【シャトレーゼ】コロナ禍で184%伸長した絶好調の菓子チェーン(中編)

公開日:2024.04.27

最終更新日:2024.04.27

※以下はビジネスチャンス2024年6月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

現地生産で加工費を削減 商品価格に還元し新興国を攻略

 人口減少に伴い国内菓子市場が縮小傾向にある中で、同社は海外市場に商機を見出す。2015年4月に海外1号店をシンガポールに出店し、同年月には台湾へ進出。翌年以降もマレーシアや中国、韓国やUAEに進出を果たし、現在は8カ国で180店舗を展開している。高品質なデザートをお値打ち価格で提供するシャトレーゼはアジアでも人気を博したが、所得水準の低い国や地域では、まだ高嶺の花状態だ。この課題を解決するため、同社は海外にも生産拠点を設ける。

平均年齢が若く人口の多いアジア 現地生産で商品価格を下げる

――御社は、シンガポールや香港などアジア7カ国とUAEに出店されています。今後も海外展開に注力されるのでしょうか。
古屋 海外マーケットの中でも、特にアジアは魅力的ですよね。平均年齢が20〜30代と若く、経済も成長しています。若い世代はデザートを食べてみたい方が大勢いますし、際限なく食べられます。一方、日本は少子高齢化でデザートの消費量が減っていきます。歳を重ねると食べられる量が減ってしまうので、消費の仕方も「美味しいものを少しだけ」というように変化するのでしょう。そう考えると、若い世代が多く人口が増えているアジアは、とても魅力に感じます。
 また、我々が展開しているアジアは親日国が多く、日本ブランドには注目が集まります。加えて当店は、日本品質のデザートを手の届く価格で提供しているので、アジアの国々でも支持をいただいています。
――今年3月時点で海外店舗数は180店舗となり、うち香港は店舗、シンガポールは店舗と海外全体の約3分の2を占めています。
古屋 アジアの中でも経済発展が早かった香港とシンガポールは、店舗数が一気に伸びました。しかしながら、香港は約750万人、シンガポールは約600万人と、それほど人口は多くありません。そのため、今後は人口約2億8000万人のインドネシアや約1億人のベトナム、約1億1000万人のフィリピン、これら3カ国に注力していく考えです。
――現地でもデザートを販売していると思いますが、御社の商品価格とローカル価格でどれくらい違いがありますか。
古屋 ローカル品と比べると少し高いですね。日本から輸出した原材料も使っているので、どうしても材料費がかかってしまいます。
 香港やシンガポールでの展開を踏まえ、その他アジアでも同じくらいの値段感でいけるかと思ったのですが、インドネシアやフィリピン、ベトナムの方たちにとってみれば、手が出せない価格です。要するに、食べたくても食べられない状況なのです。
こうした方々にも手の届く価格を実現するため、海外にも工場を作りました。現在は、インドネシアとベトナムの2工場が稼働しています。さらにインドネシアに第二工場を作るべく、本社工場と同じ規模の土地を取得しました。工場を作って現地生産が可能になれば、加工費を抑えられます。向こうの人件費は日本の4分の1〜5分の1で、時給換算すると200〜250円です。そのため原材料は同じでも、加工費を削減することで価格に還元できると考えています。我々が値段を下げていくのに対し、アジア諸国は経済を発展させていく。双方が努力しているうちに、交わるタイミングが来るでしょう。

来期はIDNだけで200店舗 現地の有力企業をパートナーに

――海外での出店戦略は。
古屋 海外は工場が整備できたので、来年は220店舗を出店する計画です。そのうち200店舗は、インドネシアに集中して出したいと思っています。
 海外店舗は基本FCで、各国の現地法人が出店しています。しかしインドネシアだけは全て直営で、現在39店舗を展開しています。インドネシアは外資規制の関係で、向こうの財閥企業であるゴーベルグループをパートナーに合弁で進出しました。ゴーベルグループは数十年前にパナソニックの松下幸之助氏とジョイントし、今や3000億円規模となるパナソニックゴーベルインドネシアを立ち上げた経歴を持ちます。そのゴーベルグループの現社長が山梨を訪れることになり、視察先の一つとして当社が組み込まれ、現会長の齊藤寛が対応しました。我々がちょうどアジアに進出したタイミングだったので、山梨からアジアに行けることをアピールするために模擬店を作りました。そうしたら、「美味しい」「リーズナブルだ」と大喜びで。トップ同士だったこともあり、トントン拍子で話が進み、帰りの車でパートナーを組むことが決まったそうです。ゴーベルグループという強力なパートナーが付いたこともあり、インドネシアには相当力を入れています。

本格的なスイーツがアジアでも人気

香港路面店

売れている店舗の基準は年商3億円以上 今後は手土産やギフト販売を強化

 近年、スーパーやコンビニを展開するリテール企業では、他社と差別化を図るためのプライベートブランド商品の開発に注力している。シャトレーゼにおいてもこれまで自社商品を開発し、それを自店で直販することで業績を伸ばしてきたが、近年では卸売も開始した。結果としてブランドの認知度向上に成功し、店舗売上のアップに寄与。今後は1店あたりの売上も年商3億円を目指すべく、高単価のギフト販売に舵を切る。

幅広いジャンルの菓子を販売 リアル店のメリットを追求

――スイーツやデザートのチェーンはいくつかありますが、意識している企業はありますか。
古屋 お菓子店はたくさんありますし、アイスクリームに関しても大手メーカーさんが参入している業界です。しかし、洋菓子や和菓子、アイスクリームやベーカリーまでワンストップでショッピングできるお店はありません。
 そういう意味でいうと、家にいながら24時間買い物できる通販こそ、マークしなければならない存在です。しかし我々はリアル店ですから、通販では出せないリアル店の良さを追究しています。五感戦略と言っているのですが、お店に入った時のこんがりバターの匂いや、焼きたてアップルパイのサクサク食感、真夏にアイスクリームケースを開けたときの冷んやり触感など、人間の五感を使った販売を目指しています。
――最近では自社チェーンの店舗以外にも商品を卸しています。
古屋 コンビニやスーパーに卸していますが、正直なところ、最初は抵抗がありました。店舗の隣にコンビニがあった場合、売上に影響を及ぼす可能性がありますから。しかし、数ある中で我々にお声掛けいただいたのも事実です。ですから卸を行うにあたっては、一度にすべての商品を卸すのではなく、アイスクリームなら「チョコバッキー」というように単品で卸すことにしています。そしていざ蓋を開けてみると、店舗の売上も上がっていた。圧倒的な店舗数を構えるコンビニに商品を卸したことで、当店の認知度が向上し、結果的に店舗売上アップ繫がったと考えています。
――卸を単品のみに絞ったのは、店舗を1番に考えているからだと。
古屋 そうです。またチェーン店を大事にしたいと考えているからこそ、我々はロイヤリティを取っていません。そのため、加盟店は売れば売るほど潤っていきます。よく本部と加盟店がお互いに向き合うような形で、加盟店ばかり気にしているチェーンがありますが、我々の考え方は違います。本部と加盟店が一緒になってお客様を見るのです。ですから加盟店は、本当の意味でのパートナーですね。

コンビニなどへの卸売が功奏し、自店の売上もアップ

おやつとギフトの比率を逆転 店舗年商3億円を目指す

――今後は店舗にどのようなブラッシュアップをかけていく予定ですか。
古屋 我々が重視しているのは、店舗数ではなく、1店舗あたりの売上です。現に、5年前は年商1億2000万円でしたが、ずっと階段を上り続けてきて、現在は2億円となっています。そうして店が儲かっていくと既存オーナーの増店に繫がりますし、繁盛している店を見て加盟を決める方も多くなりました。
 今後、目指す平均年商は3億円以上です。現状そこに該当する店舗は11店舗と数少ないですが、何とか目指そうとオーナーと落とし込みをしています。
――商品単価が低いシャトレーゼが売上を高めるには、来店客数を増やすのでしょうか。
古屋 来店客数を増やすのもありますが、今後は客単価を上げるためのギフト戦略に注力する方針です。お客様が当店のお菓子を購入するシーンは4つあります。1つ目は、ご家庭消費でおやつといわれているものです。チョコバッキ―やシュークリームやプリンなどがあり、売上の約70%を占めています。2つ目は、ハレの日に渡すお菓子です。ひな祭りやお彼岸、バレンタインや誕生日など、日本にはハレの日にお菓子を渡す文化があります。そこにはご家庭消費で食べて美味しかったお菓子や、安心安全にこだわったブランドが選ばれます。また3つ目は、手土産です。これもご家庭消費で信用ができると選ばれるようになります。4つ目は、お中元やお歳暮などのギフトです。お菓子店にはこれら4つの需要があります。
 その中で我々が考えているのは、ご家庭消費を維持しつつ、手土産やギフトを強化していく戦略です。これは、長年培ってきたお客様の信頼がないとできません。無名ブランドで自分が食べたことがないものを、お土産やお中元にしようと考えませんから。
――アップセルしていくイメージですね。
古屋 そうです。ご家庭消費だと「シュークリームを2000円分ください」という方はなかなかいませんが、お中元やお歳暮になると「3000円分のギフトを箱ください」というニーズがあるのです。
 現在、目的別の売上比率はご家庭消費が65〜70%で、手土産やギフトが30〜35%です。将来的には、この比率を逆転させようと考えています。ご家庭消費は、現在の売上金額を維持したまま30〜35%になるのが理想です。こうして全体のパイを大きくするイメージで、3億円を目指していきます。

お歳暮などに選ばれるブランドを目指す

【シャトレーゼ】コロナ禍で184%伸長した絶好調の菓子チェーン(前編)

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