【特別対談】高論卓説 地方を拠点に地域活性化を後押しするFCビジネス(後編)

公開日:2024.07.04

最終更新日:2024.07.04

※以下はビジネスチャンス2024年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

自社事業で地元のコミュニティ形成に貢献 親和性高いブランドの組み合わせを重視

挑戦の積み重ねが成長の糧に 変化と対応が活性化に繋がる

ーーちなみに伊藤社長は、震災を機に上場されましたね。
伊藤 以前からいずれは上場したいと思っていましたが、震災があったことでその気持ちが強くなりました。何か強いものがないと社員全員が団結して前に進めないと思ったからです。当時目標にしたのは3年で上場することです。そうしたら、実際に震災から3年後の2014年3月20日に上場できたのです。当時は、当社のような被災地を応援したいという雰囲気が世の中にあったのかもしれないですね。
ーー震災が起こった当時、どのような取り組みをされたのでしょうか。
伊藤 当社の所在地である仙台には、震災の影響による移住で人口が増えました。それを受けて、当社にできることは何かと考えました。格好良く言えば、当社のコンセプトにもなっている、地域社会のお役に立つことが目標でした。そこで、TSUTAYAを中心にしたショッピングモールが考えにぴったりはまりました。
 また、震災直後から福島県にイエローハットやアップガレージを出店しました。被災地を元気にするには、店を作ることが一番です。原発の関係でしばらく閉めていた店もありましたが、震災から1年後に当社が1番最初にオープンしました。福島に帰ってきて生活したい人がいても、店が無かったら困ります。当社がイエローハットで手掛けているようなタイヤ交換や車検は、地方の人にとっては必需品です。都会のように交通網が発達しているわけではないため、車が無ければ病院や買い物に行くことも難しいです。そのような理由から、震災後には積極的に出店を行いました。
ーー地域社会のための出店を、実際に実現させることは非常に大変なことだったと思います。
伊藤 当社は「永遠のチャレンジ企業」であることを意識しています。常にとにかくチャレンジする。会社も人間もチャレンジ精神が無いと駄目ですよ。変化対応しなければ、衰退していくだけです。仕事が一番自己成長にもなるでしょうし、自分で描いたことが実現していくんですから、仕事が一番面白いと思いますね。
山内 そうですね。新しいことを始めると、新しいリーダーも生まれます。
伊藤 また「永遠の中小企業」も、当社のキャッチフレーズの1つです。どういう意味かというと、1人で二役や三役をするということです。自分はこれだけしかできないなんてことはなく、とにかく何でもやってみようと言っています。たとえば、当社の第2営業部の部長は当初、1事業だけの部長でしたが、いつの間にかその他の事業も掛け持ちしていたりします。
ーー仕事内容の幅が広いことで、モチベーションが上がる人もいれば、逆に下がってしまう人もそれぞれいると思いますが、人選はどのように行っているのでしょうか。
伊藤 その場合は、チャレンジすることがモチベーションになるような人に優先的にやってもらいます。自ら手を挙げるような前向きな気持ちの方がいいですから。
山内 御社の話を聞いていると、やりたいと言って手を挙げる人が多いんだろうなと思います。そういうことを言いやすく、また言う人が多い風土があるのかなと何となく感じますね。
伊藤 とにかくチャレンジして失敗しなさい、失敗しなかったら自己成長しないよというのが、私の口癖です。御社もそういう気風があるのではないでしょうか。
山内 私も視座の高さは非常に大事だと思うので、最近だと失敗しなさい、出張しなさいとよく言っています。こうした経験を積むのは余裕がある時に限られるかもしれませんが、色々なものを見ている人とそうでない人では、問題が起きた時に解決する手段の量が圧倒的に違います。伊藤 社長の言うことを聞くのも良いですが、実際の現場を生で見ることや、生で多くの人と話をすることなどは刺激になりますね。

震災直後の2012年11月にオープンした「イエローハット」「アップガレージ」店舗

店舗の強みは「雑談」ができること 地元のコミュニティ形成を重視

ーー失敗を恐れずチャレンジすることが、社員にとっても、会社にとっても成長のきっかけになるということですね。
伊藤 同じ会社にいても、違う仕事をすれば、転職したような気持ちで良いのではと聞いたことがありますが、確かにそうだと思います。
山内
 そうですね。企業としての大事なことは変わらずに、違う事業ができるのは、大きなチャンスですよね。良い会社の風土のまま、新しい挑戦ができるのはすごいメリットだと思います。
伊藤 先ほど言ったように、当社の社員は兼務が多いですが、ブランドオフの店舗には店長が各1人ずつ必要ですよね。
山内 そうですね。あとは、お客様とゆっくり話ができる方が良いと思います。新規のお客様だけでも買取は増えていきますが、2回、3回と繰り返すことで、信頼が積みあがって、より良いものを持ってきてくれることが多いです。お客様に親身になれる人や、雑談だけでもできる方が向いていると思います。
伊藤 私も、雑談はどんどんするように言っています。ネット商売だとできないことが、当社のような店舗の商売ではできます。店とお客様が馬鹿を言い合えるくらいの関係が理想ですね。
山内 オンラインに限って同じものを作っても、Amazonのような企業に勝つことはできないので、店舗まで足を運んで、わざわざ来てくれる人を繋いでいかないといけません。「店舗にいる人と話したい」とか「近くまで来たから寄っていこう」という理由で、店舗に来てくださる方が結構多いと感じています。その点は大事にしています。
ーーお二方とも、コミュニティの形成は意識していらっしゃるということですね。伊藤社長がされている複合型の施設づくりも、その1つですね。
伊藤 イエローハットを展開しているうちに、利用者の待ち時間を潰せる店を隣に作ったら良いのではないかと考えました。イエローハットの隣にはTSUTAYA、さらにその隣にはコメダ珈琲店というイメージです。そのような場所をいくつも作るうちに、雇用も確保でき、地域のお客様のためにもなると思うようになりました。
山内 実は、グループのコメ兵でもコメダ珈琲店さんとタイアップして、コメダさんの駐車場に移動式の買取カー(キャンピングカー)を作ったことがあります。「査定に来るだけでコーヒーチケットを進呈します」という宣伝で、コーヒーチケットを配りました。この企画は上手くいった事例の1つになりました。伊藤社長が複合施設を作っていらっしゃるように、近くに置くことで上手くいくサービスというのは絶対あります。買取であればショッピングセンターやスーパーのような、頻繁に通う場所の近くになります。そういった親和性が高い組み合わせを考えることは、今後の地方創生を実現していくためにも重要なことですね。

タイアップ催事企画「買取キャラバン」の様子

高論卓説 地方を拠点に地域活性化を後押しするFCビジネス(前編はこちら)

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