【シルバーライフ】高齢者向け配食サービス

公開日:2023.05.09

最終更新日:2023.05.25

※以下はビジネスチャンス2023年4月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

新ブランド加えFC1000店舗視野

  「まごころ弁当」「配食のふれ愛」の2ブランドを主軸に、高齢者向けの配食サービスを展開するシルバーライフ(東京都新宿区)。同社は2021年に新たなブランド「宅食ライフ」を加え、FC店舗は合計で990店を超え、1000店舗展開が視野に入った。製造から配達まで一気通貫体制を強みに、さらなるシェア拡大を狙う。

まごころ弁当、配食のふれ愛、宅食ライフ (シルバーライフ:東京都新宿区) 清水 貴久 社長(48)

Profile しみず・たかひさ
1974年7月31日生まれ。1998年警視庁に入庁。1999年ベンチャーリンク入社。2002年2月マーケット・イン設立。 2012年9月にシルバーライフ代表取締役社長に就任。

 

 

 

 

 

新ブランド加えFC1000店舗視野

――自宅住まいの高齢者、中でも毎日の買い物や調理が辛くなってきた方々に、食事を提供するサービスを運営しています。同業他社は、ワタミ(東京都大田区)をはじめ何社かありますが、業界の市場規模は今、どれくらいあるのですか。
清水 高齢者配食ビジネスは、ここ20年ぐらいでできた比較的新しい業界で、市場規模はおそらく800億円ぐらいだといわれています。当社がメインターゲットとしている後期高齢者は、2025年には2000万人以上になりますので、今後も市場が拡大していくのは間違いありません。
――FC事業が中心です。2023年7月期第1四半期の決算資料によれば、店舗数は全体で990店、「まごころ弁当」が558店、「配食のふれ愛」が365店、「宅食ライフ」は、早くも店舗に達しています。新ブランド「宅食ライフ」はさらに伸びていくイメージですか。
清水 決してそうでもありません。当社の考えとしては、チェーンに対しての区分けに意味は感じていません。ただ単に「宅食ライフ」は、提案できるエリアが多いので、そこで選んでいるオーナーさんも多いのかなという印象です。
――「まごころ弁当」と「宅食ライフ」を両方手掛けるフランチャイジーもありますか。
清水 あります。ブランドごとの住み分けはしていません。高齢者の数が爆発的に増えているので、多少の自社競合も覚悟したうえで、それでも密度高く店を出した方がシェアを取っていける環境だと思います。

――そうすると、今後もFCは自由競争の戦略を取っていくというイメージですか。
清水 そうですね、「当社は完全に自由競争のフランチャイズですよ」と、説明会の時から申し上げています。「どの店も配達エリアを自由に拡張できます。逆に言えば隣の店が自分のところに来るかもしれませんよ」という訳です。
――他社との競争はもちろん、同じチェーン同士の競争もある。
清水 つまりそれだけマーケット全体が伸びていて、勝ち組負け組がまだないということです。
――同じ地域に複数店舗あっても、両方伸びる。
清水 どちらも伸びるのが当たり前。ただ、どっちの店がいい店かで、伸び方が違うだけ。結局のところ、伸びているマーケットであれば、そういった複数店舗を密度高く配置することが成り立つのです。
――参考にしたビジネスはありますか。
清水 実は、昭和の頃に伸びた外食チェーンの戦略です。当社は、すかいらーくさんの当時のやり方を参考にしています。多少の自社競合は覚悟した上で、色んなところに色んな業態のレストランを出していく。マーケット全体が伸びている環境であれば、それが一番シェアを取れますし、全体の利益も上げられる。
――外食が当時伸ばしてきた戦略であると。
清水 対して今、我々の業界は、外食に40年遅れてそういう時代になっています。今は、このやり方がベストではないかと考えています。


――FC店は既に900店舗以上あります。こうなると、FC同士の優勝劣敗が鮮明になってきて、どうしてもFCの不満が溜まるのではないでしょうか。その中で重要になってくるのは、本部としての立ち位置と、FCとの関係性です。
清水 当社にとって、ロイヤリティや会費は微々たるものです。食材の売上がほとんどを占めるビジネスモデルですので、加盟店さんに伸びていただかないと我々も伸びない。自由競争という最初の仕切りだけはさせていただいていますが、そこから先はどの店舗さんも平等にノウハウを提供していく。あとは、加盟店さんからいただいたお金をひたすら設備投資に投下して、いいものを安く出せる環境を整備する、というところには注力しています。
――今、市場自体が伸びている中で、FCもモチベーションが高い。
清水 そう祈っています。モチベーション高く、稼いでいただける仕組みは作っているつもりです。ただ同時にオーナーさんも人それぞれなので、「自分一人が食べられればいいや」「特に営業に行かなくても伸びてしまっているのでいいや」と、のんびりやっている方もいます。それも一つの生き方ですので、否定せずに「いいですよ」ということです。
――これだけ数が多くて全国規模になってくると、本部としての組織はどうしていますか。
清水 スーパーバイザーであったり、加盟店さんからのお話を一括で受け付けるコールセンターであったり、そういったところはかなり力を入れて、組織として対応しています。
――それで1000店舗近くのFCをカバーできるのですか。
清水 今は、システムがすごく発達しています。店舗の数値がおかしいと、すぐアラートが出る仕組みになっています。
――その辺りのシステム化も含めて、FCをまとめていくような仕組みが出来上がっている。
清水 出来上がっているとまでは言いませんが、その時その時の最善を目指して作り上げていったものにはなります。

自社工場で生産し、自宅に届ける

工場への設備投資に注力しスケールメリットを生かす

――2023年7月期第1四半期決算では、対前年同期比で営業利益200%以上、当期純利益も140%と非常に上がっています。2021年に、第2工場が稼働したことで生産能力がアップしている。内製化が進んだということですか。
清水 内製化もそうですし、あとやっぱり設備投資をして効率がかなり上がりました。同じ食材を作るにしても、1グラム当たりの人件費が、今までの第1工場に比べると、第2工場は約70%で済んでいます。
――御社の特徴は、製造からエンドの配送に至るまで、ほぼすべて一貫できる点にあります。
清水 それだけではなく、配食サービスに専門特化した工場を作っているので、この業界の惣菜製造に対しては今のところかなりスケールメリット、価格優位性も手に入れて来たのかなと思います。
――一方で、1000品目以上の料理をローコストで生産できるノウハウはあるのですか。
清水 基本的には、単品ものを100万個作り続ける工程に比べると効率は落ちる。ある程度の規模がないとそもそもそういう工程は成り立たない。だからこそ当社もまず、FC店舗網の数を増やし、売上を作って、ある一定の規模があったらその規模にジャストフィットするかたちで工場を後から作っています。だからこそ効率も挙げられている。
――最終的には一貫製造、一気通貫ができるようなシステムになっている。
清水 そうです。結局のところ、1つ1つの商品は、実は安く作れていない。たとえば、揚げ物専門の工場に対して当社のコロッケは高いと思います。ただ、配食サービスのような、1000品目近くの惣菜が必要という業界に対しては、我々のような多品目を作れる工場の方がはるかに有利です。販売先を作ってからジャストフィットさせているので、配食の中では効率的な工場が作れているということになる。
――そうして出来た商品をFC通じて配食していく。
清水 そうですね。配食サービスで言うと、店舗経営のノウハウと、食品の大量製造のノウハウを両方持っている会社ってあまりないので、その辺りを兼ね備えているところが我々の強みかなと思います。
――店に対する設備投資もほぼ要らない、いわゆる配送拠点を持っていればいいわけですが、今の話を聞くと、FCのハードルは高そうです。
清水 そうです。基本的には、シルバーライフのフランチャイズであれば、「安くていい食材が仕入れられますよ」ということと、「強い店しか生き残れませんよ」という環境を同時に作っています。

製造から配送まで一気通貫を強みに

「宅食ライフ」事業も順調に拡大

2025年度まで売上168億円1店舗1店舗の成長に期待

――現在、2025年までの中期経営計画を進めています。2025年度は売上規模168億円、営業利益17億円、今期と比べると売上が40億円、営業利益については10億円のアップを目指しています。
清水 ただ、いくつか改善すべきハードルがあります。設備面はもちろん、それに付随する人員の確保ですね。あとは、原材料費の高騰がこのあとどれくらいで収まるのか、色々注視が必要です。いわゆる付加価値戦略、差別化戦略、ブランド戦略が通用する業態ではありません。お弁当1個2000円で売れる業態ではないでしょうから、コストコントロールが必要です。
――客単価、1食あたりの単価を上げるという考えは。
清水 難しいでしょう。我々のメインターゲットである後期高齢者は、定期収入が年金しかない方が多い。お金の使い方が日本で一番ディフェンシブです。
――単純に値上げもできないから、やっぱり原価のコントロールとか、諸々のコントロールをしていくしかない。
清水 単価の上限が決まっているので、規模の拡張やスケールメリット、さらに設備投資による価格低減しかありません。その場合にはFC展開しかないと思っています。
――コンビニ商品とか見ていると次々に小袋や小パック、冷凍商品などが出てきています。他社も高齢者シフトを進めている。その辺りと競合してきています。
清水 これからさらに競争が激しくなるために、FCをどれだけ増やせるかがポイントになってくるでしょう。

 

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