【高論卓説】エニタイムフィットネス×Gong cha(ゴンチャ)前編

公開日:2025.09.10

最終更新日:2025.09.05

※以下はビジネスチャンス2025 年10月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

外資ブランドの日本トップが語り合う

「エニタイムフィットネス」を展開する Fast Fitness Japanの山部清明社長と「ゴンチャ」を展開する角田淳社長による特別対談。両社には全世界で展開する海外発祥ブランドであるという共通点がある。日本の特徴を抑えた顧客のファン化によるローカライズの成功で好調な日本展開を収めており、今後もさらなる拡大を目指している。今回両社には、日本展開当初の状況や日本本部としての取り組み、今後の展望を話してもらった。

国内市場の特徴を抑えた店舗展開で成長続ける

海外発祥のブランドで、全世界で店舗展開を行っている「エニタイムフィットネス」と「ゴンチャ」。前者は15年前、後者は10年前より日本での展開を開始し、現在まで共に大きく成長を続けている。両ブランドの日本展開を担う Fast Fitness Japanの山部社長とゴンチャジャパンの角田社長に、現在の展開状況を聞いた。

高論卓説
エニタイムフィットネス
Gong cha(ゴンチャ)
Fast Fitness Japan 
ゴンチャジャパン
山部清明
角田淳
お茶
カフェ

店舗体験の向上に繋がるセルフオーダーレジの導入(写真は秋葉原中央通り店)

店舗体験の最大化を重視 国内での増店は今後も加速

山部 当社は今年5月で15周年を迎えました。事業としてはエニタイムフィットネス(以下 : エニタイム)の展開をしています。アメリカ発のブランドなのですが、日本でのマスターフランチャイジー権によって日本でのビジネス展開をしています。現在はドイツやシンガポールでの展開もスタートしました。国内では1200店舗超を出店しており、店舗数のおよそ85%がFCで、15%が直営です。近年は毎年70~80店舗ずつ出店をしている状況で、今年も同程度を狙いたいと思っています。会員数も100万人を突破し、やっと大台に達した実感があります。
角田 当社は10年前の2015年に日本に進出したGong cha(以下 : ゴンチャ)というブランドを展開しています。ゴンチャは2006年に台湾からスタートしたブランドで、マスターフランチャイズによる韓国展開で非常にブレイクしました。現在ゴンチャのグローバル本社は米国ファンドのTAアソシエイツがオーナーとなっており、約30カ国に展開しています。日本では直近200店舗を超えたところで、直営が約2割となっています。FCは約40社に加盟してもらっています。
 グローバル本社からは年間100店舗というような、ざっとした数字を渡されています。今後は増店を加速する方針で、今年は40店舗ほどオープンさせる予定です。当社の場合はファンが増えてFCのチームがしっかりと成長して初めて出店できると思っているので、正直なところあまり出しすぎるのも考えものですね。
山部 当社もグローバルには100なんて言われたりしますね(笑)。私は創業者ではないので、引き継いだ頃からすでに勢いはありました。それでも日本のフィットネス参加率は上昇傾向にあるとはいえ、まだ約5%しかなく、アメリカの約
20%、ヨーロッパの約15%、アジアの約10%と比較すると2倍、3倍は伸びると考えていた時期に着任しています。店舗数は順調に伸びていますが、すでに都内で300店舗ほど出店しているので、良い場所には出店しづらくなっています。そのためスピード感という意味では、グローバルから言われているようにもう少し出店スピードを上げたいです。
角田 我々と同じ状況ということですね(笑)。
山部 言いたいことはいろいろあるので、喉まで出かかって言いそうにもなりますよ(笑)。ただ、地方を見ればまだまだ出店できる場所はあるので、日常的に通えるようにするためにはもっと増えてもいいかなと思います。
 特に健康志向の高まりによって、業界にとって大きな波が押し寄せている感じがしますね。日本でもフィットネスに通うことが浸透した実感があります。当店の料金の中心は7000~8000円台の価格帯ですが、近年は3000円台の店舗が一気に増えたので、特に若い人が日常使いできる環境が整ってきたかと思います。しかし低価格帯のジムは無人であることが多く、機械の使い方がわからないという人も多いのではないでしょうか。当店は日中はスタッフがいるので、わからないことがあってもいつでも聞くことができるという点で差別化になっていると思います。
角田 店舗体験の最大化は当社も常に重視しています。例えば最近、当店では次世代ドリンクメーカーを導入しましたが、これにより正確な味の再現が可能になりました。人が作るとどうしても間違えてしまうことがあるため、ミックスするという単純な工程を自動化することで正確さを追求しました。しかし、それ以外のサービスについては引き続き人の手によって丁寧に行うことで、接客の質の向上に繋がると考えています。
 そのほかにもお客様の注文体験の改善のために、セルフオーダーレジやモバイルオーダーなども導入しています。セルフオーダーレジ導入前は、全店にPOSレジが2台ある状況でした。しかし実際は、2台目は稼働時間が圧倒的に短く、1台プラスアルファ程度の稼働率で、結局1台でほとんどの注文を取っているような状態でした。数字では出していませんが、セルフオーダーレジはずっと稼働しているので、注文を取る力という点で劇的な違いがあります。お客様にとっては、なるべく早く注文していただいた方が落ち着いて待つことができるので、その点を意識して導入しました。また、モバイルオーダーは、出来上がり後の呼び出し機能を搭載したことで、ショッピングモールであれば待っている間に買い物ができるという環境が整いました。注文の快適さという点で1つのフェーズはクリアしたように思っています。
山部 当店の場合、キャンペーンなどで会員になっていただくことが多いのですが、来店頻度が少ないと数カ月で退会になる可能性が高いです。そこで、特に初心者でご希望される方にはスタッフが入会時にファーストオリエンテーションを1時間程度実施します。内容としては、機械の使い方を丁寧に教えて差し上げます。すると、自信を持って利用していただくことができるのです。また、最初に頻度を高めてもらうために、楽しくトレーニングを続けて店舗内でスタンプを集め、スタンプに応じてプレゼントがもらえるクエスト達成型のキャンペーン施策も現在展開しています。最初に10回ほど来ていただくとジム通いに慣れてもらえるので、その後も習慣化されやすいです。初期の段階で何度も訪問してもらえるような工夫には特に力を入れています。

高論卓説
エニタイムフィットネス
Gong cha(ゴンチャ)
Fast Fitness Japan 
ゴンチャジャパン
山部清明
角田淳
お茶
カフェ

店舗では会員の来店頻度を高める施策を実施

加盟店と協力して店舗の統一感やクオリティを重視した展開を進める

 通常海外発祥のブランドは、日本国内での展開にあたってマーケットの状況や文化の違いを鑑みたローカライズを行っていく。国内に根付いていない業態であれば、新たな価値観や文化創造のための先駆けとなる必要さえある。現在では国内で広く名を知られている両ブランドが、日本展開初期に利用客を獲得するために行っていた施策を聞いた。

猛反対を押し切っての日本展開 ティーカフェ文化浸透への挑戦

角田 2021年10月に着任した際、ゴンチャ創業時の話を聞きに行きましたが、ブームになっていた「タピオカ屋」ではなく「ティーカフェ」として展開するという意志は当時からあったようです。
 私自身の苦労した話ですが、コロナの影響で通常営業の再開までが長かった影響もあり、最初の2022年は売上予測が上手く立てられず売り切れるなど、商品やマーケティングに関して学びが多い1年でした。その後の2023年にはフルイヤーで通常営業をしていたので、2024年はやり切ったという実感がありました。
 チームとして意識していたのは、価格に見合った店舗体験という点です。加盟社の皆さんには大変協力してもらいました。たとえば次の出店に向けて社員は1店舗に必要な人数よりも多めに採用してもらうなどです。また、オペレーションの構築に関しても、ほかの外食ブランド出身のプロの方がメンバーに入って作っているので、韓国や台湾のゴンチャと比較して、店舗作りの完成度は非常に高く、最も大きな違いがあったと思います。その後にタピオカブームが来ている上、日本で未知のものを売ったわけではありません。苦労というのはあまり無かったと認識していますが、ブームが来たときに相応の体験価値を届けられる店づくりが、一番のポイントだったのではないでしょうか。
山部 私も国内展開当初の様子やどんな点に苦労したかというのは、よく聞かれるので、当時からいた方に話を聞いています。24時間営業で夜中は無人で、本当にお客様が来るのかと言われたのが最初の大きなハードルだったようですね。現会長は「絶対うまくいきっこないからやめろと言われて全員から反対された」とよく言っています。
 しかしながら調布店をオープンしたところ、実際には若い男性が押し寄せて、あっという間に700~800人の会員を集めたそうです。その様子を見て、急いで店舗展開し始めたのがスタートです。なぜ特に若い男性が飛びついたかというと、プールや温泉があるようなジムのほとんどは20時頃になると閉まってしまうからです。しかし若い人は遅くまで働いているので、仕事が終わって帰ってくる頃にはどこも開いておらず、土日しか利用できない環境が一般的でした。そのような中、自宅付近で24時間いつでもアクセスできるのであれば、寝る前や出勤前に運動することができるという理由で受け入れられました。
角田 プールや温泉を備えた大きなスポーツクラブが一般的な中で、エニタイムさんはトレーニングに特化した店舗を作ったことが受けたのですよね。
山部 加えて、グループレッスン用の広い部屋やサウナなどのような付加価値的要素を取り除いたマシンのみのモデルだったため、当時としては非常に低価格だったことも受けた理由です。フィットネスといえば2万円前後が一般的な時代に、当店は5000~6000円で提供していました。
角田 エニタイムさんのように当社はティーの文化を作っていきたいです。当社の調査では、「お茶しよう」と言われると6割の方がコーヒーを想起するそうです。一方で、一般的な家庭では18歳ごろまでコーヒーを子どもには飲ませないようです。背景にギャップが存在することがむしろ機会点だと思っております。コーヒーのチェーンは多種多様ですが、ティーカフェは無いので、隙間を狙えるのが面白いなと思います。200店舗ではまだまだ定着したとは言えないですが、それが当社のチャレンジだと思います。
山部 ただ、当時フィットネスはこだわりのある人が行く場所というイメージがあったようなので、その点は苦労したかと思います。現在でもアメリカのエニタイムでは老若男女の会員が集まっていますが、日本は若い男性が8割を占めます。特に女性の場合、ヨガやピラティスのように選択肢が多いので棲み分けが起こっているかもしれません。
 今の時代、例えば脱毛など男性でも美容に気を遣う方は多いので、ジムも自分磨きの1つとして利用されているかもしれませんね。
角田 当店はブームの際にファンになった方々に引き続きご利用いただいているので、現在もお客様は10~20代の若い男女が中心です。しかし、この3年間でその上下の世代の方と親子で来店されることが増えており、幅広い世代の方にご利用いただいています。

高論卓説
エニタイムフィットネス
Gong cha(ゴンチャ)
Fast Fitness Japan 
ゴンチャジャパン
山部清明
角田淳
お茶
カフェ

スムーズな動線の確保のため、マシンの並べ方にこだわる

エニタイムフィットネス
Fast Fitness Japan
(東京都新宿区)
山部 清明社長
PROFILE やまべ・きよあき
1960年10月生まれ。2023年6月株式会社Fast Fitness Japanの代表取締役社長に就任。25年以上にわたり製薬・ヘルスケア分野でのマネジメントに従事。また、ファーストリテイリング(UNIQLO)の海外事業責任者としてロンドン店の立ち上げを行った異色の経歴も持つ。その後、スイス、オーストラリア、英国、米国で7年間の勤務経験を経て、2022年6月に当社の社外取締役に就任。西南学院大学卒、スイスIMDにてMBA取得。

 

 

Gong cha(ゴンチャ)
ゴンチャ ジャパン
(東京都港区)
角田 淳社長
PROFILE つのだ・じゅん
1971年東京都生まれ、ブラジル・神奈川育ち。アメリカの大学卒業後、大手自動車メーカー勤務、イベント企画運営を経て、2010年日本サブウェイ入社。マーケティング・経営企画等に携わる。2016年同社社長に就任。2021年10月より株式会社ゴンチャ ジャパン代表取締役社長として、デジタルシフトや顧客ロイヤルティ向上を推進し、ブランドの成長を牽引している。

 

 

 

【高論卓説】エニタイムフィットネス×Gong cha(ゴンチャ)後編

関連記事

【特別対談】高論卓説 市場成長にともない優良企業が続々参入
【特別対談】高論卓説 地方を拠点に地域活性化を後押しするFCビジネス(前編)
【連載特別編】高論卓説〜業界のキープレイヤーが語る〜(前編)

次なる成長を目指す
すべての経営者を応援する
フランチャイズ業界の専門情報誌

フランチャイズ業界唯一の専門情報誌として、毎号さまざまな切り口をもとに新興本部から大手本部までをフォーカス。またFCを自社の新たな経営戦略として位置付け、中長期的な経営を目指す経営層に向け、メガフランチャイジーの情報も提供しています。

記事アクセスランキング
次なる成長を担うすべての起業家を応援する
起業&新規事業の専門情報誌

“起業のヒント” が毎号充実! “ビジネスチャンス” の宝庫です。
すぐにでも役立つ独業・開業・転業・副業サポートの雑誌です。
資金をかけずに始められる新しいビジネスの紹介、FC、経営・会社運営のノウハウなど、多くの経営者からの“起業のヒント”が毎号充実。

定期購読お申し込みはこちら