【ジェイエフエフシステムズ】飲食5ブランドに加盟するマルチユニット・フランチャイジー
公開日:2025.10.22
最終更新日:2025.09.26
※以下はビジネスチャンス2025年10月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
大阪を本拠地とするジェイエフエフシステムズは「鳥貴族」や「屋台居酒屋大阪満マル」など、飲食FC5ブランドに加盟するメガフランチャイジーだ。中でも、メインブランド「鳥貴族」は千葉や大阪、沖縄など幅広いエリアに43店舗を構えており、運営店舗数は同ブランドで2番目の規模となる。同社の沿革や人材採用・育成への取り組み、今後の展望について、二代目社長の野村裕一氏に話を聞いた。
鳥貴族43店舗を中心にFC50店舗を運営
1996年に設立した同社の祖業は新聞販売事業。飲食事業に参入したのは2002年で、鳥貴族への加盟がきっかけとなった。現在は新聞販売事業を縮小し、飲食事業と人材紹介・派遣ビジネスを中心事業としている。今でこそ鳥貴族で2番目の規模を誇る同社だが、そこに至るまでの道のりは険しかった。
過度な出店で内部崩壊寸前 運営会社統合で体制整備
─現在、御社は「鳥貴族」を中心としたFC事業を営まれていますが、祖業は新聞販売事業と聞いています。
野村 先代の野村武(現会長)が1996年に有限会社アミューズを設立し、その2年後に毎日新聞の新聞販売事業を展開しました。その後、2002年に「鳥貴族」を出店したのが飲食事業の始まりです。
当時、新聞販売事業の業績は良かったのですが、先代は時代の流れとともに新聞が衰退していくだろうと考えました。そこで、別の事業にチャレンジするべくFC加盟に至ったそうです。
─なぜ、鳥貴族に加盟されたのですか。
野村 大阪の堺市深井で新聞販売事業をやっていた時に、従業員とのご飯で先代が頻繁に通っていたのが鳥貴族FC店である深井店でした。2回目か3回目に利用した際、こちらから言わなくても領収書を出してくれました。そんな店舗の対応に感動して鳥貴族に決めたそうです。当時は鳥貴族が大々的に加盟募集をしていたので、比較的スムーズに加盟できました。
そして、鳥貴族を始めるときに別会社となる南大阪フードサービスを設立しました。南大阪フードサービスでは鳥貴族をはじめとした飲食店運営を担い、アミューズでは引き続き新聞販売事業をしていました。
─鳥貴族がFC募集を開始したのは1997年です。御社は初期段階の加盟店になると思うのですが、当時の業績はいかがでしたか。
野村 当時の売上は全くでして、3店舗運営だった2005年頃は、夕方5時から朝5時まで営業して売上が2万円ほどでした。しかし、本部が心斎橋に出店してからは爆発的に伸びて、当社の売上も徐々に上がっていきました。
─鳥貴族が軌道に乗り、御社も続々と出店されています。
野村 2007年にアミューズからジェイエフエフシステムズに社名変更しました。出店攻勢を掛けたのも、そのタイミングです。当時はエリア制限がなかったため、良い物件があれば出店していました。2005年時点では4店舗運営でしたが、2006年に3店舗、2007年に2店舗を出店し、2009年に店舗目となる福島店を出店しました。しかし、そのタイミングで本部に出店を止められたんです。
─それはなぜですか。
野村 社員が数名しかおらず、人がいない状況で一気に出店したため、中身が追い付いていなかったんです。南大阪フードサービスは内部崩壊寸前の無茶苦茶な状況で、本部から「中身を整えて」と言われるくらいでした。それから当時のトップを入れ替えたりしつつも、2012年に南大阪フードサービスをジェイエフエフシステムズが吸収合併し、当社で経営と運営の両方を担う形になりました。
─急激な出店でQSCが疎かになり、売上ダウンするパターンはよく聞きます。
野村 いえ、店舗格差はありますが売上は良かったです。鳥貴族のネームブランドは想像以上で、この看板を出して電気を付ければお客さんに来ていただける状況でした。そのため、経営陣も麻痺していたのかもしれません。2012年以降は社内体制や教育体制を整え、再び出店を進めてきました。

鳥貴族で飲食事業に参入
鳥貴族に加盟して以降、出店拡大を続けてきた同社。気づけば、売上の大半が鳥貴族となっていた。幸いにも鳥貴族は好調で業績は右肩上がりだったが、事業拡大とリスクヘッジのため2008年に多ブランド化に踏み切った。過去に挑戦したFCは8ブランドに上り、トライ&エラーを繰り返しながら、現在は5ブランドによる運営を実現している。
賃料を意識した出店 コロナ後は早期回復
─近年の業績の推移をお伺いします。
野村 当社は8月決算となっており、前期の売上高は36億7141万5000円で、今期は40億円で着地する見込みです。業績の推移で言うと、当社はアルコール業態が多いこともあり、コロナ禍はほぼ営業できませんでした。ただ、戻りは早かったです。それには鳥貴族の力もありますが、出店場所も関係しています。
私たちが出店の際に意識しているのは、どうにもならない数字です。たとえば、賃料の高い物件には安易に入らないなどの数字管理を徹底しています。そのためローカルエリアの店舗が多く、コロナ禍で敬遠された繁華街エリアよりもお客さんの戻りが早かったです。こうした出店戦略がコロナを乗り越えられた一つの要因かなと思います。
─アフターコロナを見据えて準備されてきた。
野村 経営者の皆さんそうだと思いますが、やはり参った時期ですのでなおのこと準備はしてきました。また、鳥貴族には命を救われた部分もあり、より一層このブランドを展開していきたいという気持ちは強くなりましたね。
─鳥貴族は毎年の値上げにも関わらず、客足も伸びていると聞きます。
野村 そうですね。ただ、1回目の値上げは結構響きました。低価格業態の値上げは、他業態に比べてお客さんがシビアになる傾向があります。そのため、値上げ後の1カ月は客足が遠のいた印象です。しかし、2カ月後には戻ってきました。今は、世間全体が値上げ傾向にあるので、そんなに影響はないと思います。
複数の飲食FCに挑戦 新たな事業柱を模索
─現在は鳥貴族に加え、「屋台居酒屋大阪満マル」や「中華そば埜邑」など複数のFCブランドを運営されています。
野村 現在はFC5ブランドに加え、オリジナル1業態を運営していますが、それ以前にも色々なFCに挑戦してきました。過去には、うどんや海鮮居酒屋、カレーや鉄板焼きなどにも加盟しましたが全部ダメで、中には3カ月で閉めた店もあります。
─上手くいかなかったにも関わらず、なぜ多ブランド化への挑戦を続けて来たのでしょうか。
野村 別ブランドにチャレンジしたのは、鳥貴族とは別の新たな事業柱が必要だと思ったからです。コロナを迎えるまで鳥貴族はずっと右肩上がりでしたし、当社の財源のほとんどが鳥貴族でした。しかし、このままでいいんだろうかという懸念もあり、業績が良い間に新たな事業柱を作ることにしました。中長期的な計画として、鳥貴族という絶対的な柱とそれ以外のブランドで、1対1の売上にするべくブランド選定を進めていました。
─御社のブランド選定の基準は。
野村 現在加盟しているブランドの8割方は先代が決めているのですが、このブランドをやりたいというよりは、ご縁をいただいたブランドに加盟したようなイメージですね。「ホルモン人」に至ってはFC募集をしていないブランドでしたが、同店の社長と先代が昔からの関係で、同店を発展させたいという意味合いもあって加盟したのだと思います。
─野村社長が選定したブランドはありますか。
野村 オカゲサマ製麺食堂系列のラーメン業態で、「下品なぐらいダシがうまいラーメン屋」という屋号で2018年に出店しました。その当時、私たちの課題は開発能力でした。何がダメなのか考えていたときに見つけたのが同系列のラーメン店で、接客が素晴らしかったことを憶えています。そこはFC募集をされていなかったので、飛び込み営業に行って加盟交渉しました。
─開発能力で悩まれていたとのことですが、オリジナル業態の「鯛めしやはなび」は2013年に出店されて以降、現在も営業継続されています。
野村 そうですね。当初は「和旬彩炭火焼波凪陽」という形で打ち出していましたが、本当に鳴かず飛ばずで。その時の飲食業界は、さまざまなジャンルの料理を出す何でも屋よりも専門店の方が強くなっていた傾向がありました。そのため、我々も鯛めし屋に振り切ることにし、屋号も「鯛めしやはなび」に変更しました。以降は売上も回復傾向になり、ついには2店舗目、3店舗目の出店を実現しました。

2008年から多ブランド化に挑戦
居酒屋業態を多く手掛ける同社の課題は人材採用だ。飲食事業に参入して年経つが、採用が順調だった時期はないという。この課題を解決するため、新卒の野球経験者を引き込む、硬式野球部を創部した。現在は硬式野球部などを通して、年間50人の社員を採用している。また、2022年にHD化を実現している。今後は従業員の中から幹部を輩出し、将来の100億円企業を目指す。
| 評価項目 | 評価方法 | |
| 業績評価 |
・売上高目標達成率 |
目標と実績に対する9段階評価 |
| テーマ評価 | 自店舗の重点課題を設定 | 目標達成度を6段階評価 |
| 職務プロセス評価 | ・顧客対応、顧客志向 ・社会人マナー、ビジネスマナー ・チームワーク向上への取り組み ・業務作業レベルの向上 ・クレンリネス、整理整頓 ・時間管理、スケジュール管理 ・全社的意識 ・成果、業績志向 ・専門知識、技能 ・自発性、主体性 |
等級基準を参照のうえ、期待レベルを満たしたかで評価する 4:模範となるレベル |
| 特別加点・減点 | 特筆すべき事象、取り組み | 上記以外で特別な貢献や重大なミス・損失があった場合に加減点する |
成果主義から一変 評価でプロセスも重視
─野村社長は2022年、社長に就任されましたが、いつから御社に参画されているのですか。
野村 私は2005年に当時、鳥貴族の運営を担っていた南大阪フードサービスに入社しました。その後、ジェイエフエフシステムズができた2007年に、引き抜かれるような形で同社に入社しました。そのときは新たな事業柱を作る段階だったので、私は「はなの舞」や「のらや」の立ち上げに携わることになりました。その後、何度か社長就任の打診をされました。ずっと断り続けていましたが、最後に「あかんかったら売ればええから」と言われ、引き受けることにしました。
─なぜ、断り続けていたのですか。
野村 やりたくなかったんです。そういうのは苦手で。笑い話として処理してもらいたいんですけど、自分が正式に入社した日、役員になった日を知らないんですよ。渡された名刺に役職名が書いてあって、初めて自分の役職を知る。ボーナスがもらえるはずの日に「役員だからないよ」と言われて自分が役員だったことを知る。本当にそんな感じでした。
─実際に社長になってみて如何ですか。
野村 特に変わらないですね。唯一あるとすれば、従業員に対する考え方が親目線みたくなったことです。昔は完全成果主義でしたし、どこか厳しすぎたところもあったと思うのですが、今はバランスというか全体面を考えるようになりました。仕事ができる・できないだけで考えるのではなく、能力がなかなか向上しない子がいても「この子らがおるから会社が回るんや」と思うようになりました。
─従業員を見る立場になりましたが、評価基準などはありますか。
野村 年に2回、人事評価表に基づいた評価をしています。業績評価、テーマ評価、職務プロセス評価の3つの大枠があり、業績評価はFLコストや営業利益の目標と実績に対する評価をします。テーマ評価は、所属部門や店舗の重点課題に対する達成率を見ます。職務プロセス評価は、顧客対応や社会人マナー、チームワークなど各項目を点数で評価します。最後に、3つの大枠に該当しない内容で評価できるもの、あるいは反省すべき内容として、特別加点と特別減点があります。これに基づいて、一次評価者と二次評価者が点数を付けて、総合得点を算出します。200点満点のうち、130点以上で自動的昇格申請としています。
─しっかりとした評価基準ですね。
野村 以前は自己評価表や実績に基づくフィードバックのみでしたが、プロセスを見てほしいという声が年々増えてきたため、試行錯誤しながら現在の形にしてきました。また、それぞれの役職によって定性と定量の比重は異なります。一般社員に近いほど定性評価の比重が高くなり、管理職になると定量評価になります。

「屋台居酒屋大阪満マル」は2店舗運営
硬式野球部を創部 採用活動にも貢献
─採用は順調ですか 。
野村 飲食事業はもう23年になりますけど、順調だった頃はないです。ただ、策は打っていて2017年にスポーツ振興に加え、採用の一環として硬式野球部を創部しました。もともとは、社内の福利厚生を充実させるためにレクリエーションみたいな形で軟式野球部を運営していたのですが、居酒屋は深夜まで働くじゃないですか。そうすると、朝の練習には誰も来ないんですよ。そこで野球部は従業員が喜ぶものでもないんだと気づきました。
しかし、当社は私を含めて野球経験者が多く、昔は採用活動で野球経験者の母校に訪問していた時期もありました。当時の野球男児は野球一筋でやってきているので、将来設計を持っている子はそれほど多くいませんでした。引退して野球がなくなっていったんカラになるような状態だったので、そういう子を採りに行ったりしました。
そういった経緯もあり、2017年以降は社会人クラブ野球チームとして硬式野球部を運営しており、その狙いの1つが採用や人材育成となっています。
─野球部員の待遇は。
野村 働きながら真剣に野球ができる環境を整えています。部員は正社員として採用しており、シフトを調整して週に一度は全体練習や部活動、地域移行のボランティア活動ができる時間を確保しています。
また、一般的なクラブチームは自分たちでお金を出し合って、ユニフォームを買って、各々が働いている会社で休みを合わせて練習日を決め、グラウンドを抑えて活動します。対して、私たちはグラウンドフィーやユニフォーム代などの諸々を会社で支援しています。現在、野球部から採用した社員は累計で20人に上ります。

オリジナル業態の「鯛めしやはなび」
幹部輩出のためのHD化 将来の100億円企業を目指す
─今後の目標を教えてください。
野村 中期目標で言うと、今は3カ年計画で売上高50億円を目指しているところです。そして、将来的には100億円を目指します。
また、多くの幹部を輩出できるよう2022年にホールディングス化をしました。表現が悪いかもしれませんが、業界的に何となく就職される方が多い中で、従業員に来てよかったなと思ってもらうために、色々なことにチャレンジしたいです。当社で頑張れば社長になれるという形を作っていくのも目標です。
─100億円企業を実現するための戦略は。
野村 まずは、撤退した海外展開の再チャレンジです。以前は、海外事業を担うジェイエフエフタイランドという法人でオリジナルの飲食業態を2店舗展開していたのですが、全然流行らず閉店してしまいました。しかし、これからは新たにチャレンジをしてグローバルに展開できればと思います。
もちろん、日本の既存店も拡大していくつもりです。私自身が鳥貴族に育てていただいたと思っているので、大倉社長が掲げる飲食業界の地位向上を実現できるように、鳥貴族とともに頑張っていきたいです。

採用の一環で硬式野球部を創部

会社概要
代表者 代表取締役会長 野村 武
代表取締役社長 野村 裕一
本社所在地 大阪府堺市
設 立 1996年10月
売上高 36億7141万5000円
従業員 正社員111名、パート・アルバイト902名
運営ブランド
「鳥貴族」43、「屋台居酒屋大阪満マル」2、「ホルモン人」2、「中華そば埜邑」1、「オカゲサマ製麺食堂」 1、「すしやコトブキ」1
ジェイエフエフシステムズ
(大阪府堺市)
野村 裕一社長(39)
Profile◉のむら・ゆういち
1985年12月生まれ、大阪府出身。2005年にグループ会社の南大阪フードサービスに入社し、2007年にジェイエフエフシステムズに参画。常務取締役を経て、2022年に代表取締役社長に就任。現在に至る。
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