【介護リフォーム本舗】今期売上高18億円を目指す介護リフォームチェーン
公開日:2024.11.27
最終更新日:2024.11.27
※以下はビジネスチャンス2024年12月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
約1200の介護事業者と提携し年間約2万件の施工実績
ユニバーサルスペース(神奈川県横浜市)は、介護住宅リフォームに特化したFC「介護リフォーム本舗」を展開している。現在、全国で直営3店、FC100店が営業中だ。遠藤哉社長は、2009年の創業以来、介護リフォームに特化しており、2022年よりDX化の推進とコミュニケーション力重視の2大方針を基にチェーンを全国に拡大。約1200の介護事業者との提携により、2023年には1万9017件の施工実績を達成した。さらに今年は2万件を越す見通しだという。介護リフォームでは唯一、全国で100店を越すネットワークになったことで、最近では大手住宅建設会社からの提携依頼も増えており”成長第2ステージ”入りを実感しているという。
Profile えんどう・はじめ
1975年生まれ、神奈川県藤沢市出身。1998年に積水ハウス株式会社入社、技術職として約300棟の新築注文住宅の現場責任者に11年間携わる。2005年に担当していた新築で1件の介護リフォームの経験をしたことで建築・介護の課題に関心を持ち、2009年に株式会社ユニバーサルスペースを創業。代表取締役に就任し、現在に至る。
施工単価は1件あたり約8万円大手建設会社と業務提携
介護リフォームとは、介護認定を受けた人が自宅での生活に安全性を高めるために、費用の補助を受けて行う住宅改修のことだ。介護保険の対象となるのは最大20万円の工事までで、対象者の所得に応じて1〜3割の自己負担で住宅改修をすることができる。
介護保険適用の対象工事は、手すりの取付け、段差の解消、滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更、引き戸等への扉の取替え、洋式便器等への便器の取替えの5種類と、それに付帯して必要となる住宅改修と法律で定められている。利用の対象となるのは、要支援1〜2または要介護1〜5の介護保険の認定を受けた人だ。同社の場合、最も多い顧客層は70〜80代の高齢者で、要介護1〜2の認定を受けた人だという。
自宅で手すりを取り付けたり段差を解消したりすることで、高齢者は自力で歩いてトイレや風呂を使えるようになる。さらに転倒などによる不慮の事故を防げるため、リフォームを行うメリットは大きい。しかも、その費用の大半は介護保険からまかなわれ、施主の負担は1割程度なので、サービスの存在を知れば「是非使いたい」となる。
ただ、事業者にとっては、工事単価が平均10万円弱と安いことがネックとなる。そのため、業務効率を高める工夫が必要だ。そこで、同社では創業当初よりITを活用した業務効率化に力を入れている。
これまで年間で得た約12万件に上る施工実績の顧客データは、オリジナルネットワーク「FUSⅠ(ファス)」内に蓄積されている。同社ではこのデータベースを活用して、工事の見積もりや申請書類の作成などのシステム化を図ってきた。たとえば、現地調査で見積もりから契約までの工程をその場で簡単に完了できるシステムが「FUSⅡ(ファスツー)」だ。FUSⅠに蓄積されたデータを、見積もりや図面の作成に応用しているもので、施主宅を訪問した際、その場で施主やケアマネジャーと相談しながら、iPad上で簡単に施工図面や見積もりが作成できる。
FUSⅡを使用すると、画面上でいくつかの項目を選択し必要なパーツを並べていくことで、複雑な製図をすることなく簡単に図面を作成できる。また、システム内では介護保険適用の施工に必要な部材が全て確認でき、FUSⅡ上で作成した図面に選んだパーツを表示させることができる。画面上では、パーツの長さや大きさの変更も可能なため、施主にとっても工事後のイメージが湧きやすくなる。商品を選んで図面を作成した後は、施主の負担額の確認ができるため、複雑な操作や説明をする必要無く見積もりの作成が可能だ。
今年5月には、理由書作成システム「FUSⅢ(ファススリー)」を開発した。要介護認定を受け、介護保険を利用して住宅改修を行うためには、ケアマネジャーが作成した「住宅改修が必要な理由書」が必要になる。
「しかし、理由書の作成には手間がかかるので、ケアマネさんにとっては気が進まない仕事という印象が強いのです。そこで当社のFUSⅢを活用すると、これまで通常2時間かかっていた理由書の作成時間をわずか10分前後に短縮することが可能です。これなら忙しいケアマネさんにも取り組んでいただけます」(遠藤社長)
また、理由書の作成のフォーマットは自治体ごとに異なるが、現在は東京都と神奈川県の全ての市区町村の書類様式に対応。そのほか全国の高齢者人口の5割を含む各地の市区町村の介護保険の申請資料もすでに反映済みだという。今後も対応エリアを順次拡大予定だ。
オリジナルツールを入り口に新規提携先を開拓
一方、介護リフォームはDXによる業務効率化と合わせて、介護事業者との日頃からの連携が大事だ。そこで、同社はケアマネジャーや介護事業者から信頼を獲得するため、チェーン研修として「7つの心得」を設定している。それは、①相談を断らない、②スピード対応、③報連相の徹底、④向上心を持つ、⑤確認の徹底、⑥技術力を磨く、⑦コミュニケーションを重視する、以上の7項目。これらを日頃から、きちんと実践するようにチェーンスタッフに対して指導しているという。
さらに、オリジナル開発した前述の各種DXツールの存在を介護事業者やケアマネジャーに知ってもらうことにも努めている。同社は全国約16万の介護事業所の厚生労働省データを分析し、提携先となる介護事業者のデータを作成し、独自のマーケティングを行っている。
具体的には、エリアごとに介護事業者の数や社員の人数、顧客規模などをデータ化。そのデータをもとにした効率的なアプローチで、介護事業者やケアマネジャー、福祉用具専門業者とのコネクションを強化し、同社が持つ独自のシステム、ツールの存在や使い勝手の良さを知ってもらうのだ。
「DXの武器を持っていることが当社の強みです。提携してもらうためにも、一回営業しただけでは駄目で、何回も足を運ぶことで当社と組んでもいいかなと思ってもらえます。その入り口として当社開発のシステムが提携先の増加に繋がります。高齢者が顧客のビジネスのため、対応の仕方や気を付けるポイントなどを研修で行っています。しかし、信頼を得られてもビジネスとして組めるかどうかとは別の話になると思います。そこで、DXツールが強みとして生きてきます」(遠藤社長)
粗利率50%の無店舗型ビジネス法人オーナーが9割以上
「介護リフォーム本舗」の開業費用は加盟金200万円、保証金50万円、研修費100万円、その他約100万円を合わせて、総額約500万円だ。無店舗型のため物件取得費や内装費は不要。月商は200〜300万円で、そのうち粗利率は約50%。ロイヤリティは8%で、システム使用料・共通販促費が5万5000円だ。
現在の加盟店のうち、法人オーナーは9割以上を占めている。そのうちサービス業が40%、建設業が36%、ほかメーカーや不動産業、情報通信業と続く。オペレーション人数は、1店あたり1.5人体制を推奨している。
「活躍している個人加盟の方もいますが、独立系のオーナーは8%ほどにとどまっており、9割以上が法人です。冠婚葬祭事業などを本業にされている法人オーナーの方もいますし、上場企業で加盟されているケースもあります。介護リフォームという地域に根差したビジネスなので、地元の名士のような方が、地域密着で繋がっているのではないかと考えています」(遠藤社長)
最近の傾向としては、大手住宅・建設会社が、同社のネットワークに注目し、業務提携を申し込んでくるケースが増えているという。
ハウスメーカーの顧客がマイホームを購入して20〜30年経過すると、高齢化による介護リフォームの話が持ち上がるという。介護リフォームの工事は1件あたり10万円前後のため日頃、数百、数千万円単位の仕事を扱っている大手企業では対応しきれない。そこで、こうした場合は業務提携先として、同社に顧客が紹介される流れになることが多くなっている。
「家を建てた会社に介護リフォームの相談を持ち掛ける顧客は多いため、大手のハウスメーカーはその顧客を外に流さないよう、業務提携している当社に送客し、当社はフィーをバックするというビジネスができています。大手建設会社が対応していないリフォームの小工事を、丸ごとこちらに振ってもらえるので、お互いにウィンウィンの関係です」(遠藤社長)
今期はチェーン全体で18億円の売上を目指す。そのほか、既存店の追加出店に注力している。コロナ下により停滞してしまった新規加盟開発も今後は再開する方針だ。
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