
【アイル・パートナーズ】四国エリアでセブン-イレブンを111店舗展開
公開日:2025.07.20
最終更新日:2025.07.20
※以下はビジネスチャンス2025年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
コンビニ事業通じ地域のインフラ企業へ進化
アイル・パートナーズは、香川県高松市を拠点に四国でセブン-イレブンを111店舗展開するメガフランチャイジーだ。同社は2013年にセブン-イレブン・ジャパンと「加盟店基本契約」を結び、以来、四国のエリア本部のような役割を担ってきた。セブン-イレブンのパートナ ーとして、自社出店とパートナー経営者による出店の両輪で店舗網を拡大している。同社の沿革から特徴、今後の展望について加藤美有紀社長に話を聞いた。
日産自動車のディーラーからコンビニ事業に参入
同社は現在、「セブン-イレブン」を香川・徳島県下でそれぞれ店舗、愛媛県下で店舗展開している。組織の源流は、四国エリアで車の販売を行うカーディーラーであり、そこから派生したコンビニエンスストア「サンクス」のエリア本部として前身会社が設立されている。その後時を経て、セブン-イレブンへと業態転換。常に時流に即した変化を続け、成長を遂げてきた。
祖業と新規事業
パートナー経営者59名と共同経営
現在同社は、セブン-イレブン・ジャパンと「加盟店基本契約」を締結しており、この契約のもとセブン-イレブンの店舗経営者を募集している。同社と共同で店舗を経営する経営者との間では、「店舗経営契約」を結んでおり、現在契約を結ぶパートナー経営者は59名に上る。同形態で運営する加盟店は98店舗あり、同社の直営店が13店舗、合わせて111店舗を展開中だ。
それぞれの役割分担として、本部では経営相談や発注指導、商品開発や会計システムの提供などを行う。そして同社の役割は、店舗運営のフォローやキャンペーン等の実施、バックアップ支援や直営店からの事例発信だ。

祖父が立ち上げた香川日産自動車
サンクスのエリア本部として発足
今ではセブン-イレブンのメガフランチャイジーとして活動する同社だが、大元を辿ると約80年前まで遡る。同社の起源は、加藤社長の祖父である真鍋康男氏が1946年に立ち上げた香川日産自動車だ。同氏は1907年に香川県で生まれ、創業時の日産自動車に入社し、生産管理や経理部門で勤務。最終的には経理部長・製造部長を歴任した。
その後、車の販路拡大を目指す日産自動車から四国への拡販を打診され、故郷に戻り、香川日産自動車の立ち上げに至った。以来、香川日産自動車は正規ディーラーとして、新車や中古車の販売、整備、保険やローンの取り扱い事業などを展開。1979年には、加藤社長の父である真鍋康彦氏へ代替わりをした。そしてその康彦氏が新規事業として選んだのが、コンビニ事業だった。
「父は日産自動車つながりの会社との親交が深く、その中でサンクスのエリア本部であった北海道の釧路日産の小船井修一社長(当時)のお話を聞き、興味を持ちました。当時、香川にはまだサンクスが進出していなかったため、チャンスと感じたそうです。父は最初からエリア本部という立場での加盟を希望しました。日産自動車の正規ディーラーとして会社運営をしてきた中で、エリアを持つことの善し悪しを全て理解した上での判断でした」
康彦氏は、サンクス運営本部であるサンクスアンドアソシエイツと交渉。そして1993年に、四国の東側である香川・徳島エリアへの出店を託されるエリア本部となる。同社の前身となるサンクスアンドアソシエイツ東四国が設立されたのは、その翌年の1994年である。

モータリゼーションを背景に事業を拡大
サンクス事業の急拡大
6年で100店舗展開を達成
サンクス事業は、香川日産自動車の営業担当だった2名と新たに入った1名、そして他の役員3名でスタートした。香川日産自動車のつながりから、酒屋や米屋、タバコ屋などに積極的に声を掛けて加盟を募り、事業開始から約6年で100店舗展開を達成した。当時は今ほどコンビニの数が多くなく、また香川においては地域色の強いコンビニブランドがなかったこともあり、出店すればよく売れる状況であった。
「一般的にコンビニを開業する場合、土地や建物をFC本部ないし当社のような会社が用意して、参画するケースが多いと思います。実際、当時は当社が資金を用意することもありましたが、他方でその資金を自身で用意して開業しようという、意欲的なパートナー経営者も多かったそうです。そうしたやる気のあるパートナーを探し出せたことが、当時の急成長の大きな要因だと思います。また当時は、地域色のあるお弁当など独自の商品開発を手掛け、販売もしていました。地域の飲食店や大学、食品会社などとコラボして地産地消の弁当を作っていたのですが、それら商品のウケがとても良く、集客につながっていたと聞いています」
また、同社独自の出店戦略も奏功した。同社の現会長である真鍋洋子氏が掲げた「山の中畑の中」というスローガンのもと、通常なら出店しないような離島の過疎地域に可能性を見出し出店。徳島の山の中である大歩危小歩危や離島の直島や小豆島など、まだコンビニのないエリアに積極的に出店していった。またその際は、その地域の中からオーナーになってもらう人物を探し、地域密着で地元の人に喜んでもらう店づくりに注力した。
結果、同社が出店したサンクスは最終的に123店舗まで増加し、そのうち約90店舗が加盟店で構成されるまでとなった。

サンクス1号店の「屋島西町店」。右から2番目が真鍋康彦社長(当時)

地産地消の独自開発弁当「とゝ喝御膳」は人気商品に

わずか6年で100店舗出店を達成
2代目に継承している店舗はすでに店舗
1993年にサンクスのエリア本部となり店舗数を拡大してきた同社だが、20年の契約満了を機に、「セブン-イレブン」への業態転換を決断した。また、このタイミングで社名を現在のアイル・パートナーズへ変更し、リスタート。同社の狙い通り、セブン-イレブンのブランド力や商品力が大いに発揮され、コンビニ事業は盤石なものとなった。
セブン-イレブン事業への転換
業態転換で87店舗からスタート
独自開発の弁当販売など、さまざまな取り組みを仕掛けた同社だが、次第にその将来に暗雲が立ち込める。四国でもコンビニが増加し、当時業界4番手であったサンクスは売上が低下。当時同社の社長であった加藤社長の弟の真鍋康正氏は、サンクスの出店拡大に限界を感じたという。
そこで2013年に、20年の契約満了と同時にセブン-イレブン・ジャパンとの契約に踏み切った。しかし加盟オーナーの中には、「そのままサンクスを続けたい」と希望する人もいた。そこでそのような店舗はそのままサンクスとして残ってもらう形を取り、結果、同社は87店舗をセブン-イレブンの看板に変えてリスタートした。
セブン-イレブンに看板を変えた反響は大きく、県内外からたくさんの客が訪れた。当時はちょうどセルフ式のドリップコーヒー「セブンカフェ」の販売が開始され、大きなヒットを呼んでいた時期でもあった。その反響もあり、集客につながったという。

11年間の在籍後、昨年7月に独立を果たした半田オーナー夫妻
3者で店舗を作り上げる体制
加藤社長が同社に入社したのは、子育てや教育関係の仕事を経たのちの2022年だ。取締役として参画し、2年後の2024年に社長に就任する。
「FCに取り組むようになって感じる事業の魅力は、1人ではないということです。常に本部が後押しをしてくれますし、質問をすれば何でも答えてもらえます。またパートナー経営者の方々から、逆に指導をしていただくこともあるんです。それで1人じゃないという感覚を持つことができ、3者で店舗を作り上げている実感があります。また売れるコンビニを作ることが私たちの使命ですが、それ以上に、パートナー経営者が一生涯をかけて継続できる事業にすることも1つの目標です。私は4代目の社長に当たりますが、パートナー店にも4代目まで継続できるようにしようと伝えています。パートナー経営者の中ですでに2代目までバトンタッチできた店舗は店舗。それが私の自慢なんです」
経営者輩出と地域活動
7店舗運営のオーナーは元社員
同社が独自に取り組む活動の1つに、社員独立制度がある。社員がパートナー経営者となって独立するものだが、これまでに独立した社員は6人おり、近々7人目が独立する予定だ。このように、同社では将来の店舗経営者候補を積極的に発掘し、そのために直営店を効率的に活用している。具体的には、直営店を社員独立のトレーニング店として機能させるといったものだ。また社員だけではなく、パートナー経営者の後継者を預かって、同社の運営方法を学んでもらうという用途もある。
「社員から独立する人を今後も増やしていきたいと考えています。当社の考えをよく理解してくれているため意思が伝わりやすいですし、改善の提案をしてくれるので助かっています。パートナー経営者の中で1番店舗数が多い方は、7店舗です。その方は当社から独立した社員なんです。社員でいた時よりもかなり収入が上がったそうで、独立して正解だと言っています(笑)。とても営業力のある方で、近所の企業にコーヒーを届けたり、お弁当を届けたり、チャンスを逃さず営業をしています。そんなオーナーの姿を見て、みんな『夢がある』と言っています」
地域創成を掲げ芸術祭に出展
もう1つの同社独自の取り組みとして、瀬戸内国際芸術祭への出展がある。同芸術祭は2010年から3年に1度開催されており、同社は初開催から物販店を出展。公式グッズの製造や販売を手掛け、地域住人に喜んでもらうとともに、社員の創造性を高めているという。
「フランチャイジーは、本部から送られてきた商品をいかに売るかを日々考えているため、どうしても創造性が乏しくなってしまいがちです。それに比べ、製造業の人たちは自社の商品に強い愛情を持ち、それゆえに売り込むことに長けていますよね。ですから社員にも、もっと自分たちのお店という感覚を持ってほしいと考え、同芸術祭では公式グッズの製造と公式ショップの運営をしています。社員がどういう商品を作るのかアイデアを出し、プレゼンをして、製作まで手掛けます。製造業の方たちのように、自社商品への愛を育む経験をしてもらっているのです」
同社は今後、さらなる地域経済の活性化や消費生活の質の向上を目指し、コンビニ事業を通じた地域のインフラとなることを意識しているという。
「地域住人の方々の中には、唯一のライフラインと言ってくださる方もいます。日常だけでなく災害時などの緊急時でも、全国の物流網を活かし、支援物資の調達と供給を実現したいと考えています。コンビニ事業を通じて地域のインフラとなり、安心感を与えられる存在を目指していきたいですね」

従業員のモチベーションアップにもつながっている
会社概要
アイル・パートナーズ
代 表者 代表取締役会長 真鍋洋子
代表取締役社長 加藤美有紀
所在地 香川県高松市
設 立 1994年(2013年に現社名へ変更)
従業員数 44名
売 上高 31億7000万円(2025年2月期)
事業内容 コンビニエンスストアの運営・開発
加藤美有紀社長(52)
Profile◉かとう・みゆき
1973年3月16日香川生まれ。川村学園女子大学教育学部卒業。その後、安田火災株式会社(現:損保ジャパン)に入社。 1995年に結婚し、主婦の傍ら2011年より10年間、KTCおおぞら学院にて非常勤講師を務める。教職の後、2022年に家業であるアイル・パートナーズ株式会社に取締役として参画。2024年に代表取締役社長に就任。現在に至る。
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