コロナ禍で再定着した宅配ピザ市場で狼煙

システム構築・販売手法・出店施策を一新/ピザハット


日本ピザハット

神奈川県横浜市

中村 昭一 社長(50)


「ピザハット」は、1991年に日本ケンタッキー・フライド・チキン(現:日本KFCホールディングス)が米国のYum!Brands(以下:ヤム)からライセンス許可を得て開始。以降、デリバリー業態を主軸に店舗を拡大してきた。現在の店舗数は450店舗(8月末時点)、そして今年度末には470店舗を予定しているが、その出店の起爆剤になっているのは奇しくもコロナ禍で定着した新しい食のスタイルの定着だった。中村昭一社長に今後の成長戦略を聞いた。

(ビジネスチャンス12月号「Top Interview」より)


中村 昭一 社長(50)

Profile◉なかむら・しょういち

1971年2月生まれ、兵庫県宝塚市出身。89年4月に日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社に入社。94年 8月にデリバリーサービス事業部PH部に異動し、関西地区の新規立ち上げに携わる。14年4月にPH営業ユニット、ゼネラルマネージャーに昇格。その後、17年6月の日本ピザハット株式会社独立の2カ月前に、同社代表取締役に就任。現在に至る。

現在は宅配の印象しかないピザハットだが、日本上陸当初はレストラン業態で事業をスタート。その後、日本ケンタッキー・フライド・チキンによるライセンス契約の取得を機に、1991年に宅配事業へ参入した。当時の日本では、先駆けて市場に登場していた「ドミノ・ピザ」(85年)や「ピザーラ」(87年)があり、この2社はバブル経済期を経て進んだ欧米化の流れにマッチする形で急速に拡大。同社が参入した90年代前半以降もその勢いは止まらずに第一次成長期を迎えた。だがその後2000年代に突入すると、大手3社ともに成長は一服。近年まで長らく3社三つ巴の時代が続いた。事態が動き出したのは、2017年。同社の親会社である日本KFCからのスピンアウトだった。


三つ巴が続いた15年間

膠着打破したのはDX化


――御社は91年の日本上陸以降、日本KFCホールディングスのグループ会社として展開してきましたが、4年前にスピンアウト(分離独立)されました。どのようないきさつがあったのでしょうか。

中村 スピンアウトをした2017年は、ちょうどヤムとのライセンス契約の更新時期でした。独立した理由は、日本KFCホールディングスが「このブランドの成長を考え、規模の拡大を考えられる先に譲渡する」と当時判断したと私は聞いています。私自身、今は社長の立場で業務に当たっていますが、物事をジャッジする上でスピード感を持てるようになったことは大きな強みだと実感しています。


――迅速な経営ジャッジメントは非常に重要なファクターですが、そもそも宅配ピザの市場は伸び続けていたのでしょうか。

中村 2010年から 18年の8年間で見ると、市場は1340億円から1640億円と300億円増えているのですが、14年から18年の4年間だけで見るとほぼ横ばい。実はあま り伸びていませんでした。ただ宅配ピザは、当社を含めた大手三社が大部分のシェアを取っているので、見方によっては安定しているように捉たえられていたのかと思います。実際、牛丼チェーンやハンバーガーチェーンなど、3つのブランドでせめぎあって均衡を取る市場はほかにもありますから。


しかし同じ三つ巴でも、宅配ピザが大きく異なるのが「利用頻度」です。宅配ピザをどれくらい頼むかというと、せいぜい年に2、3回程度ですよね。最近でこそコロナ禍で需要は出てきていますが、もとは毎週、毎月食べるものではなかった。実際、平均すると 45日〜90日に1回程度です。そうなると何が起こって来るかというと、大体の方が前に頼んだピザ屋さんを覚えていないのです。ブランド認識が薄れてしまった結果、店舗の売上や儲けが動かなくなってしまい、横ばいが続いてしまったのです。


――一方、スピンアウト以降は4年間で 80店舗を増店し、チェーン全体の売上高も250億円から350億円と大きく飛躍しました。

中村 当社は2018年度から転機の時期に入りました。スマホで注文する時代の到来を見越して、自社でネットオーダーシステムの構築に注力したのです。お客様の利便性や行動パターンを先取りしていち早くシステムに落とし込めたと自負しており、今ではオンラインオーダーとオフラインオーダーの割合が8対2までになりました。また注文チャネルとしてUbereatsや出前館などもありますが、自社で注文システムを持つことはリピート率に大きく繋がります。


そして販促に関しても、これまでは一生懸命チラシをマンションや戸建てに配っていましたが、今では皆さんのスマホアプリにお得情報などのプッシュ通知が入るようになっています。アナログからデジタルに変換したことが転機になったのです。




改めて宅配ピザの重要性が増してきている


――システムをデジタル化させたことで、リピーター獲得の課題を解消したわけですね。その間、商品開発の点も何か着手されたのでしょうか。

中村 以前は「冷えたピザほど不味いものはない」と言われていましたが、この点もシステムを改善した結果、配達員が店に帰るタイミングを見計らってピザを焼く指示が出せるようになりました。当社のピザはパンピザという、アメリカンピザがベースとなった少し分厚めの生地を売りにしています。店舗の鉄鍋フライパンに練り上げた生地を1枚1枚載せて発酵させ、仕上げに一気に焼き上げます。他社さんは手伸ばしのハンドトス生地が多いので、珍しい手法としてお客様から喜ばれています。


――国内の外食産業全体が落ち込む中、2020年のフードデリバリーサービス市場の利用金額は、前年同期比18・9%増の4960億円(ICT総研まとめ)で、23年には6821億円と予測されています。コロナ禍をきっかけに食文化が変化し、宅配が定着したと言えます。

中村 「ステイホーム」が大きなキーワードとして挙がり、単身世帯の方々でも自宅で食事をしなくてはならなくなりました。ニューノーマルの時代の需要を捉えて、今年の1月から「MYBOX(マイボックス)」という1人前のセットを発売しました。Sサイズピザ(直径約15㎝)にチキンナゲット2ピースとハットフライポテトの組み合わせで、お持ち帰り であれば1000円以下でお食事いただけます。こちらは現在、平均して注文件数の15%程を占めています。またお客様1人分を完全にカスタマイズしていることから、家族で3人前のマイボックスを頼まれることも多いようです。


ステイホーム下で好調の1人前セット「MY BOX」

またソーシャルディスタンスにも対応するため、昨年から全店で「置きピザ」というサービスを始めました。これはオンラインで決済された商品をお客様のご自宅に持っていき、インターホンを鳴らしてお知らせした上で置いていくものです。食べ物を置いていくということで当初は社内でも疑問視する声があったのですが、実際にやってみるとすごく好評で、現在はデリバリー注文数の5%〜8%が置きピザとなっています。当初は感染症対策として取り組んだサービスでしたが、実際にやって見ると「知らない人に会うのは怖い」といったことで女性の支持も多数いただいております。


ほかにも全店ではないですがドライブスルー形式で車から降りなくても受け取れる「お車ピザ」も始めています。宅配ピザはお子様の誕生日といったハレの日、またサッカーW杯、オリンピックのテレビ放送時といった特別な時に注文されることが多かったのですが、当社ではコロナ以前からピザを「非日常から日常 食へ」というテーマにして取り組んできました。


ピザハットの新規出店には、開業時経費470万円に店舗建築などのハード面での投資をプラスした約3000万円が初期投資総額となる。早期の500店舗体制を見据えてFC店の拡大を進めている同社では、オーナーの増店を促進すべく、加盟店への優遇措置や社員独立制度といったメニューも設けている。



ロイヤリティを免除し早期の投資回収・増店を促進

ロイヤリティは5年間無料 初期投資の半分を吸収



――全国500店舗体制に向けて、 フランチャイズ店の増店を積極化させていると伺いました。加盟候補者に対してのメリットとしては何が挙げられますか。

中村 今年から、新規加盟で出店をした場合の店舗利益に対して、一定基準、一定率のコストバックを開始しました。具体的には、6%×5年のロイヤリティを免除するというものです。これは来年も継続する予定です。狙いはずばり、投資回収を早めること。5年間ロイヤリティがなしになると、ざっくり1500万円前後の費用が浮きます。これは店舗建設費2300万円〜2800万円のおよそ半分です。早期に投資回収をしていただき、2店舗目以降の出店を促進していきたいと考えています。


――加盟店を増やす取り組みとして、社員独立制度も設けているそうですね。

中村 社員が独立して店舗を持つケースは増加傾向にあり、現在はFC50社中、20社が社員独立となっています。彼らは平均して2、3店舗を運営していますが、本部としては大体 20万世帯の商圏内で4、5店舗を 運営してもらうような形にしたいと考えています。1店舗だけだと、どうしても競合の存在で左右されてしまいますからね。


――宅配ピザ市場の大手3社で、現在1300店以上が出店をしています。出店立地の制約が生じてくると思いますが。

中村 現在の新規出店は、テイクアウトをメインに考えています。元々宅配ピザは、宅配というぐらいですから、お客様に来てもらう店舗として出店していません。2等立地や3等立地で、民家が並ぶアパートの1階で営業をしている店舗が多かったのですが、今はロードサイドを目がけて出店しています。その結果、以前はテイクアウト2割、8割デリバリーでしたが、最近はテイクアウト4割、デリバリー6割程度になりました。


当社では店舗に取りに来ていただけたらピザ全品が半額になるキャンペーンを行っています。商品を安くすることでフードコストの面では多少負担ですが、テイクアウトにすることで配達員の数が減り人件費が抑えられるので、オフセットがしっかりできる。テイクアウトの需要をしっかりと  取り込めば、我々が目標とする5年後800店舗体制も十分見えてくると思います。


今後はテイクアウト専門店での出店を加速


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