【フタバ図書】創業100年超の書店再生のカギはFC加盟
公開日:2025.10.28
最終更新日:2025.10.15
※以下はビジネスチャンス2025年10月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
商品構成を大幅変更し、行列のできる店に
フタバ図書は、広島県を拠点に大型複合書店「フタバ図書」を展開。創業100年以上の歴史を持つ同店は、地元では知らない人はいないと言われている老舗店だ。現在は書籍や文具に加え、同施設内にカフェやフィットネス、コンビニや中古品販売のFC店を併設させることで、書店の集客力を高めることに注力している。同社のターニングポイントは、2021年の新体制発足。その陣頭指揮を執った土橋武社長に、飛躍の過程を聞いた。
TSUTAYA 中心にFC5業態・42店を運営
2021年に経営再建を図り、新たな体制となったフタバ図書は、旧フタバ図書から39店舗を譲受する形で再スタートを切った。そして、同じタイミングで従来の書籍やレンタルなどを扱う26店舗で TSUTAYA にFC加盟し、店舗運営のノウハウやシステムを活用しながら、新しい書店へと生まれ変わった。一方、広島県発の老舗書店チェーンとして地元に親しまれてきたブランドを守るべく、「フタバ図書」の名称はそのまま継承した。
現在は広島県を中心に、山口県や福岡県、埼玉県といったエリアにも店舗を展開。旧フタバ図書時代から複合業態を展開しており、現在も「タリーズコーヒー」や「ローソン」、「HYPER FIT24」や「駿河屋」など、多業態のFCブランドに加盟。書店を中核としながらも、カフェやコンビニ、フィットネスや中古販売といった異業種を併設した、地域密着型のエンタメ複合施設としての側面を強めている。

フタバ図書TSUTAYA MEGA中筋店
出版不況・レンタル縮小のダブルパンチ 大型負債抱え、事業再生の憂き目に
旧フタバ図書の創業は1913年。戦後間もない 1951年に法人化し、書籍販売業に舵を切った。以降は、地域に根ざした書店として事業を拡大。1980年代以降は、時代の流れとともにビデオレンタルやゲームの販売、さらには中古商品の取り扱いへと多角化を進めた。また、広島県を中心に、山口県や福岡県、埼玉県にもエリアを拡大していったという。
しかし、2000年代以降は、出版不況やレンタル市場の縮小、また10年以降もEC・サブスク型サービスの台頭により、徐々に業績は悪化。事業多角化の失敗もあり、経営は非常に厳しい状況に追い込まれる。さらに追い打ちをかけたのが、新型コロナウイルスの感染拡大だ。旧フタバ図書は最終的に、235億円の負債を抱えるまでになった。
転機となったのは2021年。新たに設立されたフタバ図書に主要事業を譲渡する形で、事実上の事業再生を図ったのだ。
この時、再建の支えとなったのが、広島県を拠点とする地域ファンド「ひろしまイノベーション推進機構」が運営する「ふるさと連携応援ファンド」だ。これに加えて、日本出版販売や蔦屋書店(現:カルチュア・コンビニエンス・クラブ)、もみじ銀行やエディオン、広島マツダといった企業が支援に名乗りを上げた。こうして、「フタバ図書」の名を残しながらも、体制を一新した新会社が2021年3月に誕生した。
8割以上がダウントレンド商品 駿河屋加盟で息を吹き返す
土橋社長は新会社設立のタイミングで、カルチュア・コンビニエンス・クラブから出向し、その後2023年に転籍。同社社長に就任した。そして最初に手掛けた取り組みが、中古ホビー販売の「駿河屋」へのFC加盟だった。
「最初にフタバ図書を見た時の印象は、『思っていた以上に体制がしっかりしている』というものでした。しっかり考えてお店がつくり込まれており、さすが TSUTAYA やゲオなどの大手競合店に負けず、広島で長年勝ち残ってきた店舗だなと。一方で、思っていたよりも完成された状態だったので、伸びしろが少ないという危機感も感じました。そこで改めて課題を洗い出したのですが、一番の問題は売上構成比の8割以上がダウントレンドの商材だったということです。ですから商材を大きく組み替えるために、駿河屋の加盟を選択したのです」
フタバ図書はもともと、コミック専門書店やゲームセンターの併設など、エンタメに大きく軸足を置いた展開を続けてきた。その意味でも、「駿河屋」は趣味性、嗜好性の高い商材を扱う業態として、フタバ図書との親和性が高かったという。
2022年10月に駿河屋1号店目をオープンすると、広島県初上陸ということも手伝って、オープン初日には予想を大きく上回る来客が殺到。他県ナンバーの車が次々と訪れ、普段は空いていた駐車場が、屋上まで埋まるほどの盛況ぶりとなった。
「その光景を見た時に、『お客様が求めていたものはこれだったんだ』と実感しました。それまでの店舗は、特に若い女性客が減っている印象があったのですが、駿河屋にその層が来店しているのを見て、居場所づくりができたのだと感じました」
以降フタバ図書は、よりエンタメ重視の店舗構成に舵を切っており、駿河屋はすでに4店舗まで増店。現在、4店舗の店舗あたり平均月商は2300万円を記録している。

2022年に「駿河屋」1号店をオープン
「フタバに行こう」の知名度活かし地域の人が愉しめる空間を
新体制になって以降のフタバ図書は、既存店を駿河屋へと業態転換するなど、旧フタバ図書から引き継いだ店舗の再建に取り組んできた。その結果、新会社発足当初と比べて売上は着実に回復しているという。
既存店に手を加える施策を中心に展開してきた土橋社長だが、今後は新規出店に意欲を持っているという。「本屋に行こうと言わず、フタバに行こう」とまで親しまれてきた同社ならではの特長を活かし、経営理念にある「みんなの『愉しい』を創る」ため、地域の人々がわざわざ足を運びたくなる、何度でも訪れたくなるようなエンタメ空間づくりを目指している。
「広島や福岡、山口や埼玉など、どの地域でも地元の人に気軽に使ってもらえるお店でありたいと考えています。『来て楽しい』と思ってもらえる店舗にするために、今後もエンタメという切り口での店舗づくりにチャレンジしていくつもりです」

若い女性客も多数来店
会社概要
代表者 土橋 武
所在地 広島市西区
資本金 5000万円
年 商 1,117人(2025年3月31日現在)
事業内容
書籍雑誌販売、文具雑貨販売、ゲ ームトレカ販売、中古本等の販売、音楽映像パッケージの販売・レンタル、アミューズメント施設の運営、コンビニエンスストアの運営、カフ ェの運営、フィットネスクラブの運営、中古ホビーショップの運営、インドアゴルフ練習場の運営
フタバ図書
(広島市西区)
土橋 武社長(47)
Profile◉つちはし・たけし
1978年2月6日生まれ。東海大学文学部卒業。2000年にブックオフコーポレーション入社。同社の執行役員兼ブックオフメディア株式会社の代表取締役を務めた後、2017年に株式会社TSUTAYAに入社。モバイル推進カンパニー長やFC本部副本部長などを歴任する。その後、2021年に株式会社フタバ図書取締役副社長COO、2023年に代表取締役社長CEOに就任。
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