専門家を介した会員制「ビズリーチ・サクシード」/M&Aサクシード

中小規模企業に特化し「M&A経営」をサポート


M&Aサクシード

東京都渋谷区

前田洋平氏・ビズリーチ・サクシード事業部長


昨年、東証マザーズに上場を果たしたVisional(東京都渋谷区)グループのM&Aサクシード(同)。同社が運営している事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」は、2017年11月のスタート以来、全国の譲渡案件が累計1万件以上登録され、累計譲受企業は8100社以上の実績を持つ。同サービスは審査を通過した法人企業に限定し、経営者同士の「M&A経営」を支援する。現在は、自治体や地銀などとの積極的な連携により、地域・業界を超えたマッチングを促している。



前田洋平氏・ビズリーチ・サクシード事業部長

PROFILEまえだ・ようへい

2009年、ニューヨーク州立大学芸術学部卒業後、大手IT企業に入社。エンジニアとして基幹システムの開発に従事。2011年、ビズリーチに入社。即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」のビジネス開発を経て、新規事業や海外事業の立ち上げに従事。2017年に、事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」を立ち上げたのち、サービス設計やビジネス開発を担う企画開発部部長を務める。



仲介会社や銀行なども参加

譲渡企業の信用力を担保



同プラットフォームは、譲渡企業の50%が年商1億〜10億円前後の中小・小規模企業だ。利用者は譲受企業の約70%が経営者層で、上場企業から地域の有力企業、IT企業など幅広い。利用料金は譲渡企業は、着手金・中間報酬・成功報酬とも基本的に無料。一方、譲受企業は、会員制で3種類のプランを用意。例えば「ベーシック」は、月額6万9800円で、成約時の手数料が1・5%。従来のM&Aは成約まで平均11カ月程度かかるといわれているが、プラットフォームを利用する企業は平均3・5カ月程度だという。


同社の場合、譲渡企業による直接掲載だけでなく、M&A仲介会社他、銀行・信用金庫・税理士法人など、M&Aアドバイザーを介して掲載しているのが特徴。これにより譲渡企業の信用力を担保にした。「審査を通過した法人企業のみが利用できる会員制プラットフォーム」(前田洋平部長)となっている。「プロの人にも使ってもらえているのがポイントです。譲渡企業も譲受企業も良質な案件を求めている。そのため間口を狭くしてユーザーを限定することで、最良な取引ができるモデル造りを追求しているのです」。このため同社では、引き続き全国の専門企業や専門家、自治体との連携を拡大していく計画だ。


同社に限らずM&Aプラットフォームでは現在、譲渡企業1に対して10もの譲受企業が手を挙げる「売り手市場」だ。譲渡企業にとっては、譲受企業の選択肢が広がる一方、専門的で多様な事前調査が必要になる。「プロを介在させることで、スムースで最適なマッチングができるようになる」(前田部長)という。



59%が異なる都道府県間取引

異業種間でのマッチング



目立つ同社をはじめとするM&Aプラットフォームの出現により、M&Aの在り方が大きく変化した。「これまで相対で行われてきたM&Aは、守秘義務が必要ということで、同じ地域、同じ業界内で進められてきました。その点当社のようなプラットフォームは、実態を共有することで閉鎖的な意識を変えることができる。実際当社では、成約企業のうち、59%が異なる都道府県間での取引です」。


異業種間でのマッチング例も目立つ。同社では30%が写真館と旅館、ウェブ制作と外食というように、異業種での取引だ。「譲受企業は、『こういうものが欲しい』というところから探すのではなく、並んでいる様々な案件から着想して経営を広げることができ、これまでになかった経営の選択肢を提供することができるようになりました。これを当社は『M&A経営』と呼んでいます。


『M&A経営』を実現するには経営者自身が見ることが重要なのですが、当社の場合、成約した譲受企業の72%が経営者層です。つまり『M&A経営』は、多くの譲渡企業の情報から着想して、次の経営の一手にしていくことがポイントとなります」。コロナ禍によって中小企業のM&Aに対する考えも変化があった。「コロナ禍ではっきりしたことは、これまでの一本足経営ではダメだということです。たとえ中小企業でもリスクヘッジが必要だと感じ始めたことは大きな意識変化でしょう。それも同業だけでなく、異業種にも舵を切ることが必要だと、M&Aを意識し始めたのです。


または、自分たちの事業を更に広める。たとえばIT化を推進するために、自前で行うのではなく、M&Aを選択するという変化が起きました」。多くの中小企業・小規模事業者には、経営者の高齢化や、人材不足による事業承継の深刻化が顕在化している。ここに新型コロナウイルス感染拡大が追い打ちをかけた。「やはりM&Aは事業承継問題と密接な関係があると思います。もともと事業承継の必要性があった企業がこのコロナ禍で決断が早まった、という訳です」(前田部長)。



「コンシェルジュサービス」等

利便性向上で効果の最大化目指す



M&Aプラットフォーマーは近年乱立傾向にあり、競争が激しくなっている。今後シェア拡大を目指していくためには、多様なサービスの提供は不可欠だ。同社でも昨年来、利便性向上への取り組みとして、新たな施策をスタートさせている。昨年8月から開始した「ビズリーチ・サクシード後継者公募」は、事業を譲りたい経営者がオープンに譲り受け企業を公募するというサービスだ。


「これまでの常識からすると譲渡企業の経営者は、譲受企業を探したいが内密にしたいという声が多かった。一方では、いい譲受企業を早く探すのであれば、情報を開示しても構わないという声も増えています。第一号案件は、後継者不足に悩む旅館でしたが、公募開始からわずか1カ月でマッチングが成立しました」。


また、同10月から開始した「コンシェルジュサービス」は、「日々の事業運営に忙殺されて譲受企業を探す時間がない」「どのようにM&Aを進めればいいかわからない」といった譲渡企業経営者が直接利用する際の課題解決をサポートする。「当社のプラットフォームを利用したくても、処々の事情からスタートラインに立てない譲渡企業のために、当社の事務局スタッフがシステム運用を代行し、相談者になることで様々な課題を解決に導きます」。中小・小規模事業者の意識が変わり、M&A市場は成長軌道の一途を辿っている。比例してプラットフォーマーの存在意義も高まっているのだ。

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