【高論卓説】エニタイムフィットネス×Gong cha(ゴンチャ)後編

公開日:2025.09.10

最終更新日:2025.09.10

※以下はビジネスチャンス2025 年10月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

グローバル本部に独自の取り組みを積極提案

 海外ブランドの国内FC本部として、日本の特徴を踏まえながらブランド全体の統一感やクオリティを重視して店舗展開を加速させていく両社。その維持に欠かせないのは加盟店との強い協力関係だ。そのために両社は、本部の事業計画や各店舗の成功例の全体への共有や定期的なミーティングを行っている。

日本の強みは店舗クオリティの徹底 スピード感ある成功例の共有

山部 アメリカやオーストラリアなどの場合、国が大きいため、日本と比較して店舗サイズそのものが非常に大きいですね。日本は家賃との関係上200~300坪の大きな箱は借りられないため、70~150坪の大きさになります。しかしサイズ感の制限がある中、マシンをきっちりと並べて見渡せるようにすることや、スムーズな動線の確保にはこだわっています。使いやすい店だと思ってもらえるように科学的に試行を重ねています。当社では「安心、安全、清潔、快適」という4つのキーワードを重要視しています。
角田 そのような店舗クオリティの徹底は日本の強みだと思います。例えばゴンチャは日本では法人の加盟店で構成されていますが、韓国は個人経営のフランチャイジーが多く、基本はオーナーがオペレーションに入る経営です。韓国でも、店舗ごとに差が生まれすぎないようにブランドのクオリティは保っていますが、統一感という意味では日本の方がより徹底できていると思います。日本は他国と比較して、ルールだと言われたことに従いやすい傾向がありますよね。しかし、国内の店舗数はまだ200店なので、2倍、3倍と増えた時にどこまで徹底できるかが課題かと思います。
山部 当社では5年、10年経った節目では必ず店舗をリニューアルします。店舗の鮮度を維持させることで、お客様に末永くご利用いただけるよう努めています。アメリカなどでは10年経っても開店時のままということは珍しくないです。ゴンチャさんと同様に日本のFCは法人ですが、アメリカは家族の個人経営が多いので、そういった違いが出るのかもしれません。
角田 企業の加盟店でも代表の方や場合によっては事業責任者が強い思いを持っているかいないかで変わってくるとは思いますが、そのために当社は代表と必ず会います。また、事業責任者に決定権がない場合は、加盟店とのミーティングには代表に参加してもらいます。
山部 ゴンチャさんは加盟社とのミーティングはどれくらいの頻度で実施していますか。
角田 加盟社と当社の1 on 1で、年間のビジネスレビューとして前年の振り返りと今年の方針、3年先までの計画についての面談を全社と1年に1回実施しています。FCミーティングは対面で年2回が基本で、加えてエリアのフランチャイジー会のようなものは地域ごと1回ずつ実施します。それぞれのミーティングの持つ役割を変えて、お話しさせていただいています。
山部 当社もさまざまありますが、全体で集まるのは年2回程度ですね。そのほかオンラインで毎月1時間ほど成功例の共有などをしており、必ず全社に出席してもらいます。そのため、成功例はスピード感をもって共有できており、それは当社のオペレーションの強みの1つだと思います。
 また、トップの十数社のうち自分で手を挙げていただいた方には、5~6時間かけていろいろな話をしながら事前に意見をこう吸い上げるという会を実施しています。それを全国展開しようとなった時に落とし込んでいくイメージです。

 両社は日本市場での展開の成功から、グローバル本部へ積極的に独自の提案を行い採用されているという。日本独自で開始した取り組みがグローバル本部から他国へと広がる例もあり、国内だけでなく他国への展開にも大きく影響を与えている。

NPSを重要経営指標に導入 他国のマスターフランチャイジー権取得

山部 当社の場合、本国に提案することは頻繁にあります。直近だと、去年の12月から始めたEコマースは、日本からの提案で最初に開始しました。
角田 私もお願いをすることは多いです。一番象徴的なのは、日本ではNPS(ネットプロモータースコア)を最初に導入したことです。従業員のNPSを重要経営指標にすることは私が当社に入ってすぐに日本発で始め、今ではグローバルも追いかけています。モバイルオーダーも日本と韓国で導入していましたが、より体系的・戦略的に推進していたのは日本です。また、季節限定商品は全て日本独自で開発するなど、かなりわがままにやらせてもらっています。グローバルでは限定商品は年間4~6種類ですが、日本は最大12回と圧倒的に多いです。
 エニタイムさんはアメリカの承認は結構厳しいのですか?
山部 日本がやりたいと言えば割とすんなりと認めてもらえます。結構特別扱いしてもらっていますね。
角田 そういう点では当社も似ていて、日本は非常にうまくいっているので結構自由にさせてもらっている上、他の国の視察先として推薦される場所になっています。
山部 当社も同じです。日本はグローバルの中でも突出して店舗開拓や運営に成功しているからです。ちなみに、最近ドイツとシンガポールでの店舗展開を開始しました。ドイツですが、日本同様にマスターフランチャイジー権を国ごといただきました。ヨーロッパの中でもドイツは最も市場が大きいのですが、以前にマスターフランチャイジー権を持っていた人がうまく展開することができませんでした。コロナの影響も加わってしまったため、その後釜として打診があったので、当社が展開することになりました。アメリカのブランドを日本の会社がドイツで展開するというと、何だか変な感じがありますよね(笑)。
 シンガポールはサブフランチャイジーで2店舗を運営している会社を買収しました。理由は、シンガポールは市場の伸びから将来的な国際展開における拠点の1つになると考えているからです。今後、また別の国を開拓させてもらえる機会があるかもしれないので、日本以外の市場で社員の研修ができる場所を確保することも目的の1つです。

国内店舗の季節限定商品はゴンチャジャパンが独自開発

 海外発祥ブランドでありながらも、日本本部として市場の特徴を掴みながら独自のブランド展開を進めてきた背景がある。利用客の店舗体験の向上やクオリティの高い店舗作りなどに注力し、現在も利用者数を伸ばしている。両社に市場の状況を踏まえた今後の展開や目標、将来展望を聞いた。

業界全体で市場規模の拡大目指す 加盟社の適正利益維持を重視

山部 現在24時間ジムは、当社が最も店舗展開できていますが、パイの奪い合いをするのではなく、フィットネス参加率を業界全体で上げて市場自体を大きくしようというのが当社の考えです。実際にフィットネスの利用者は広がっており、当社も他社も店舗が増やせる状況が今は続いています。その結果、病気にならない体を作ることができ、そのような場所を提供していることが社会貢献に繋がっていくと思っています。追い風が吹いている感覚はあるので、その中心的役割を担っていけたらと思っております。
 店舗数や会員数はもっと伸ばせると思っています。現在の普及率約5%を考えると、市場規模は2~3倍までは増やすことが可能ではないかと思っています。
 日本は医療保険制度が恵まれすぎているので、病気になっても薬を飲んでコントロールすればいいやとなりがちですよね。それがアメリカなどでは、自分の体は自分で責任を持って守らなければならない文化です。日本もだんだんと至れり尽くせりの医療制度ではなくなり、人々の健康に対する意識がどんどん強まると思います。
角田 ゴンチャは2年ほど前と比較するとブランド自体の認知が徐々に上がり、デベロッパーからも良い場所を提供してもらえるようになってきているので、しっかりと実績を届けることを意識しています。
 ゴンチャの昨年の年間利用者のべ数が3000万人だったのですが、当社としては6000万人を目指したいと思っています。6000万人に来ていただくとなると、デジタルへの投資や店舗のオペレーション改善を含めて、28年ごろまでに400店舗を想定しています。
 そして何より、FC加盟している加盟社へ継続的な適正利益を提供していくことです。1店舗で売りすぎている状態が続くとブランドの価値が届けられないため、適正は非常に重要視しています。月商2000万円ほど売上が出る店舗もあるのですが、その場合は近くにもう1店舗という選択肢も検討しています。そのため、売れすぎている店舗の付近は重点的に探しています。まずは関東、中部、近畿、福岡、札幌をメインに店舗展開を進め、ブランドの実力をつけるのが大切だと思っています。

エニタイムフィットネス
Fast Fitness Japan
(東京都新宿区)
山部 清明社長
PROFILE やまべ・きよあき
1960年10月生まれ。2023年6月株式会社Fast Fitness Japanの代表取締役社長に就任。25年以上にわたり製薬・ヘルスケア分野でのマネジメントに従事。また、ファーストリテイリング(UNIQLO)の海外事業責任者としてロンドン店の立ち上げを行った異色の経歴も持つ。その後、スイス、オーストラリア、英国、米国で7年間の勤務経験を経て、2022年6月に当社の社外取締役に就任。西南学院大学卒、スイスIMDにてMBA取得。

 

 

Gong cha(ゴンチャ)
ゴンチャ ジャパン
(東京都港区)
角田 淳社長
PROFILE つのだ・じゅん
1971年東京都生まれ、ブラジル・神奈川育ち。アメリカの大学卒業後、大手自動車メーカー勤務、イベント企画運営を経て、2010年日本サブウェイ入社。マーケティング・経営企画等に携わる。2016年同社社長に就任。2021年10月より株式会社ゴンチャ ジャパン代表取締役社長として、デジタルシフトや顧客ロイヤルティ向上を推進し、ブランドの成長を牽引している。

 

 

 

【高論卓説】エニタイムフィットネス×Gong cha(ゴンチャ)前編

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