したり、営業担当が店を回って状況をお伺いしています。

 

10坪20席で住宅街に展開する地域密着型の居酒屋

鳥貴族ホールディングスの傘下に 立地と店舗規模の違いで棲み分け

――御社は昨年1月、鳥貴族ホールディングスの傘下となりました。同業のM&Aですが、「鳥貴族」と「大吉」でどのようにポジション分けをされているのですか。
近藤 立地戦略でいうと大吉は住宅街ですが、鳥貴族は駅前繁華街です。均一価格なので、鳥貴族の客層は20〜30代と若く、箱も広いので10人以上の来店も可能です。一方、当店は団体を取らないですし、客層も30代後半からと若干高めです。お互い、客層の棲み分けはできています。
 またFCは、大吉が個人加盟であるのに対し、鳥貴族は法人加盟となっています。
――同業ならではのシナジーはありますか。
近藤 焼き鳥の串を共同調達していまして、鳥貴族で使っている安価で高品質な串を大吉に導入しました。安価といっても1店舗当たりの年間の串購入費が約5000円下がる程度ですが、刺しやすく折れにくい串は、店主から喜ばれています。
 また、当社は2023年11月から新しい役員体制となりましたが、社内体制も大幅に変わりました。以前は、営業マンがマルチタスクで物件開発から加盟開発、工事やトレーニングまで行っていましたが、今回から開発部や営業部、経営管理部などの部署制にしました。今まで1人が一気通貫で行っていたことを各部署に割り振り、各々の業務と責任を明確にしたことで、自分の仕事が会社に与えるインパクトが明確となり、社員のモチベーションが上がりました。また、各セクションでやるべき内容を一つひとつ洗い出して改善していくことで、加盟希望者の問い合わせも増えてきています。
――どのような改善が、加盟希望者の増加に繋がっているのですか。
近藤 たとえば、外食のFCに加盟したい人はその会社のHPを見ます。そのため、開業希望者の窓口となるHPを見やすく刷新しました。また、加盟希望者にお渡しするパンフレットも検討したくなる内容に変更しました。以前はこうした業務を全員で行っていましたが、部署制にしたことで各業務が専門的になり、これまで深堀りできていなかった部分をブラッシュアップできるようになりました。

鳥貴族と高品質な串を共同調達

 

ささみカツ

鶏白湯らーめん

店内が見える作りで入りやすさを重視した白い大吉

リブランド店舗で新規層開拓既存店もブラッシュアップへ

――2022年からリブランディング型店舗の「白い大吉」を積極的に出店されていますね。
近藤 現在の新規出店は基本的に白い大吉で行っており、現在は6店舗が出店済みです。白い大吉を開発した経緯は、高齢化によって一時期1100店舗以上あった大吉が減っている状況から、今一度ブランドを見直すことにしました。全国1万人に消費者アンケートを取り、大吉のイメージを聞きました。そうしたら、大吉は知っているのに行ったことない人が結構いたんです。理由としては、小さい窓とのれんで店の中が見えにくく、入るのに躊躇するという声が多くありました。消費者アンケートで問題点を改善したのが白い大吉です。入りやすさを重視して白木調の優しい外観で中が見える造りとし、メニューには焼き鳥に加えて、ささみカツや鶏白湯らーめんなどの一品ものを投入しています。
 現在は東京と横浜、大阪と神戸の4エリアしか店舗がありませんが、今後は全国にある程度配置して検証していきたいと考えています。
――今後の新規出店は基本的に白い大吉となると、赤い大吉はどうなるのですか。
近藤 当然、ブランドをずっと支えてきてくれた赤い大吉を粗末にすることはありません。昨年秋から、赤い大吉をブラッシュアップするプロジェクトを立ち上げました。入店しやすくなるように入口のファサードを変更します。モデル店を今年6月に出店し、軌道に乗れば改装パッケージとして組み込むことも可能です。改装すると、新しいお店ができたようなインパクトがあり、新しいお客さんが来るようになります。入口部分の塗り替えや日焼けした看板の塗装など、わずかなお金で済む簡単な改装を引き続き行います。
 そのため、今後は白い大吉の検証と、赤い大吉のブラッシュアップの二軸でブランドの成長を考えています。

独自の開業プランと充実の研修制度で個人開業を後押し

3年後の50周年で600店舗 新たな開業プランが好評

――今後の出店目標を教えてください。
近藤 2027年の創業周年のときに、600店舗規模に戻したいと考えています。その頃には、白い大吉の検証もある程度終わっていると思いますし、赤い大吉も進化している見込みです。
 2027年の600店舗展開を実現するため、今後も加盟開発と研修に注力します。最近のFCは無店舗型のブランドが増えてきたことで、加盟障壁が下がっています。大吉は初期費用157万円から開業できるプランがありますが、開業希望者のニーズをより反映するため、低資金で希望のエリアに開業できる新しい開業プランを作りました。
 これまでは、低資金で本部から店舗を借り受けて開業する「リース方式」と、店舗を購入して希望立地で開業する「オーナー方式」の2パターンでした。リース方式は、本部指定の立地で開業することになりますが、新プランの「エリア指定リース方式」は条件を満たした後、希望のエリアで開業できる仕組みです。反響は上々で、エリア指定リース方式での加盟希望者が増えています。
――飲食未経験者の加盟が半分以上だそうですが、どんな研修をされているのですか。
近藤 当店はすべてFCですが、全国に研修店が6店あります。研修店の店主が自分の商売をしながら、研修生を預かってくれるのです。立ち方からスタートし、包丁の持ち方や串刺しなどを手厚く指導します。研修期間は3カ月ですが、1カ月ごとに違う店舗に配属されるため3人の師匠ができます。先ほど申し上げたように、大吉は店主の個性が出る店です。店主によって異なる商売スタイルを見て学び、自分のスタイルを見つけ出すことができるのです。90日の研修は長い方だと思いますが、皆さんやって良かったと言いますね。
――コロナ以降、飲み会の2軒目需要が少なくなり、居酒屋は遅い時間帯の集客が難しいと聞きます。御社はどのような販促活動を行っていますか。
近藤 昨年の月から、各店舗の課題に即して選択する個別販促を導入しました。たとえば、遅い時間の集客が弱い店舗は、21時以降に来店したお客さんにスタンプカードをお渡しして割引を行っています。お店のファンを増やしたい店舗は、サイコロを投げて大吉・中吉・小吉が揃えば値引きするイベントを実施しており、お店を盛り上げています。そのほか、おみくじやスクラッチカードなどの販促物があり、希望する店主に販売しています。
 今後は販促をはじめとした加盟店サポートに注力する一方で、独自の開業プランと充実の研修制度で引き続き個人の独立開業を後押ししたいと思います。

全店FCだが、研修生を預かる店主が全国に6人存在する

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