
【LifeFit】事業開始から3年で100店舗を達成した24hジム
公開日:2025.09.12
最終更新日:2025.09.05
※以下はビジネスチャンス2025年10月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
東京メトロや松竹系などの加盟で成長加速に期待
今年2月、24h無人フィットネスジム「LifeFit」を手掛けるFiTが、全国100店舗出店を達成した。同社はリーズナブルな価格設定と非接触サービスでコロナ禍でも順調に店舗数を伸ばしてきた。さらに直近では、東京メトロや松竹グループ子会社をはじめとする大手企業の加盟が決まり、飛躍に弾みをつける。加藤恵多社長に、ビジネスモデル考案の背景や出店拡大に成功した要因を聞いた。
昨年は60店舗を出店 今年は倍以上の出店計画
コロナ禍の22年にオープンした LifeFit は、アプリやシステムを活用した非接触サービスが特徴の24h無人フィットネスジムだ。利用者は専用アプリで会員登録を行い、利用プランの選択と決済を行う。入退館はアプリと紐づけたセキュリティゲートで管理しており、利用開始から解約まで顧客完結となる。IT活用による省人化を実現した同店は、30日プランを2980円から提供しており、フィットネス未経験者からも支持を得ている。
--チェーン展開3年で100店舗を達成したのが今年の2月。それ以降も出店攻勢が続いていますね。
加藤 当社は22年2月に京都の一乗寺に直営店を出店し、翌月の3月に知人オーナーによるFC1号店がスタートしました。両店とも1~2カ月でお客様が1000名近く集まったため、公式的なFC展開を見据えるようになりました。そして、23年にFCの一般公募を開始しました。
それからすぐに10~20件のお引き 合いがあり、23年には20店舗近くをオ ープンしました。しかし、マシンやシステムの不具合があったため、同年末はFC募集よりも立て直しに集中することにして、マシンのメーカーチェンジやシステムの入れ替えを行いました。この立て直しがすごく上手くいったので、24年に入ってからFC募集を再開し、同年に60店舗を出店し、合計で90店舗になりました。今年7月8日時点の店舗数は、145店舗となっています。
--100店舗を超え、加盟企業の属性に変化は出てきましたか。
加藤 100店舗になってくると、東京メトロさんや松竹系の企業さんといった大手企業にも加盟していただけるようになりました。また併行して、既存オーナーさんの増店ペースも早まっており、チェーンとしての拡大が始まったように感じます。そのため、今年は直営とFCの両軸で出店攻勢を掛けて、年末の260店舗を目指します。

3年で100店舗を達成
コロナ禍で学生起業 非接触型モデルを考案
--加藤社長は学生時代に起業されたということですが、どのような経緯だったのですか。
加藤 私はもともとスポーツが好きで、高校生のときにラグビーを始め、その後は再生医療の研究をしたくてiPS細胞に強い京都大学に進みました。そのままiPS細胞研究の道に進もうと思っていたのですが、20年のコロナで大学に行けず、ラグビー部の活動もなくなり、多くの時間ができました。
そうした中で、興味を持ったのがフィットネスです。私が研究していた再生医療は病気になった後にフォーカスした分野であり、10年、20年かけても病気の一部が分かるかどうかの世界です。それに対して、フィットネスは病気になる前にフォーカスした分野で、予防の観点から非常に重要だと考えました。また私自身、ラグビーを通して身体を動かすことによって人生が豊かになった原体験を持っています。そこでフィットネスによる健康づくりを普及したいと考え、20年12月に会社を設立しました。
--LifeFit事業を開始するまでの間は何をされていたのですか。
加藤 当時は学生だったので、LifeFitの前身になるような学生向けのフィットネスジムを運営していました。その運営を通して、業界の課題感やシステム開発のアイデアなど多くの気づきを得ました。
--当時はコロナが蔓延しており、起業のタイミングとしては難しかったと思います。
加藤 むしろ追い風でした。フィットネス業界はコロナのタイミングで強く批判されましたが、当社のモデルはアプリを活用した完全無人運営です。非接触といった部分がアフターコロナのフィットネスの在り方ということで、市場にハマったのだと思います。お客様の評判もすごく良かったですし、FCのお引き合いの中でも無人と健康づくりを兼ね揃えたサービスや、ストック型の収益モデルをご評価いただき、コロナで大変な時期に新たな事業柱として取り入れていただくこともありました。
--非接触のビジネスモデルを思い付いたのはいつだったのですか。
加藤 創業当初です。当時は私もお店に立って会員登録のサポートなどをしていたのですが、会員登録にシステムを用いることで、非接触や業務効率化が実現できるのではないかと感じていました。ビジネスモデルの着想はコロナの最中で、そこから約1年で準備を整え、22年2月にLifeFitをスタートしたという流れですね。

受付不要の非接触モデルがコロナ禍で追い風に
変動費にITを活用 低価格・高品質を実現
--LifeFitは非接触に加え、低価格料金と小規模店舗という点も特徴的ですね。
加藤 価格面でいうと、お客様の価値基準として1万円でそれなりの品質よりも、3000円で高品質の方が喜んでいただけると思います。そこは創業日から一貫して考えており、これを実現するために収益構造の最適化を図っています。たとえば、人件費や販促費などの変動費にITを活用し、人件費であれば旧来は毎月100万円掛かっていたものが10万円で済むようになりました。こうして低価格でも利益が出る構造にしたのが、現行の2980円です。
--入会金や手数料もない圧倒的低価格は、集客効果が期待できます。
加藤 さらに、当店は幅広い立地に出店できます。旧来のフィットネスは100坪でも小さいと言われていましたが、当社の標準モデルは60坪で、一番小さい店舗は20坪、大きい店舗は120坪と幅があります。お客様がフィットネス選びをするにあたって、家からのアクセスは非常に重要な要素です。そのため、私たちはコンパクトな店で数を出していきます。
--主な出店立地は。
加藤 ビルインやロードサイド、SCを含めて幅広い立地に出店しており、その比率はほぼ均等です。岡山や米子など中国エリアでも繁盛店が多いのですが、車社会なので駐車台数が20台以上を確保できるテナントに出店しています。一方、東京は足元商圏になるので駅近の徒歩5分圏内で探しています。
--昨今、低価格帯のフィットネスブランドが続々と登場していますが、その辺りはどう見ていますか。
加藤 当社のポジショニングは、トレーニング「ガチ勢」と「フィットネスに興味ない勢」の間です。前段として、日本のフィットネス参加率は4%で、フィットネスに興味がない人は60%、ある程度興味はあるけれど利用できていない人が36%と言われています。4%にあたる人は某24hマシンジムに通うような人で、60%にあたる人はフィットネス設備よりも店舗に併設されている別のサービスを目当てに通うような人です。当社のペルソナは36%にあたる層で、トレーニングガチ勢ではないけれども、しっかりしたトレーニングを低価格でしたいという人がメインのお客様となっています。そのため、低価格業態がレッドオーシャンであることは間違いないですが、その中のブルーオーシャンを確立できていると考えます。
--フィットネスに興味がありつつも踏み出せない人を取り込むために、どのような工夫をされていますか。
加藤 お客様にカジュアルに使っていただく工夫をしています。たとえば、旧来のジムには物理扉があって、スタッフアワーに会員登録をして物理キーをもらい、建物に入るというスキームが一般的です。それだと中の様子が分からないため、すごく入りづらいですよね。その点、当店はゲートで入退室を管理しているため、建物に入って中の様子を見ることができます。ジムの雰囲気を感じてもらい、利用したい場合はその場でアプリをダウンロードし、会員登録と決済をすればすぐに利用可能となります。イメージとしては駅の改札に近いと思います。

20 ~120坪まで対応できる柔軟な出店モデル
坪数から収益を逆算 店舗で異なる価格設定
FCで多店舗展開を実現するには、消費者需要の獲得と開業しやすいパッケージが不可欠だ。その点、同社はマシンメーカーの開拓を行い、自らが代理店になることで初期投資合計を3000万円程度に抑えている。加えて、20~120坪まで対応できる柔軟なモデルで、あらゆる場所への出店を可能にした。店舗数を増やすことで利便性を向上、さらに圧倒的価格を武器に消費者需要の獲得に繋げている。
--初期投資を教えてください。
加藤 標準60坪モデルの場合は、加盟金250万円、開業前準備費50万円、テナント取得費480万円、施工費1500~2000万円、マシン購入費1200万円、セキュリティゲートや店舗管理OSなどのシステム導入費250万円、開業前パッケージ費40万円で、合計で3000~4000万円です。
--マシンジムにしては、かなり低い初期投資額です。
加藤 他社との明確な差分は、施工費とマシン費にあります。100坪ほどの規模を持つ旧来のジムは坪あたりの金額が掛かるため、施工費が高くなります。対して、当社はコンパクトなサイズに加え、安くてもクオリティの高い、設計・施工とデザイ ンを本部として提供しており、施工費を抑えています。
マシンは海外から直接仕入れており、当社がメーカーとして直接、加盟店に販売しています。旧来のジムはブランドや購入経路を指定されているケースも多く、マシンだけで3000~4000万円掛かることもありますが、当社は1000万円前後に抑えています。
--実費に近いということですね。収益モデルは。
加藤 売上は、定期利用者の人数と都度利用者の人数の合算になります。価格帯は店舗によって異なり、30日プランで2980円から4980円の幅があり、さらに年間契約者は2780円というように割引くケースもあります。
収益計算は基本的に坪あたりの人数で計算しており、損益分岐のラインは坪あたり6人です。大半の店舗が1〜2カ月で損益分岐を突破し、3カ月目には坪あたり10人を超えます。坪12人になると混雑状態になるイメージです。
標準モデルの場合、定期利用者700人と都度利用200回で月商250万円を見込んでいます。対して、営業利益は100万円(40%)です。
経費の内訳は、人件費10万円、家賃60万円、水高熱費15万円、広告宣伝費10万円、消耗品等5万円、通信費等5万円、ロイヤリティ37.5万円(15%)、決済手数料8.75万円(3.5%)となっています。
--そうなると、出店の際は物件坪数がポイントになりそうです。
加藤 非常に重要ですね。坪数から逆算して変数を設定する形となります。たとえば、家賃が坪あたり2万円すると収益が成り立ちづらいので、会費を3980円か4980円に設定します。

入退館はアプリとセキュリティゲートで管理
離脱抑制への取り組み 鍵を握るのは自社アプリ
--会員獲得のための集客方法は。
加藤 1番の方法は、好立地で視認性の良いテナントに出店することです。実際、目立つ場所にある店舗は、広告費を1円も掛けずに会員を集めた例もあります。エリアによってはポスティングやウェブ広告、SNSや紹介などを取り入れて、データを見ながら強弱をつけて運用していきます。
--都度利用のチケットを買えば、お試しもできます。
加藤 当店は無人といえども、オープン前の1週間はオーナーさんと本部のメンバーで、説明会や体験会を行います。そこで100~200人にお試しいただいて、その場で定期登録いただくケースが多いです。オープン後に関しては基本的に無人運営になるため、お試しの都度利用や初月限定の定期利用無料クーポンを使ってご利用いただきます。
--解約率はどれくらいですか。
加藤 当店はアプリで簡単に登録と解約ができるようになっており、表面的な解約率は業界平均の8%になっています。ただ、休会の概念がなく、30日で2980円の自動更新になります。そのため、ケガや帰省などの理由で一時的な解約が多く、半数近くのお客様が戻ってきます。そういった意味では、ほかの24hジムの中では結果的に解約率が低いのではないかと思います。
--離脱抑制の鍵を握るのもアプリということですね。
加藤 入会後はアプリのチャット機能でトレーニングの相談を受け付けるほか、利用頻度が落ちてしまった方にはメッセージを入れています。また、最近ではアプリ内でウィークリーミッションを設けており、達成する毎に健康ポイントが貯まる仕組みを導入しました。貯めたポイントは、近隣のリラクゼーションサロンで使える割引券や、提携先のプロテインの購入に使えます。このように、運動を楽しく習慣化することにもアプリを活用しています。
アプリを通してお客様とあらゆるコミュニケーションを取り、伴走支援していくところがデジタルをすべて内製化している強みですし、今後も強化していきたいポイントです。
新規加盟増の傍ら 既存オーナーの増店加速
--直営とFCの内訳はどのように考えていますか。
加藤 直営3割、FC7割を想定しています。現在は直営が28店舗ですが、年内にあと42店舗を出店し、70店舗体制にする予定です。一方、FCは117店舗となっており、年内で残り73店舗の出店を予定しています。
--直近のトピックとして東京メトロや松竹マルチプレックスシアターズといった大手企業系の加盟が決まっています。
加藤 東京メトロさんは金融機関様のご紹介で、会社方針として鉄道から出た事業を始めるタイミングでした。その中で、フィットネスは地域の人々の健康を作り、健康な人が増えると結果的に鉄道の利用も増えるということで、興味を持っていただきました。昨年6月に加盟いただき、今後は東京メトロ沿線沿いに出店していく構想です。また、電車広告も出していただいているので、当店の認知も上がりました。
各社の加盟理由は既存事業だけに留まらず、新規事業に挑戦されるという中で、先方と当社でそれぞれ提供できること、貢献できることの思惑が合致したという形です。
--御社はフィットネス事業者の立ち位置ではなく、「ヘルステックスタートアップ」と位置づけています。
加藤 年に「LifeCoach」から現在の「FiT」に社名変更したのですが、これはフィットネス×ITを縮めた名称です。旧来のフィットネスジムは不動産事業や装置産業に近いイメージでした。しかし、今の時代の中でITを活用することによって、アプリの中でお客様と接点を持ちながらフィットネスの習慣化に貢献できます。
また、旧来は利用に毎月1万円ほど掛かったものが、ITによる省人化などで今では数千円で提供できるようになりました。お客様に安くて良いものを届ける手段として、ITの活用は非常に可能性があると考え、これをLifeFitという分野で実行しています。今後の戦略としても、健康産業の中で安くて品質の高いものを届けていきたいと思っています。
LifeFit
FiT
(京都市中京区)
加藤 恵多社長(25)
プロフィール:(かとう・けいた)
1999年、愛知県瀬戸市生まれ。京都大学医学部在学時の2020年12月に創業、代表取締役に就任。2022年2月にLifeFitをリリースし、2023年にはアジアを代表する30歳以下の起業家 Forbes Asia Under 30にも選出された。フィットネス×ITで、目指す世界観である「暮らしにフィットネスを」に向けて挑戦を続けている。
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