
【メディアパワー】代替わりを契機に新業態の展開に注力
公開日:2025.08.21
最終更新日:2025.08.21
※以下はビジネスチャンス2025年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
質の高い運営でブランドトップの加盟店を目指す
メディアパワーは福島県須賀川市を拠点に、5業態14店舗を運営するフランチャイジーだ。中でも9店舗を展開する「ブックオフ」は、初期加盟店として長らく店舗運営をしてきた。2018年からはブックオフ本部主催の全国オーナー会で表彰される「加盟企業アワード優秀企業賞」を8年連続受賞するなど、FC加盟店としての質の高さにも注力してきた。今年5月で30期という節目を迎えた同社は現在、代替わりをきっかけに開始した新規事業の展開に奮闘している。
ブックオフ中心に5業態14店舗を展開 初期加盟店として店舗数拡大
メディアパワーは現在、福島県須賀川市を拠点に「ブックオフ」9店舗、「銀だこ」2店舗に加えて、「ディーキャリア」や「Italian Kitchen VANSAN(以下:バンサン)」、「POCKET FITNESS」など、計5業態を展開している。
同社は1996年に吉田社長の父が創業。当時はレンタルコミック店を須賀川と郡山で2店舗経営していた。創業から約2年後、ブックオフに加盟し、1号店である郡山桜通店をオープンした。
90年代後半から2007年ごろにかけて、ブックオフとゲーム専門店「カメレオンクラブ」を併設した店舗を次々に出店。およそ10カ所に出店し、計20店まで店舗数が拡大した。ブックオフ内でもゲームソフトの取り扱いはあったが、より特化した専門業態を展開するためカメレオンクラブに加盟したという。
加盟から早々に福島県内の出店をカバーし、さらに広域への進出を目指したが、地続きの地域にはすでに別の加盟店が出店済みだった。そのため、本部が撤退した青森県八戸市へ飛び地で出店を決め、2010年、2011年と2年連続で新店舗をオープンした。

Italian kitchenVANSANとブックオフの複合店
就労移行支援事業の利用者を自社で雇用しシナジー効果発揮
ブックオフとカメレオンクラブを主軸に店舗数を拡大していく最中、1999年には「築地銀だこ」にも加盟している。銀だこは一時、8店舗まで拡大するほどの勢いだったという。
しかし、新規事業に注力し出店が拡大する反面、既存事業に投資を行う余裕が無くなってしまった。中でも特に課題となっていたのが人材不足だ。
特に急拡大させた銀だこは、山形県の米沢市など遠隔地への出店も行っていたが、人材の採用が追い付いておらず、役員が毎日須賀川市から現地まで通わなければならないほどだった。店長を置かずにアルバイトスタッフだけでオペレーションを回すことが常態化していたという。
そのような中、吉田社長が入社したのは2011年のことだ。東日本大震災によって店舗が津波や地震の被害を受けたことをきっかけに、家業へと戻ることになった。そこで吉田社長は、出店促進・新規事業開拓へ注力する方針により、経営が悪化していた内部状況を知ることになった。吉田社長は入社後から、慢性的な人手不足を解消するべく改善を図っていった。
同社では2020年に就労移行支援事業サービスを提供するディーキャリアに加盟しているが、加盟に至った経緯には吉田社長の過去の経験が関わっている。吉田社長は入社前、大学卒業後7年間にわたってブックオフの直営店を渡り歩いていた。店長やエリアマネージャーを経験しキャリアを積む中で、ブックオフチェーン内で売上が全国トップレベルの町田中央通り店の店長を務めた経験もある。同店はアルバイトスタッフが100人在籍していたほどの大型店舗だ。
吉田社長はブックオフ店長時代の経験を踏まえて次のように語る。
「ブックオフで長く働いていた時、店長として採用をしていると特性のある方が面接によく来ることを強く実感していました。生きづらさを感じている人が多くいることは間違いなかったため、それをフォローすることができればと思っています。また、生活保護を受けて生活している方が1人納税者になるだけで、社会に1億円を生み出すソーシャルインパクトがあると聞きました。就労移行支援事業を行うことで、地域への社会貢献に役立つのではないかと思いました」(吉田社長)
ディーキャリアでは障害や難病を持つ人に就職や復職の支援を行う。同サービスを展開することで、元利用者を同社で雇用するなど人材採用面でもシナジーを発揮している。実際に累計6人の自社での雇用に成功しており、現在も同店の元利用者が2人在籍しているという。同事業は現在1拠点を展開中で、今後も拠点を増加する方針だ。
また人材採用のほか、離職率を低く抑えることに成功し、既存事業の立て直しが順調に進んでいった。
「現在、築地銀だこザ・モール郡山店の月商は800~1000万円で推移しており、そのうち利益は約15%です。社員ゼロで回していた時代から、1店舗に2人の社員を置くことができるようになりました。突発的なアルバイト従業員の離脱にも対応できる体制を整えています」(吉田社長)

POCKET FITNESS郡山針生店
24年に新規で2業態をスタート 手堅く増店を進める方針
吉田社長が2017年に現職に就任して以降、人材不足の解消に取り組んできた。次なる戦略は新業態への挑戦だ。2024年にはバンサンとPOCKET FITNESSの2つの新規事業をスタートした。
イタリアンレストラン業態のバンサンは、ブックオフ郡山安積店の1フロアを改装しオープンしており、現在の月商は約600万円程度を推移している。オープン後から求人への応募が多く採用には苦労しなかったという。今後課題となるのはマネジメント人材の育成だ。
「バンサンに関しては、オープン決定後に社員を採用する方針を取っていました。しかし、その方法では料理人の採用に傾いてしまい、マネジメント経験者を採用することができませんでした。社風や風土を伝えきれず、指導の難しさを感じたため、今は自社で育成した社員に働いてもらう方向も見始めています」(吉田社長)
新規事業の中でも、フィットネス業態のPOCKET FITNESSは特に好調だ。1号店のプレオープンの際は2週間で目標の2倍の会員を集め、現在も同数の会員数を維持しているという。出店はまだ1店舗のみだが、運営中の店舗の業態転換による増店を検討中だ。
同社は今後、現在展開済みのブランドの増店を行っていく方針で、全てのブランドでトップレベルのクオリティの店舗運営を目指す。
「今後も手堅く事業の運営を行っていく方針です。福島一、東北一の会社を目指していくというよりは、それぞれのブランドでトップレベルのFCになるという点に重きを置いて運営していきたいと思っています」(吉田社長)
吉田 尚広社長(43)
Profile◉よしだ・たかひろ
1981年福島県生まれ。1994年ブックオフコーポレーション株式会社に入社。2011年、東日本大震災を機に7年間の修業期間を経て株式会社メディアパワーに入社。店長・マネージャー、常務取締役営業本部長を経て2017年に代表取締役に就任。
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