【JR九州ファーストフーズ】九州の「駅」から商業施設とロードサイドの両輪でエリア拡大(後編)
公開日:2025.10.20
最終更新日:2025.09.26
※以下はビジネスチャンス2025年10月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
〝ナンバーワンサンドイッチを美味しいコーヒーで飲む〟から着想
JR九州ファーストフーズは、ファストフード業界のトップフランチャイジーだ。同社の加盟の歴史は、ケンタッキーフライドチキン、ミスタードーナツ、モスバーガーから始まり、現在はシアトルズベストコーヒーやシナボンなど、11ブランドで225店舗を展開するまでとなった。JR系ではあるものの、以前から駅ナカにとどまらず、ショッピングセンターやロードサイドにも精力的に出店。また17年以降は、地盤の九州から中国、関西、首都圏へと徐々にエリアを拡大してきた。自社の歴史の大半を知り、今年4月に初のプロパー社長に就任した村上悟郎社長に、フランチャイジーとしての経営戦略を聞いた。
3.「駅」から「外」へ
100店舗達成しロードサイドにも挑戦
駅外出店比率は76パーセント
シアトルズベスト拡大の前後で同社が着々と進めてきたのが、主戦場である「駅」以外での出店だ。2014年のKFC のロードサイド出店を皮切りに、商業施設へのインショップ出店も積極化。その結果、同社の出店増と売上増の可能性を広めたことはもちろん、その後発生した新型コロナウイルス禍でのリスクヘッジに大きく寄与した。
2014年に100店舗達成 コロナ禍には自社アプリも開発
「駅への付加価値提供」を目的に発足した同社だが、各駅への出店完了後は、イオンやゆめタウンといった大型商業施設をパートナーに、インショップ出店に舵を切った。09年には全事業合計50店、14年には同100店舗を達成。そんな中、14年に初めてKFCのロードサイド店を出店する。
「もともと小さな会社だったので大型投資を控えていましたが、14年以降は会社全体で『何でもやってみよう』という方針に変わりました。投資額やリスク面でチャレンジングではあったものの、出店チャンスを広げるためにロードサイドへ進出しました」(村上社長)
インショップやロードサイドへの進出は、コロナ禍に同社を救うことになる。もともとは駅・駅ビルへの出店が100%だった同社だが、同比率は近年では24%に留まるようになり、インショップ・ロードサイドが76%を占める。「コロナ禍を乗り切れたのは駅比率が低かったから」と村上社長は語っている。
また、同時期に攻めの姿勢を継続した。21年には、同社初の宅配事業である「ピザハット」のFCに加盟。コロナを機に、自社で配達網を保有することが目的だった。
「この時期は店が開けられないのでUberを活用していたのですが、手数料を負担するぐらいであれば自分たちで運ぼうよ」(村上社長)といった発想から来ている。実際、当時西新地区にKFCとピザハットが一緒になった店舗があり、KFCの商品をピザハットの配達網で運ぼうといった取り組みも行ったという。
その後も、自社が加盟するKFC、モスバーガー、シアトルズベスト、シナボンの4ブランドを組み合わせてオーダーができる合同配送アプリ「JF Foods(ジェイフーズ)」も開発(※2)。FC加盟を通じて宅配のノウハウを得ることができたという。
※2 : 現在はシアトルズベスト・シナボンブランドで、博多地区限定で展開

今年1月に開業した「シナボン・シアトルズベストコーヒーららぽーと富士見店」
29年までに年商250億円が目標 今後の注力ブランドは「KFC」
JR九州グループの一子会社としてスタートした同社だが、23年には全事業合計で200店舗を突破。同年には四国にも進出した。
「今後の計画としては、店舗数を年間10%ずつ、売上高は年間10億円ずつ伸長させ、29年までに年商250億円突破を目指したいと考えています。何も問題がなければ28年には目標に達成する予定ですが、その時の利益率も重視したいですね。利益率はブランドによってロイヤリティや原価が異なりますが、近年は単価が上がっていますので最低でも10%以上を指標に考えています」(村上社長)
利益率向上には、少ない人数で売上を上げる「生産性が高い店」をいかにして作るかを重視していくという。同社では今後の出店について、1店舗あたり月商800~900万円、年商1億円が最低ラインと考えている。
そこで重視しているのが、フランチャイジーとして現在国内最大店舗の84店を出店しているKFCでの展開だ。同ブランドは、24年にアメリカの投資ファンドであるカーライル・グループが日本KFCを完全子会社化し、経営陣が変わったばかりである。
「自分たちの頑張り次第で店舗数を増やしていけるブランドと、本部の影響で出店しづらいブランドがありますが、『KFC』は実は今一番出店しやすい環境にあります。『マクドナルド』の店舗数は全国で約3000店、一方で『KFC』は約1200店ですが、実力差はそれほどなく、もっと可能性のあるブランドだと考えています。新しい本部の経営陣の方々と一緒に同ブランドを更に伸ばしていく、というのは1つの大きな課題ですね」(村上社長)
女性活躍推進法に基づく「えるぼし」に認定女性社員比率59%、管理職では同41%
同社では、早くからパートの主婦を副店長や店長に登用してきた。小さな子どもを育てる主婦は、夜間勤務や土日両日出勤ができない。そこで新人社員を1名つけ、日中はパート店長が店を回し、夜間や土日は新入社員がサポートする体制を作った。
次に取り組んだのが、地域限定社員制度の導入だ。パート店長を地域限定社員として採用し、新入社員よりも低かった給与の賃上げを図った。
現在、同制度の利用者は81名。結婚や出産などのライフスタイルの変化を経ても、長く働くための仕組みとなっている。また、時短や地域限定だった社員が子どもの成長とともにフルタイムとなり、スーパーバイザーや本部社員へステップアップすることも増え、女性の管理職比率も高まった。
また同社では20年以降、パートやアルバイトからの社員採用基準を時間帯責任者(1店舗約3名配置)以上に徹底。今年3月末時点で1店舗平均3.9名を配置している。

100店舗を突破した2014年からロードサイト出店も加速
会社概要
代 表者 代表取締役社長 村上悟郎
所在 地 福岡県福岡市博多区
設 立 1989年9月
資本金 1億円
売上高 198億8096万円(25年3月期)
店舗数 225店舗
従業員 4,559名(アルバイト含む)
JR九州ファーストフーズ
(福岡市博多区)
村上 悟郎社長(49)
Profile◉むらかみ・ごろう
1976年1月生まれ。1994年にJR九州ファーストフーズにアルバイトとして入社。1998年に熊本学園大学を卒業後は社員となり、店長、スーパーバイザー、営業部長、取締役などを経て、2025年4月に代表取締役社長に就任(現任)。同社としては9代目の社長であり、生え抜き社員からの初の社長である。
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