【麺場 田所商店】食事利用の後押しでコロナ下は善戦

公開日:2023.07.03

最終更新日:2023.07.03

※以下はビジネスチャンス2023年6月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

郊外・ロードサイド店舗は特に好調

 ラーメン店は、立地や業態によって業績に差が出た。ファミリーレストラン業態に近いブランドが、コロナ下でも健闘した。

 

コロナの影響より原価高騰が深刻

 世代を問わず人気が高いラーメン店は、繁華街や商業施設、住宅街やロードサイドなど、さまざまな立地に出店している。都心部は、比較的小規模でカウンター席のみの店舗が大半で1人客が多い。夜食需要も高く、深夜または明け方まで営業している店舗も珍しくない。一方で、郊外やロードサイドに構える店舗は、テーブル席やボックス席を備えた中・大型店舗でファミリー利用も増える。このように、ラーメン店は立地によって客層が異なる。
 日本フードサービス協会によれば、ラーメン店は「ファーストフード(FF)麺類」と「ファミリーレストラン(FR)中華」に分類されるという。前者は短時間滞在の少人数利用、低単価の業態、後者は複数人・食事利用の業態を指す。FF麺類の売上は、コロナ前に比べて約78%に落ち込んだが、FR中華は90%前後に留まっている(下表参照)。主に都心部や繁華街に展開するFF型ラーメン店は、外出自粛の影響を強く受けたことに加え、深夜の売上が時短営業により消失したことで売上が減少した。
 一方、FRに属するラーメン店は客席間に余裕があり、郊外は感染状況が比較的穏やかだったことから、客足が微減で済んだと考えられる。上記の「田所商店」はFR中華に該当するブランドで、売上は時短営業の時期でもコロナ前の約8割を維持していた。
 2022年の売上推移を見ると、FF麺類は86.6%に回復し、FR中華に至っては102.9%とコロナ前の売上を上回っている。今後も売上は回復に向かうと見込まれるが、原材料高騰の問題も見過ごせない。スープに多くの食材を使うラーメンだが、消費者には「1000円以下の手頃な食事」という認識が根付いている。ラーメン事業者は、値上げの妥当性を消費者に発信するなど、ラーメンは安いという認識を払拭する取り組みが必要とされるだろう。

麺場 田所商店 トライ・インターナショナル(千葉市美浜区) 田所 史之社長(60)

PROFILE たどころ・ふみゆき
福島県出身、1963年4月8日生まれ。東洋大学経営学部を2年で中退し、飲食業で起業するもバブル崩壊の影響を受け、35歳で経営する事業を解散整理。その後5年間外食関連企業に勤務し、2003年再び起業する。「味噌らーめん専門店」としてフランチャイズ事業をスタートし、現在に至る。

 

 

 

 

 

ロードサイド・中型店舗展開が功を奏す コロナ禍の3年間で52店舗を出店

 今年で創業20周年を迎えたトライ・インターナショナルは、味噌らーめん専門店「麺場 田所商店」を国内外で165店舗展開している。郊外ロードサイドを中心に出店し地元客から厚い支持を受ける同店は、コロナの影響も比較的軽微であり、過去3年間で50店舗以上の拡大を果たした。

ラーメン一杯に約25種類の食材を使用

ファミリー層がメイン 土日は売上が2倍

 

―コロナ下の業績は如何でしたか。
田所 当店はもとより深夜営業もなく、ロードサイド展開でインバウンド利用もないため、コロナの影響は少ない方でした。時短営業期間は20時閉店となったため、全体売上はコロナ前の約8割となりました。しかし、夕方から閉店時間にかけて駆け込み来店される方も多く、夕方の売上は好調でした。コロナ禍の業績は、時短営業期間は8掛け、解除されれば戻るといった形でした。

―20年は16店舗、21年は19店舗、22年は17店舗と、コロナ下でも積極的に出店されています。
田所 九州を中心に、直営とFCの半々で出店しました。我々のような小さい会社は、世の中が歪んだときでないと入っていけません。コロナ禍で物件や人を確保できたため、少々出店を加速しました。
 また、最近はSCにお声掛けいただくことが多くなり、そちらも徐々に増やしています。SC店は若い方の来店が増えますが、ロードサイド同様、メイン層はファミリーです。土日はファミリー来店が増えるため、平日の2倍ほど売上が上がります。反対に、平日とのギャップを均すことが課題です。

―田所商店はイートインだけでなく、味噌類の販売も行っています。コロナ禍でテイクアウト・デリバリーも始めたそうですね。
田所 当店はイートインの需要が高く、物販売上は全体の4%、テイクアウト・デリバリー売上を含めても%ほどでした。アメリカのテイクアウト売上が約40%だったことから、日本も少し期待していたのですが、全然でしたね(笑)。
 コロナ禍では、健康にアプローチして集客を図りました。味噌には乳酸菌が含まれますが、その量は少量です。そのため、希望者にはオリジナルの乳酸菌パウダーをサービスして、健康志向のお客様に来ていただく取り組みをしました。
 また、テイクアウトでは「ごろごろ味噌チャーシューまん」の販売をスタートしました。乳酸菌を練りこんだ皮に、食物繊維が豊富な麦味噌とゴロッと大きな切り落としチャーシューを包んだ食べ応え抜群の商品です。田所商店の各店舗のテイクアウトで、売れ筋ナンバーワンとなっています。

―田所商店の競争優位性を教えてください。
田所 真似されることが多い日本の外食産業では、次々と新しい取り組みをすることで競争優位性を保たなければなりません。その意味では、新しい味噌や新メニューの導入、SCへの出店に取り組んできました。また、当店のらーめんは昆布や野菜など約25種類の食材を使って、手間暇をかけて作っています。多くの食材が使われていますが、当社は総合物流体制を整えており、麺や味噌などの食材から箸まで店舗に供給しています。近い将来、外食産業は食糧確保の問題が付いて回ると思います。こうした体制を構築できたことは大きかったです。

―今後の目標は。
田所 目標は、味噌らーめんで日本一になることです。現在、年間1300万食を提供していますが、味噌を含めて国内には斜陽産業が数多くあります。それらの産業は、国内のピークは過ぎたかもしれませんが、海外ではまだ十分に可能性があります。そのため、当社ではまず、味噌らーめんで日本一を目指し、年間2000万食、3000万食と供給量を成長させます。そして、国内事業の盛り上がりを基盤に海外進出にも注力し、国内外で成長したいです。

テイクアウト人気の高い「ごろごろ味噌チャーシューまん」

 

 

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