【ビーエーエス】独自の能力給で全従業員のモチベーションをアップ

公開日:2025.10.27

最終更新日:2025.10.10

※以下はビジネスチャンス2025年10月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

利益月30万円以上のサブウェイFC店を9店舗経営

 モバイル事業とフード事業を軸足として、東京西部と神奈川エリアで多店舗展開しているのが、ビーエーエス(東京都国立市)だ。同社は現在、アメリカン・サンドイッチFC店のサブウェイ9店舗、ソフトバンクショップ4店舗、auショップ1店舗、モバイル端末の併売店「テルテルショップ」1店舗などを運営し、年間で21億円を売り上げている。倉田裕二社長は1989年に同社を創業して以来36年、時代の変化の中でそれに対応し、変化を遂げつつ安定した利益の経営を続けている。

28店舗まで急拡大した 携帯併売店を縮小

 同社の社名「ビーエーエス」は、Buy And Sellの頭文字B.A.Sを取って付けたという。
「Bは買う・信じる、Aはand、そしてSは売る・説得・納得を意味します。それぞれの商品の売買を通じて、人々の生活を豊かにし、経済発展に貢献するという想いを込めました」(倉田社長)
 倉田社長は1957年生まれの67歳。23歳で専門商社に入社し、営業として仕入れと卸のいろはを学んだのち、30歳で独立。個人輸入のビジネスを始めた。まったくのゼロからのスタートだった。
 当時、いいなと思ったものは何でも取り扱ってみたという。例えば、アロマキャンドル。これを写真に撮って、インテリア系の通信販売の雑誌に販売額800円で広告を載せる。そしてハガキ注文が30件に達したら問屋に行って交渉し、100個購入することを条件に1つ500円で手に入れる。
「独立したてでお金がないので、支払いはクレジット払いです。その間に商品を代引きで販売して、お金が入った後の翌月15日に引き落としされるんです」(倉田社長)
 60個強売れればペイし、残りも売れれば利益になる寸法だ。
 そんな形でスタートし、主にインテリア小物、雑貨などを扱い、徐々に売上を伸ばしていったという。常に人気や流行に目を光らせながら、ヒットを飛ばすようになっていった。お祭りの時に定番となった光るブレスレットも、倉田社長が仕掛け人だ。流行の兆しを捉えて中国の卸売市場で1本5~10円で仕入れて10万本以上を売ったという。
「しかし、人気が出だすと資本のあるところが参入してきて、競争過多になって儲からなくなる。だから止め時も大事で、次にまたアンテナを張って色々と仕掛けていくのです」(倉田社長)
 独立して7年後には携帯電話の販売を始めた。
「当時はまだポケベルの時代でした。そんな中で携帯電話の販売を始めたきっかけは、メーカーの営業マンが来て『通販で売ってくれないか』と言ってきたことでした。やってみると次々に売れて、1億円のまとまった売上が入ってきました。それで、じゃあ店を出してみるかと西武線と中央線沿線で携帯ショップを展開し始めたんです」(倉田社長)
 時代はまさに携帯電話の普及が一気に広がり出した頃だった。その後10年間、売上は順調に伸びて、携帯の併売店のテルテルショップは順調に数を増やしていき、2009年には店舗にまで拡大していた。
 ところがその後、政府がキャリアごとの専門店にシフトする方針を打ち出してきた。
「併売店は引き続き全キャリアを扱えるけど、できる業務が本体の販売と開通、機種変更だけになってしまったのです」(倉田社長)
 そこでやむなくテルテルショップは1店舗を残して撤退することにした。

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画面右側、テルテルショップ国立谷保本店

サブウェイFCを18店舗出店 優良店9店舗を見極め運営

 とはいえ、28店舗のテルテルショップには、正社員の店長が28人いた。その店長たちの新たな仕事を早急に見つける必要があった。そんな時、たまたま倉田社長の息子たちが海外に出かけた際、「サブウェイというサンドイッチ屋が美味しかった」と評判を聞きつけてきた。そこで、日本上陸間もないサブウェイのFC店の説明会に参加してみたところ、開発の担当者が訪ねてきて、20~25カ所の候補地から好きな立地を選んでいいので、FC店を出さないかと言われた。テルテルショップを撤退して事業転換を図ろうとしていた同社にとっては、まさに渡りに船だった。
「サブウェイはサンドイッチ店なので、揚げ物用のフライヤーなどの特別な設備が不要で、出店費用が2000~2500万円ほどで済む。1店舗の利益は月万円前後と額は大きくはないけれど、これを積み上げていけばいいと思いました」(倉田社長)
 2009年のサブウェイイオンモール武蔵村山店を皮切りに、年間3店舗ペースで、6年間で18店舗を出店した。18店舗も出店すると、人出や動線などによって売れる店と売れない店がはっきりとしてくる。譲渡や閉店などで9店舗は手放し、現在は利益が月30万円以上の9店舗の優良店を運営している。
 個店は千駄ヶ谷店(東京都渋谷区、20坪)と国立富士見店(東京都国立市、10坪強)のみ。残りはショッピングモール内の店舗になる。イオンモール武蔵村山店のほか、国分寺マルイ店、ぐりーんうぉーく多摩店、横浜センター北店(ショッピングタウンあいたい内)、三和座間東原店、イオン相模原店、ららぽーと海老名店だ。
「ショッピングモールは制約もありますが、最低でも年4回は独自のイ ベントがあるので確実に売上が出ます。ただし大型店はそれだけ人件費がかかるので、利益に店舗の広さはあまり関係ないですね」(倉田社長)
 サブウェイ事業の大きな魅力は、デリバリーの売上が大きいことだ。同社では、9店舗の合計でおよそ1.5店分になり、約600万円をデリバリーで稼いでいるという。
「デリバリーの対応は、普段の店舗業務にプラスされる仕事。そのため、売上の一部を対応した人に振り分けています。そうすればスピード感を持って、デリバリー商品も準備してくれます」(倉田社長)

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サブウェイ国立富士見台店

社員からバイトまで能力給支給 モチベーションがアップ

 倉田社長は、これまでの長年にわたるモバイル、フードのショップ運営において、人材の動かし方とモチベーションアップに気を配り、結果としてその良し悪しが利益に直結することを痛感してきたという。同社には社員47人、パート・アルバイト約140人が所属する。社員のうちの6人は、基本給が16万円、週休3日制で1日6.5時間勤務の準社員だ。準社員は主に子育てをする女性で、早退をしたら別の日にその時間分を補填すればいいなど、柔軟に働けるようにして優秀な人材を確保し、離職率を下げている。そして、全従業員に対してモチベーションが上がるような能力給を充実させている。
 特にサブウェイは店長だけが社員で、後は1店舗当たり10人前後のアルバイトで回している。そのため、店長がアルバイトのシフトをきちんと組めていることが重要だという。
 例えばアルバイトが「もう1時間働いていっていいですか?」と尋ねた時に安易に店長がOKしてしまうと、次回は店長がいなくても勝手に延長するようになってしまう。最適な人数よりも人員が多い時間帯が生じ、経費が余計にかかってしまうことになる。一方で、7年以上働くアルバイトリーダーが率先して、アルバイトのシフトを取り仕切ってくれる店舗もある。店舗運営の事情を理解して「今日は雨でお客さんが少ないから先に上がりますね」と1時間前倒して勤務を終えたり、逆に忙しい日には、「1時間延長してもいいですよ」と働いてくれたりするパートスタッフまでいるという。こういうスタッフが育っている店は、確実に利益も得られているという。
「今ある9店舗は全て、店長がアルバイトといい関係性ができていて、月30万円以上の利益が出ているわけです」(倉田社長)
 そのため、アルバイト人材をしっかり育てることに重きを置いており、時給は毎年アップしていき、10年以上の勤務で時給1600円という人もいるという。
 ちなみにサブウェイの売上に占める経費の内訳は、フードの仕入れ33%、人件費26.5%、テナント代6~7%、宣伝費1~2%、他にゴミ処理代や共益費。食材原価やテナント代、光熱費などは変えられないので、結局アルバイトを随時最適な人数で効率よく回し、人件費をいかに抑えるかが重要になってくるのだ。

原状回復工事まで考えて 事業計画書を作成する

 その一方で倉田社長は、将来の退店時にかかる費用をあらかじめ想定した事業計画を立ててきたという。事業計画書は終わり、つまり退店時の原状回復工事までを考えて作成しないといけないということだ。「大型ショッピングモール内の店舗だと、場合によっては原状回復に1000万円ぐらいかかる。その場合、年間で500万円の利益があったとしても2年分が飛んでしまう。言い換えると10年計画でも8年分しか儲からない。それをFC店を出す際の事業計画に盛り込まないと、必ず無理が生じます」(倉田社長)
 きちんとした図面が残っていない物件に、居抜きで入る場合も注意が必要だ。倉田社長も元宝石店のきれいな内装の店舗を居抜きで借りて、11年間携帯ショップを運営。いざ原状回復して返そうとした時、天井や壁が二重で張られ、間にダクトやエアコンが隠されていた経験があるという。聞けば、宝石店の前に料理屋が入居していたのがその原因だった。「大家に言ったら『半分持つから全部壊してくれ』と言う。でもこちらは、電気屋や設備屋まで手配するのは違うでしょうってことで、お互いに弁護士を出しての話し合いになった。最終的には、こちらで見積もりを取っていた解体費200万円を渡して退店ということで話を付けました」(倉田社長)
 倉田社長はこれまで36年間に自身の会社経営で、一貫して比較的単価が低い商材を意識して扱ってきたという。投資についても同様で、高額の投資には関心を持たなかった。今後も初期投資に1店舗で5000万円、1億円かかるようなFC店には手を出すつもりはない。
「サブウェイの新店舗を出すなら事業資金からでも充分に融通できるので、銀行に借りる必要はありません。1億円必要な事業があったとしても、1億円利益が出てからやりますね」(倉田社長)
 今考えているのがサブウェイ×コインランドリー、サブウェイ×ガソリンスタンドといったコラボ店舗だ。いずれも洗濯や洗車が終わるのを待っている間に、サブウェイで食事をしてもらえれば一石二鳥になるからだ。
 そして、事業継承についても準備を進めている。いずれは役員をしている39歳と35歳の息子2人に事業継承をしていく予定だ。

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大型SCにも展開、サブウェイららぽーと海老名店

会社概要
代表者 倉田裕二
所在地 東京都国立市
設 立 1989年2月
資本金 10,000,000円
年 商 21億6900万円(令和4年)
従業員 245人 (アルバイト含む)
事業内容
・携帯電話事業 (携帯電話シ ョップ運営)
・フード事業 (オーダーメイドサンドイッチの調理/販売) ・宝くじ社会貢献事業
・テナント事業

ビーエーエス
(東京都国立市)
倉田 裕二社長(67)
Profile◉くらた・ゆうじ
1957年東京都生まれ。明星大学人文学部卒業。 1981年にトシン電機に入社。営業業務に携わる。 1989年同社創業

 

 

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