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就労系FCの可能性 (Part.1〜2)

公開日:2025.12.25

最終更新日:2025.12.25

※以下はビジネスチャンス2025年12月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

【就労系FCの今】
•障害者雇用が人手不足解消の切り札に
•給付金を軸に安定収益を確保
•就労支援B型を中心にFC参入が加速

社会貢献と事業性の両立で急増中

 2025年、団塊世代が後期高齢者となり、日本は本格的な超高齢化社会を迎えた。深刻化する人手不足の中で、今注目したいのが「就労系福祉事業」との連携だ。障害者雇用等を通じて社会課題の解決に貢献しながら、安定した労働力の確保と企業価値の向上を実現できる新しいビジネスモデルが広がりを見せている。
※障がいの表記について:本文は厚労省の表記に基づき「障害」と記載。インタビューページは編集部の判断により「障がい」で統一している

Keyword
一般就労:企業や公的機関などへ就職し、労働契約を結んで働くこと
福祉的就労:障害のある人が就労支援を受けながら働くこと
工賃 :福祉的就労をした際に支払われるお金
サービス管理責任者(サビ管):障害者福祉サービスにおいて支援の総合的な管理を担当する責任者

Part.1
障害者雇用が人材不足の活路を開く~障害者自立支援サービス市場の動向~

 生産年齢人口が減少の一途をたどる今、FC店舗運営における人手不足問題は深刻化している。一方、障害者数は年々増加傾向にあり、2023年時点で人口の約9%となっている。増えつづける障害者をいかに取り込むかが、人手不足解消の鍵となる。

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超高齢化社会に突入 人手不足問題が深刻化

 2025年問題の1つに、超高齢化社会の進行がある。今年、団塊の世代の約800万人全員が75歳以上の後期高齢者に加わる。これに伴い、高齢者人口の割合が増加。厚生労働省の推計値で、2025年は75歳以上の後期高齢者人口が17.8%、65歳以上の前期高齢者人口が30%となり、我が国は超高齢化社会を迎えた。
 少子高齢化社会の今、15~64歳の生産年齢人口は減少の一途をたどっている。1995年の8716万人をピークに、2020年には7509万人まで減少した(表1)
 近年の生産年齢人口割合は50%台後半で推移しており、米国の64.9%、英国の63.4%、カナダの65.4%と比較しても低い水準となっている。
 こうした状況下で、人手不足が社会問題となっている。FC業界では採用難が続く中、DX化の推進や無人モデルの開発などに着手し、人手不足解消に取り組む本部が多数見られた。これは、オペレーション人数を極力減らす「省人化」の方針だ。しかし、省人化にも限度があることに加え、店員と客とのコミュニケーションが店舗満足度向上に欠かせない場合もある。そこで、人材不足解消の1つの手法として障害者雇用に注目したい。

精神障害者が急増中 ストレス社会が引き金に

 生産年齢人口の減少に対して反比例するように、障害者数が増加している。厚生労働省の「生活のしづらさなどに関する調査」によると、2011年の障害者手帳所持者は479.2万人だったが、2022年には610万人に増加している(表2)。障害の種別は、身体障害・知的障害・精神障害の3つに大別される。身体障害は、身体の機能に一定以上の障害あると認められた人で、視覚・聴覚障害や音声・言語障害、肢体不自由などが該当する。知的障害は、児童相談所または知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定された人で、知能水準と日常生活能力の到達水準をもとに4段階に分類される。おおよその目安は、IQ51~70が軽度、IQ36~50が中等度、IQ21~35が重度、IQ20以下が最重度となる。精神障害は、一定程度の精神障害の状態にある人で、統合失調症や気分障害、非定型精神病やてんかん、発達障害などが該当する。身体障害が認められた人には身体障害者手帳、知的障害は療育手帳、精神障害は精神障害者保健福祉手帳が交付される。
 これら3つの障害のうち最も多いのが身体障害で、2022年時点で415.9万人となっている。しかし、近年は精神障害を抱える人が急増しており、2022年は前回調査(2016年)の43%増となる120.3万人に達した。その理由として、ストレス社会によりうつ病患者が増加していることも挙げられるが、診断技術の発達や精神疾患への理解が広がったことが、精神障害者の急増に繋がったと考えられる。

(表2)障害者の数の推移

  2011年 2016年 2022年
障害者手帳所持者 479.2万人 559.4万人 610.0万人
身体障害 386.4万人 428.7万人 415.9万人
知的障害 62.2万人 96.2万人 114.0万人
精神障害 56.8万人 84.1万人 120.3万人
精神障害 56.8万人 84.1万人 120.3万人

厚生労働省「生活のしづらさなどに関する調査」をもとに編集部で作成

雇用障害者数は過去最高 法定雇用率は2026年に2.7%へ

 障害者数の増加と障害者福祉施策の充実強化により、雇用障害者数は年々増えている(表3)。我が国の障害者施策の始まりは1947年に遡る。戦争によって被害を受けた多くの子どもを救うため、同年、障害児施策を含む児童福祉法が制定された。
 1960年には身体障害者の雇用を促進し、職業の安定を図るための身体障害者雇用促進法が制定され、我が国最初の障害者の雇用に関する法律となった。それに伴い、1.1~1.3%の法定雇用率が定められたが、民間企業は努力義務に留まっていた。その後、1967年の法改正により法定雇用率制度が義務化され、その率は一律で1.5%に強化された。
 1987年には、身体障害者雇用促進法が障害者の雇用の促進等に関する法律に改正され、法の対象が身体障害者のみから知的障害と精神障害を含む、すべての障害者に拡大した。ただし、当時は知的障害者と精神障害者の雇用義務はなく、両者を雇用した場合に身体障害者を雇用したものとみなす実雇用率の追加に過ぎなかった。
 その後、1998年に知的障害者、2018年に精神障害者の雇用が義務化された。
 一方、法定雇用率は1988年に1.6%、1999年に1.8%、2013年に2%、2021年に2.3%、2024年に2.5%と、年を経て徐々に引き上げられてきた。それに伴い、雇用障害者数も年々増加。2024年は雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新しており、前者は前年比5.5%増の67万7461人、後者は2.41%となった。また、2026年7月には法定雇用率が2.7%に引き上げられる予定となっており、今後も雇用障害者数は増加していくと予想される。

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Part.2
障害者の就労をサポートする福祉ビジネス~就労支援とは~

 障害者向けのサービスである就労支援には、一般就労を目指す「就労移行支援」、働く機会や社会参加の場を提供する「就労継続支援」、就職後に長く安定して働き続けるサポートをする「就労定着支援」がある。本特集では、一般就労の前段階である就労移行支援と就労継続支援にスポットを当てる。

就労系福祉事業の比較表

  就労移行支援 就労継続支援A型 就労継続支援B型
目的 一般就労に必要なスキル獲得 働きながら一般就労に必要なスキル獲得 働く機会や社会参加の場を提供
対象者 一般企業への就職を目指す人 一般就労は難しいが雇用契約を結んで働ける人 雇用契約を結ぶのが難しい人
年齢制限 18~64歳 18~64歳 制限なし
利用期間 原則2年 定めなし 定め制限なし
雇用契約 なし あり なし
平均工賃 基本無し 8万6752円※ 2万3053円※
施設数 3301箇所※※ 4388箇所※ 1万5159箇所※
備考 最低賃金の支払い義務がない 求人を出せるため利用者獲得しやすい 最低賃金の支払い義務がない

※2023年時点「令和5年度工賃(賃金)の実績について」厚労省
※※2023年時点「障害福祉サービス等事業所・障害児通所支援等事業所の状況」厚労省

一般就労を目指す「移行」支援福祉的就労をする「継続」支援

 就労移行支援や就労継続支援A型、就労継続支援B型といった「就労系障害福祉サービス」は、障害などにより一般企業に就職することが困難な人に、仕事の提供や自立のサポートを行うサービスだ。それぞれ目的と対象者が異なり、年齢制限や利用期間に定めがあるサービスもある(上表参照)
 就労移行支援は、一般就労を希望する人が利用するサービスで、就職に必要なスキル獲得を主な目的としている。年齢制限と利用期間に定めがあり、18~64歳の人が原則2年間利用できる。就労移行支援事業所では、就労のための各種訓練や求職活動の支援、職場実習、就職後の定着支援などを行う。
 一方、就労継続支援は一般就労が難しい人向けのサービスで、福祉的就労の機会の提供や職業訓練などを行う。なお、就労継続支援にはA型とB型の2種類がある。
 A型は、一般就労は難しいが、雇用契約を結んで働ける人が利用する。最低賃金が保証されるため、B型よりも高い工賃が見込める。一方、B型は雇用契約を結ぶのが難しい人が利用するサービスで、労働時間や日数を相談しながら自分のペースで通所できる。なお、A型事業所には18~64歳の年齢制限があるが、B型事業所には制限がない。
 利用者の作業内容は事業所ごとに異なるが、袋詰めや値札付けなどの軽作業、パンやお菓子などの製造作業、清掃業務や農作業がメインだ。しかし、近年はPCを使ったイラスト制作やデザイン、営業リスト制作など、専門的で高単価な作業を扱う事業所が増えている。そのため、B型事業所の利用者でもA型に近い工賃を実現できるケースもある。

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作業内容は事業所によって異なる

就労系福祉事業の収益構造 主な収入源は国からの給付金

 就労継続支援事業と就労継続支援A型事業、就労継続支援B型事業の収益構造は下図のとおりだ。事業所は利用者にサービス提供した報酬として、国から給付金を受け取れる。この給付金が、就労系障害福祉サービスの主な収入源となる。

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#就労移行支援
#就労継続支援 A型事業所は利用者と「雇用契約」を結び、生産活動売上から賃金を支払う。一方、雇用契約を結ばない就労移行支援事業所とB型事業所は、利用者と「利用契約」を結ぶ。そのうちB型事業所は、生産活動売上から生産活動により発生した経費を除いた全額を工賃として利用者に支払う。一方、就労移行支援事業所は就労のための訓練を主目的としており、訓練に対して工賃が発生することはない。ただし、一部の就労移行支援事業所では作業に対して工賃を支払っているケースもある。
 給付金には、基本報酬と加算・減算がある。就労移行支援事業の基本報酬は、利用者の就職後6カ月以上定着した割合が高いほど、高くなる。主な加算の対象は、企業実習や食事提供、適切な人員配置が成された場合となっている。一方、サービス提供などについて定めた指定基準を守れない場合は減算となる。
 就労継続支援A型事業の基本報酬は、定員数と職員の配置状況、評価点(スコア)によって算定される。評価点は、労働時間と生産活動、多様な働き方と支援力向上のための取り組み、地域連携活動と経営改善計画、利用者の知識・能力向上の項目の点数の総合点となっている。一方、就労継続支援B型事業の基本報酬は、定員数と職員の配置状況、平均工賃月額によって算出される。平均工賃月額が高いほど、基本報酬が高くなる仕組みだ。
 A型事業とB型事業の加算項目は多岐に渡るが、就労移行連携加算や就職者を輩出した場合の就労移行支援体制加算などが加わる。なお、指定基準を守れない場合は減算の対象となる。
 事業所の収益性を高めるには、基本報酬の算定対象となる項目のブラッシュアップと、加算対象項目を可能な限り満たしていく必要がある。

 

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