ブームで終わらないから揚げ店を目指す/から揚げの天才

「のり弁」と「コンテナ出店」の新施策で店舗拡大


コロナ禍で苦戦が強いられている外食企業。大手の一角であるワタミでも、現在は祖業の居酒屋業態からの転換を進めるなど、試行錯誤を繰り返している。そんな同社の再浮上のカギとなるのがフード事業のフランチャイズ展開だ。中でも2018年11月に立ち上げた「から揚げの天才」は、国内企業としては最速の2年7カ月で100店舗の出店を達成。“虎の子”事業として同社内での期待値も高い。一部では「から揚げブームはもはや終息」という声も上がってきているが、この正念場をどう乗り越えていくのか。渡邉美樹会長兼社長に話を聞いた。



ワタミ

東京都大田区

渡邉 美樹会長兼社長(62)


渡邉 美樹会長兼社長(62)

PROFILEわたなべ・みき1959年10月生まれ。神奈川県横浜市出身。「つぼ八」のFC店経営を経て、居酒屋「和民」を開業。参議院議員を務めた後、2019年にワタミ代表取締役会長兼グループCEOとして本格経営復帰。2021年10月ワタミ代表取締役会長兼社長に就任。

 

から揚げ業態が注目されるきっかけとなったのは、新型コロナウイルスの感染拡大だ。消費者の外食控えが一斉に起こり、一方でテイクアウト需要が急増。中でもから揚げは日常食として人気が高いが、家で作るには二の足を踏むといった、持ち帰り商品の条件をすべて満たすことが可能だ。同社のから揚げの天才も、こうした追い風に乗って出店を重ねてきた。

 

日本最速100店舗を達成も

ブーム終息の今後が正念場



――から揚げ店は2019年に1700店だったものが22年には3300店、市場規模も853億円から1300億円になると言われています。から揚げの天才が早々に結果が出せたのも、こうした市場拡大の背景が大きかったのでしょうか。

渡邉 コロナ禍で外食をやられている方が守りに入っている中、フランチャイズを出していただいたことは非常に順調だったと思います。当社ではから揚げと卵焼きというように、ある程度売り物を絞りました。その上で、から揚げは我々の仕入れ力を使って1個あたり60グラムの大きい唐揚げを99円という値付けをし、卵焼きは同ブランドの共同パートナー兼大社長として活動いただいているテリー伊藤さんのイメージを付けた。これが最初は共感されたのだと思います。


――御社の店舗の出店が急増したここ2〜3年間は、世間でも「から揚げブーム」なる言葉がよく聞かれました。ただ最近ではそのブームも終息し、競争が激化して大変だろうという声もあります。

渡邉 から揚げのマーケットは大きくなりましたが、それ以上に競合店が増えました。唐揚げがブームになりましたよね。その結果、当初は我々の売りであった大きなから揚げも他社が追随したことで差別化要因が消されてしまった。またコンビニや食品スーパーが本格参入し、から揚げに関しては儲けを度外視して惣菜部門における目玉商品にされました。


――から揚げの天才の店舗も大きなダメージがあった。

渡邉 FC展開開始当初の売上に比べて4割程のダウンがあった店舗もあります。唐揚げという商品自体そこまで差別化ができる商品ではないですし、今日食べて明日も食べようというものではありません。そこはお客様の一食分を取られてしまったというのは非常にダメージが大きかったです。これは現実を受け止めなければいけないと思っています。


――ネットメディアには、から揚げの天才閉店の記事も出ていますね。

渡邉 確かに今年1月時点から6月末までで18店舗閉店しました。ただこの期間内には8店舗の新規出店もしています。競争の激しい駅前の店舗を閉店した一方で、郊外店での出店は増加するなど、立地による入れ替わりがあったということです。



 

今後もから揚げ店として勝ち残っていくためには、根本的な問題の解決、同社の場合は新たな差別化要素を付加していかなければならない。そこで渡邉会長が挙げる施策が、新商品である「のり弁」の売上比率向上、そして新たな出店形態である「コンテナモデル」による低投資・早期回収の2点だ。

 

弁当売上比率は6割、収益柱として期待

コンテナ出店は最短7カ月で投資回収可能



――から揚げ自体の競争が激しくなる中、御社では今年からのり弁の販売もスタートさせています。こちらは順調なようですね。

渡邉 税込み330円で食べられるこの商品を出したことで、お客様の来店頻度が増えています。のり弁はから揚げよりさらに日常的に食されますので、毎週来ていただくお客様が大変多いのです。元々から揚げの天才では「からたま弁当」という商品も提供していましたが、それを買われるサラリーマンの方などが、「からたま弁当なら2週間に1回だけど、のり弁なら毎週食べよう」と利用の仕方を変えられたという認識です。お店によって売上構成比率は異なりますが、直近6月の店舗全体の平均では、お弁当が6割、から揚げ単品のおかずが4割。これはのり弁を出す前後で比較すると、弁当の売上比率が2割上がった形になります。


――今後も弁当シリーズを強化していく。

渡邉 弁当のマーケットを取りに行きたいと考えており、今は特に揚げ物の弁当に力を入れていきたい。「揚げ物の弁当はあそこが一番美味しい」と言われるようなポジションを取れたらと思っています。


――のり弁の販売と同時期になりますが、昨年12月からコンテナ型店舗の出店も開始されていますね。これはどういう狙いですか。

渡邉 これまでの通常型店舗では月商が450〜500万円想定のモデルでしたが、これだけから揚げ店が増えると、一店舗あたりの売上が320万円くらいで採算が取れるようにしなくてはいけない。そうなると、コンテナでフットワーク軽くやった方がいいだろうということで、現在は直営店もコンテナ型にどんどん切り替えていっています。





――コンテナの場合は10坪くらいでできるそうですね。

渡邉 コンテナだけを置くのであれば、20フィートのコンテナで4、5~10坪くらいあれば十分です。ロードサイドの場合は、駐車・駐輪スペースがあった方がお客様が来やすいので坪くらいあった方がいいです。


――出店方法は、コンテナごと買い取る「店舗買取方式」と、御社が所有し貸与する「店舗レンタル方式」の2タイプあります。それぞれの初期投資と収支モデルを教えてください。

渡邉 レンタル方式は、加盟金・研修費など全て含めて税別380万円、プラス100万円の加盟保証金で出店できます。月間売上320万円の場合で営業利益は約18%、7カ月で回収が見込めるモデルです。買取方式は初期投資1800万円程で、売上320万円の場合で営業利益は約25%、22カ月の投資回収モデルです。


――従来よりも低投資で、かつ投資回収も早められることで開業の間口を広めた。

渡邉 店舗型モデルは開業に2200〜2300万円、プラス物件取得費用もかかるので、約3000万円くらいかかります。回収計画は30〜32カ月ですので、コンテナ型にして回収期間を一気に縮められたことは非常に大きいと思います。今の時代、フランチャイズ事業は変化が激しい。なるべくFCオーナーの方に負担をかけない、リスクを取って頂きたくないと考えると、10カ月以内で決着がつくようなビジネスモデルが必要だと考えています。商品構成や出店モデルを再構築した同社。あとは出店の弾みを付けてくれるFCパートナーとの出会いの有無によって、同ブランドの命運が分かれる。今年6月に業務提携を行い出店した、パチンコホール大手ダイナムとの連携はその試金石となる。同社は以前もカラオケ店を展開するコシダカホールディングスと提携して出店してきた経緯があるが、そこでの失敗を糧に、出店立地は慎重に見極めていくという。



あくまでも「繁盛店」への出店が肝

直営で実績を上げてからFC強化



――今年6月に、パチンコホール大手のダイナムさんと提携した店舗を埼玉県三郷市に出店されました。ダイナムさんと業務提携した経緯は。

渡邉 ダイナムさん側から「駐車場の空きスペースを有効活用したい」という話があり、我々のコンテナモデルが合致するのではないかということでスタートしました。先日出店した戸ケ崎店はパチンコをされる方々より、外から買いに来られる方の方が多く、周辺が住宅立地ということもあり、特に家族連れが多いですね。ダイナムさんは駐車場の誘導一つ取ってみても、お客様をお待たせしないように整理券を独自に提案してくださったりします。企業文化がしっかりできているので、戸ケ崎店はクレームもありませんし、本当に売上も下がらないですね。


――今後もパートナーとして増店をしていく。

渡邉 すでに2号店、3号店の話も進めています。ただ一方で、どこの店舗でもいいから出店していくとは考えていません。我々は以前、「カラオケまねきねこ」を運営するコシダカホールディングスさんと提携して出店をしたのですが、正直あまり良い結果が出なかった。もちろん、当社がその時はまだ郊外に出店していなかったこともあるのですが、コシダカさんはから揚げの天才を「不振店対策」として出店していた。一方、ダイナムさんは一番売れている店に対して、一番良い立地で出させてもらっている。当社もダイナムさんから色んな立地でお話をいただくのですが、出店立地の精査をした上で一部お断りをさせていただいていたり、色々と条件を付けさせていただいています。


――現状の出店計画について教えてください。

渡邉 現在、20店舗ほどの申し込み済み案件があります。この20店舗は、1年以内には出店する形で進めていきたいです。将来的な目標は700〜800店で、まだまだ空白地帯も多い。先ほどお話したダイナムさんであれば東北に強いので、そういったエリアであればパートナー企業さんと一緒になって出店していきたいと考えています。


――目下のところ、から揚げ業態自体に不安を感じている人も多いかと思います。御社もまずは収益や出店数といった実績で可能性を示したいところですね。

渡邉 今はうちだけではなく、から揚げ専門店で撤退されているところが多いのは事実だと思います。ですから先ほどお話したコンテナ型のモデルについても、まずは直営店でどんどん出店している状況です。立地さえ間違えなければ、最低売上ラインの320万円はクリアできます。これを直営で証明し、しっかり数字を残した上で「大丈夫だ」という確信のもと、FCに加盟していただくのが理想的だと思っています。


――近年、ブームと言えばタピオカですが、から揚げもどこかの段階で淘汰が始まってしまうのでは。

渡邉 淘汰自体はもう始まってると思います。ですがタピオカとから揚げが違うのは、から揚げは伝統的な商品で、なおかつ日本人がおかずに入って一番嬉しい商品です。つまり、から揚げがなくなることはありません。淘汰された先にある程度のマーケットは残るので、その残ったマーケットを私達がしっかり獲得していくという考えです。またその上で、今後は弁当のマーケットもしっかり取りにいく。から揚げというコアな売上の取れる商品、またお弁当というマーケットの広い商品。この組み合わせは、私は強いと思います。そしてさらに弁当の後はカレーです。から揚げ、弁当、カレーという普遍性の強い3つの商品を、から揚げの天才で出していきたいと思っています。



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