【明光ネットワークジャパン】個別指導学習塾の「明光義塾」を1775教室展開

公開日:2023.05.09

最終更新日:2023.05.25

※以下はビジネスチャンス2023年4月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

直営・FC一体化の地域戦略開始し運営を強化

 明光ネットワークジャパン(東京都新宿区)は、個別指導学習塾「明光義塾」を全国47都道府県に展開する。教育ビジネスは、少子化やデジタル化の潮流により業界再編が加速している。そうした中、同社では市況変化に強い事業ポートフォリオを構築するため、様々な布石を打っている。取り組みについて山下一仁社長に話を聞いた。

明光ネットワークジャパン(東京都新宿区) 山下 一仁社長(63)

Profile やました・かずひと

1959年北海道生まれ。 82年北海学園大学経済学部卒業。ダイエー、日本ゲートウェイ、ドトールコーヒー、カタリナマーケティングジャパンを経て、2007年明光ネットワークジャパン入社。個別進学館事業本部長、明光キッズ事業部管掌、明光義塾事業本部長兼FC開発部管掌などを経て、2018年代表取締役社長に就任(現任)。

 

 

 同社は、設立から35年の実績とブランドの知名度で教室数を拡大してきた。現在「明光義塾」は、直営436、フランチャイズ1339の計1775教室(2022年8月末時点)を展開。生徒数は10万人を超え、個別指導では業界トップシェアを誇る。昨年からは体制をカンパニー制へと移行。直営・FCを一体化し統括することで、運営強化を図っている。

5地域のカンパニー制へ移行 エリアで権限委譲し迅速化

――2022年8月期は売上高196億円、営業利益11億円と増収増益でした。今期の見通しは。
山下 今期は、売上が前期比6.7%増の210億円、営業利益が同11.2%増の13億円の予想です。日本語学校など、コロナで非常に厳しかった分野が、政府の緩和により入学できる状況になりました。それにより回復する見込みです。
――昨年から「明光義塾」事業をカンパニー制に移行させています。
山下 カンパニー制にしたのは、基軸となる「明光義塾」の運営を安定化させるためです。ようやく出店も回復して、さらに発展させるために地域戦略が必要だと判断しました。地域に権限を委譲して、スピード感を上げる経営方針です。
――カンパニー制は、北海道と東北、関東と甲信、東海と北陸、近畿、西日本の5地域です。
山下 カンパニーなので直営もFCも一緒の組織の中で統括します。たとえば埼玉のあるエリアは、FCが何教室かあります。そこに直営でエリアマネージャーだったスタッフを入れて、直営とFCの交流をあえてさせています。直営かFCかは関係なく、全体のサービスレベルを上げていかなければいけません。何よりもお互いに勉強しあって刺激させるのが一番良いと思いました。


――移行して変化はありますか。
山下 当社はFCがメインですから、オーナーさんとのコミュニケーションの頻度が確実に上がっています。それから地域戦略として、直営・FCが一緒になって考えるスタイルを取っている。そこは非常に手応えがあります。
――確かにFCが増えれば増えるほど、コミュニケーションは取りづらくなります。
山下 当社は「明光オーナーズクラブ」という組織を作って、オーナー同士の交流を活発化させています。ブロックが22個あるので、理事は22名。その中からクラブの会長1名、副会長3名を選んでいます。運営は全部本部が支援します。そこにかつカンパニー制を導入し、直営とFCを一体化して知恵を絞ろうという訳です。どういう戦略を組むのか、どの競合がいるのか、地域によって差があります。受験の中身が変わってきたので勉強会をしようとか、進学相談会を合同でやることもできるようになりました。そこの決裁権限をカンパニープレジデントに持たせています。
――塾のビジネスは地域性によって大きく変わります。
山下 当社が全国の都道府県に満遍なく展開しているのは、規模やネットワークを活用できるメリットがあります。地域戦略など、足らないところはカンパニー制によって補えます。

2000教室が一つの目安 現場の教室長がオーナーに

――明光義塾は、一番多い時は2137教室ありました。今後の適正教室数は。
山下 2000教室くらいには戻したいと考えています。今は直営を積極的に出店してますが、商圏はだいぶ変わってきています。ですから1教室ごとの立地などを見ながら検証しています。
――直営で売上を立てて、FCで利益を出すのが御社のビジネスモデルです。
山下 その通りですが、今は逆に直営が伸びているので、直営から生まれる利益も増えています。FCもようやくオーナーさんの出店意欲が戻ってきたので、加速すると思います。
――今後は直営がメインになりますか。
山下 今は直営が好調なので、その状況をカンパニーの中でFCに波及させて、全体のレベルを上げていくという施策です。出店については、最初に直営やFCを何教室にしてと決めているわけではありません。カンパニーごとに、たとえば札幌の北区はどうするか、今伸びているTX沿線上はどうするか、と地域別に見ていく戦略です。
――1教室の平均在籍数が、直営の場合で約70名、FCが約52名。直営の方が多いのはなぜですか。
山下 施策の徹底や意識のところで、FCの方がばらつきが多い。直営は施策の決定も早いですし、すぐに浸透します。しかしFCは、オーナーさんにもご理解いただかないといけないので、オペレーションの変更等、どうしても時間がかかるのが今の実態です。コンビニエンスストアみたいに商品を入れ替えて、棚割りを作ってというわけにはいきません。
――FCオーナーが現在421名。個人と法人の割合は。
山下 加盟の段階では個人の方が多いですが︑結果的に半分は法人化しています。ここ2〜3年は法人の方からのお問い合わせも多くなっていますから、まとめて2〜3教室を開業したりしています。
――コロナ禍で複合経営に転業した会社も多いようです。
山下 やはりコロナの影響で、ガソリンスタンド事業をやってるけど、教育事業もやりたいという方はいます。スイミングスクールをやっていた方もいらっしゃいます。あと個人では、明光義塾の直営、またはFCの教室で教室長をやっていた方々が独立してオーナーになることが多いですね。
――現場で講師やマネジメントをやっていた方だと、オペレーションも分かりますね。
山下 自分がやっていた教室でそのまま独立ができる。一国一城の主になれる。まさにビジネスチャンスです。当社は飲食みたいに大きな設備投資がないので、ハードルが低い。向こう5年以内に3教室にしなくてはダメということもないし、1教室でもいいという形でやっています。

個別指導教室数は全国トップ

――物件は本部の方で探しますか。
山下 店舗開発のチームがありますので、我々が探します。以前は首都圏に全然物件がないという場合もありましたが、今は長く貢献していただいてお年を召してリタイヤしたいというオーナーさんもいて、既存教室が出てきています。
――FCはスクラップアンドビルドを常にされています。事業承継されるケースも多いですか。
山下 今ちょうど増えています。息子さん娘さんや自分の会社の社員に教室を譲渡する。それから規模が大きい場合はM&Aなどもあります。
――それはいったん直営で引き受けたり、売買のマッチングを本部が支援するのですか。
山下 オーナーさんとしても相応しいかの審査は一番大事だと思っています。そこは我々も最初から入って確認させていただきます。

 同社は「明光義塾」を中心に、複数の教育ブランドのFC展開をしている。中でも出店を加速させているのが、AIを活用した個別学習塾「自立学習RED」。生徒一人一人の学力に応じた個別最適化学習のため、様々な学習スタイルを提供できる。

AI学習「RED」を100教室 一人一人に合わせた学習法を教授

――事業セグメントは、「明光義塾直営」「明光義塾FC」「日本語学校」、そしてDXや人材事業などを展開する「その他」の4つ。「その他」をいかに伸ばすかがポイントですが、今後の展望は。
山下 まず塾・教育のところで、学童保育の「明光キッズ」や「明光キッズe」は、今後市場の状況を見ながら拡大していきます。有名私立小学校からの依頼も増えていて、放課後プログラムの受託がメインになると思います。
――AIラーニングの「自立学習RED」は今69教室。23年8月期は100教室が目標です。
山下 これは教室に管理者としての教師が一人いて、あとはタブレットで学習するというシステムです。非常に損益分岐点が低く、1教室30名くらいです。昨今、自治体との提携が決まりましたが、地方では学びたいけど塾がないところもあります。REDは人がそれほど必要ないので、過疎地での教育にも役立ちます。

FC教室数全国で1339か所 新たなブランド戦略も開始

1人1人に合わせた授業

――明光義塾のオーナーで、REDのFCもやられている方はいますか。
山下 熊本の方で明光を6教室、REDを4教室やっていらっしゃる方がいます。過疎地以外でも、対面や集団受験のギスギスしたのが嫌で、ただ基礎学力をあげたいという学生がいるので、学ぶスタイルを色々提供できます。
――AI学習で生徒の集中力は続きますか。
山下 その子に合った問題を自動的にセレクトするので、成績は非常に上がります。学習塾で一番ポイントになるのは、その子の学力に合った問題を提供することです。極端に背伸びさせない、また優しすぎても飽きてしまう。そこがすごく大事なところで、そのバランスがREDは全部データで把握できます。
――今後はこれが学習塾のトレンドになるのでは。
山下 それがAIだけでいいかと言うと、そうなっていないのが学習塾の面白いところです。対面の方がいいという声はまだまだ強い。多様性の中で、色々な学び方、色々な個性のある子供たちがいて、そこにどう合わせるかが大事。これだというのを押し付けるのは良くないです。
――REDのようなAI学習は他社もやっていますか。
山下 他社でも、似ているものをやられています。他社はずっとシステムで学習しますが、REDはある程度までいくと、それ以上はシステムで追わないで、あえて教師がフォローします。何回も学習していたら心も折れてしまいますから、そこは人が介在する必要性があります。
――生徒一人一人にどれだけカスタマイズできるかが肝になります。
山下 それを「個別最適化」と言っています。
――それだけカスタマイズするとなると、コストがかかるのでは。
山下 確かに、ICT教材のシステムなどで教室運営費のコストが上がることはあります。一方で今までかかっていた人件費に置き換えることができます。たとえば英語と数学は人が教えて、理科、社会はシステムで教える。分析や集計をする運営コストも下がると思います。
――教材費のコストは削減できる。
山下 そこが問題で、紙代の値上げ分を、ICTに置き換えることはしています。今は、教材にあるQRコードを読み取ると動画で解説が簡単に見られます。ただ無料の教材も色々出ていますが、自分一人でモチベーションが上がる人はそんなにいません。結局誰かが支えていないと勉強はしないものです。

 同社は教育事業に続く収益の柱を構築するため、DX・人材事業も強化している。新たに新会社を設立し、教育機関への拡販や外国人や日本人講師のキャリア形成のサポートを行っていく。BtoCとBtoBビジネスの2本立てにより、中期的な成長戦略を描いている。

生徒10万人のデータを蓄積 デジタルマーケティング注力

――中期経営計画ではDX戦略にも注力しています。昨年には、デジタルマーケティング専門の子会社Go Goodを設立しました。
山下 Go Goodは、グループのDX戦略の要です。明光義塾の生徒万人以上の蓄積されたデータをどう生かすか。またそれを通じて、外部の方々とアライアンスを組んで、どう広がりのあるマーケティング戦略ができるかがポイントです。
――設立からまだ半年程ですが、収益を上げています。
山下 英単語アプリや漢字練習アプリの広告枠を販売しています。中学生、高校生にターゲットが絞られるので、広告を打ちたい企業や大学がたくさんいらっしゃいます。明光義塾に限らず外販を拡大していっています。
――人材事業でも明光キャリアパートナーズを設立しました。
山下 人材紹介・派遣業も強化していきます。まず1つは外国人材。現在整備していますが、特定技能実習生も含めた人材や、インド人を中心としたIT技術者を中心に紹介しています。
――BtoCとBtoBの2本立て。この辺りは業界全体の向かう方向だと思いますが、外国人材、特定技能生などはレッドオーシャンではないですか。そこの差別化は。
山下 まさにレッドオーシャンですが、市場が大きいので少しでもシェアが取れればリターンも大きいと思っています。当社は日本語学校を元々持っているので、日本語教育の観点では、他社と比べて非常にレベルが高いものを提供できます。さらにビジネスマナーや日本の暮らしなど、日本で仕事をする上で必要なものも教育として提供できます。あとはマッチングさせても非常に厳しい労働環境の中、苦労されていたりということがあるので、送り出し機関と連携して安心して送ることが大事です。

中期経営計画策定し、総合教育事業へBtoBビジネスを進出し収益の柱を創出

外国人紹介派遣業や講師のキャリア支援も

――外国人材以外では、どのような計画を進めていますか。
山下 当社には塾の講師が約3万5000人います。その方々が就職する時のキャリア支援をやりたいというのが今後の構想です。その人たちが学校を卒業する時に、明光義塾の講師としてのスキルがあることはそもそも大事ですが、金融機関に行きたい、コンサルやりたいという時に、サポートを我々がしなくてはいけないと思います。新会社とリンクしながら、何ができるか取り組んでいくことが大事です。
――教師や社員の方の教育にも注力していく。
山下 明光に行ったら、人が育つし、サポートもあるし、OBもいる。そうなるように今後大事な課題として取り組んでいきたい。学生だけでなく中途採用の方もそうですが、次にスキルアップするには教育が必要です。そういう研修が好きなスタッフがいっぱいいますから、出来ると思います。
――目指していくのは総合教育事業だと。
山下 当社のビジョンとして掲げているのが、「人の可能性をひらく」事業の推進です。教育についてもキャリアについても、人の可能性というところを大事にしていきます。

塾を柱に事業領域を拡大していく

 

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