作業服店から低価格アウトドアウェア市場へ業容を拡大/ワークマン

更新日:3月9日

「ホワイトフランチャイズ」を実践、1500店舗体制へ



ワークマン

東京都台東区

小濱英之社長(52)



作業服専門店として40年間、地域密着型のチェーン店舗展開をするワークマン。個人向け作業服市場で圧倒的なシェアを誇る同社が、近年は「ワークマンプラス」の多店舗化で低価格アウトドアウェア市場を開拓し、快進撃を続けている。一方、FC運営では、設立当初から変わらない「加盟店ファースト」の精神で、ホワイトフランチャイズ経営を実践。2021年3月期のチェーン全店売上高は1466億円を記録した。加盟店の状況や新業態展開について、小濱英之社長に話を聞いた。

(ビジネスチャンス2022年4月号「トップインタビュー」より)


小濱英之社長(52)

こはま・ひでゆき

1969年生まれ。群馬県出身。1990年ワークマン入社。2011年商品部海外商品部長に就任しPB製品開発を立ち上げ、高機能で低価格な製品づくりに取り組む。16年執行役員商品部長。17年取締役スーパーバイズ部長。18年9月、運営責任者としてワークマンプラス1号店を立ち上げ、客層の拡大に取り組む。19年4月、代表取締役社長(現任)。休日はPB製品を着用して釣りやトレッキングに出かける。

 


店舗売上倍増で

フランチャイズ比率も増加


――昨年、北海道から九州まで全都道府県への出店を達成しました。御社はFC比率は95%以上ですね。

小濱 基本的に全店フランチャイズという形で店舗開発をしています。ただオープン日が決まっていて、まだ店長(FCオーナー)が決まっていないお店は、直営店としてスタートします。ある程度直営で運営した時点で売上が見えてきますので、応募してきた人により分かりやすい数字を示すことで、安心して加盟してもらえます。


――契約タイプは、通常のフランチャイズのAタイプ契約と業務委託のBタイプ契約がありますね。(※詳細左ページ上)

小濱 採算分岐点が大体年商6300万円ですから、以前はラウンドが7000万円くらいになると、固定給のBタイプ契約からAタイプ契約に切り替えるという流れになっていました。Aタイプ契約にすることによって店長の収入が増える仕組みだからです。さらにAタイプ契約は年間22日店休がありますので、休みも増え、体も楽になります。


――2019年にはBタイプ契約が30店舗ありましたが、現在1店舗のみです。ここへきて大幅に切り替えたのでしょうか。

小濱 「ワークマンプラス」を出店以降、1店舗の平均年間売上が相当上がりました。以前は8000万円代だったのが、今は倍の1億6000万円を超えています。売上が上がったことによって、以前は業務委託でスタートしていたのが、最初からAタイプのフランチャイズ契約にしたほうが断然店長の収入が増えるのです。


――ワークマンの店舗はほとんどロードサイドです。店舗の広さは100坪ほどですか。

小濱 今までは土地が300坪に100坪の店舗でした。現在の新店は基本的に130坪、できれば150坪。駐車場も広くとりますから500〜600坪くらいになります。


――売上が以前の倍の1億6000万円程になって、1日の来店数はどれくらい増えましたか。

小濱 1日平均100人前後だったのが、150〜160人くらいになりました。


――5割増えるとオペレーションも大変ですね。

小濱 我々が入社した頃は、「ワークマンってよく潰れないよね、店の前通っても車がいつも1台も止まってないよ」とよく言われていました。いつ売れていたのかというと、朝と夕方です。朝の7時〜8時半頃までに職人さんが現場に行く前に来て、5分でパッと買っていく。あとは昼休みや現場が終わった17時以降に来て、店は20時には閉まります。ですから10時〜12時、13時〜17時半頃までお客さんがまばらで、その間に店長は品出しや商品マッサージをゆっくりやっても大丈夫でした。今は10時頃から一般のお客様が来るようになったので、これまで品出しできていた時間帯にできなくなってきています。


――今、売上が2億円を超えている店が157店舗あるそうですね。

小濱 嬉しいことでもありますが、駐車場がいっぱいで、キャリーや段ボールが売り場にも見受けられる店もあり、煩雑になっています。売上が2億円を超えると、逆に店長があまりに忙しくて満足のいくフレンドリーサービスができず、ストレスを感じてしまいます。小売業ですから、商売が好きで接客が好きでやりがいを感じている人も多いですから。


――なるほど。そこで近隣に「#ワークマン女子」などの新業態の店舗を出して、客層の棲み分けをする必要があるのですね。

小濱 売上分散をすることで、既存店と新業態の店の両方で買いやすい売り場を維持し、顧客満足度の向上を続けていくことが必要になっています。新業態にはそういった狙いがあります。


 

現在の展開業態は、既存の「ワークマン」、客層を一般客に広げた「ワークマンプラス」、一般女性をメインターゲットにした「#ワークマン女子」の3業態に加え、昨年立ち上げたプロ向けの「ワークマンプロ」がある。今後は「ワークマン」「ワークマンプラス」「#ワークマン女子」の3業態で、2030年に1500店舗体制にする計画だ。


 


新業態展開で既存のプロと新規一般客の両方を大事に


――御社は個人向けの作業服市場でほぼ独占状態でしたが、2018年に新業態「ワークマンプラス」を立ち上げるという、大胆な方向展開をしました。既存の「ワークマン」と品揃えは違うのでしょうか。

小濱 品揃えはほぼ一緒です。店の大きさや地域性にもよりますが、基本は一緒です。何が違うかというと、見せ方を変えています。ワークマンプラスは一般のお客様と共通の商品もありますから、プロ向けの商品は店に入って右側に集めて圧縮陳列したり、ハンギングしていたものを畳んで棚に置いたりしています。


――改装してからの業態転換は、業績不振だった地方の店舗を優先的に進められました。新規客の取り込みに成功し、多くの店で成果が出たそうですね。今後は逆に「ワークマン」というブランドの店は減っていくのでしょうか。

小濱 「ワークマン」は減っていきます。今改装してワークマンプラスにしていることと、新店でまだプラスでドミナントができていないところは当然プラスで出していきます。また売上分散が必要なところは、「#ワークマン女子」を積極的に出店していきます。


――現在、「ワークマン」としては559店舗ありますが、2030年には半分以下の200店舗になる予定のようですね。

小濱 その200店舗は、ワークマンプラスが立ち上がる前から売上が良いお店です。ワークマンは今まで職人さんやプロのお客様がほとんどで、周りに工場などが多く、そのお客様で売上がしっかり取れている店舗です。中には300坪の店舗で駐車場が10台ほどしかない店もあります。そういった店をワークマンプラスに変え、「一般のお客様もどんどん来てください」というのは厳しいですし、既存の職人さんたちが入れなくなる可能性があります。


――常連の得意客はやはり大切にしないとですね。

小濱 店長の中には、ワークマンプラスに転じて売上を伸ばしている他店を見て、取り残された感を持つ人もいます。そこで店長のモチベーションを維持し、既存のお客さんを大事にするために、「ワークマンプロ」という新業態を昨年実験的にオープンしました。


 

ワークマンの原点である作業服は、消耗品のため低価格が基本だ。製造コストの粗利益率は35%を標準とし、改良を重ねることで「高機能で低価格」のEDLP政策を実現している。それが5年前からSNSを通じて一般ユーザーまで広がり、新たなアウトドアブランドの立ち上げに至っている。


 


SNS発信で売上が急伸

商品アンバサダーも誕生



焚き火ヤッケ

――特定の商品がSNSで紹介され、人気に火が付いています。元々プロ向けで、一般の方にも人気になった代表的な商品は何ですか。

小濱 防水防寒のAEGIS(イージス)と、焚き火ヤッケと言われている溶接で使っている綿ヤッケ、それと厨房シューズ。この3つが先駆けかな。


――飲食店で履く厨房シューズが、妊婦さんの間で人気になったというのは面白いですね。小濱 その靴は本当にプロ向けで、滑らなくて油に強くて撥撥水性がある靴です。それを妊婦さんが公園で履いて、「これいいよ」とSNSで発信してくれました。じゃあもっとお洒落にしようと柄を付けたりしてできたのが、今のファイングリップシューズです。それでさらに広まり、当然プロの方にも好評ですし、一般の方も履かれています。

ファイングリップシューズ


――溶接の綿ヤッケは、キャンプでよく使われるそうですね。

小濱 キャンプでアウトドアブランドの3万円〜5万円のダウンを着るのが流行っていますが、それが焚き火で穴が空いてしまったら勿体ないですよね。キャンプブロガーのサリーさんという方が、ワークマンで見つけた1900円の綿の溶接用のヤッケを着て焚き火をしたら、「全然大丈夫だよ」とSNSで発信してくれました。しかも女性なので、ダボっと着て可愛らしい写真なんです。


――どれくらい売上が伸びたのでしょうか。

小濱 特定プロ向けの服ですから、以前は年間でも200着、300着しか売れていませんでした。これがSNSで火が付いて、代わりに出した商品であったものの、売上が急伸した時では1週間で2万着売れました。その後サリーさんに意見をもらって商品開発したのが、アンバサダーマーケティングのスタートです。サリーさんの意見をそのまま取り入れて作ったコットンキャンパーは、農家の方もトラクターに乗る時着てくれたり、プロの方も買われています。


後編へつづく


 

同社が目指すのは、100年の競争優位を築いていくこと。そのために加盟店と本部の関係がホワイトである「ホワイトフランチャイズ運営」を実践している。その結果、子どもなど2代目への継承率は47%、再契約更新率は99%を誇る。若者の加盟支援や店舗継承など、さまざまな支援制度も整えている。

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