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【ハードオフコーポレーション】「社会のためになるか」「お客さまのためになるか」前編

公開日:2025.07.13

最終更新日:2025.07.13

※以下はビジネスチャンス2025年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

理念経営への目覚めが事業成功の全ての原点に

 ハードオフコーポレーションの山本善政会長は、総合リユースの全国チェーン「ハードオフ」のビジネスモデルをゼロから生み出し、総合リユース企業として初の株式上場を実現した経営者だ。また、日本フランチャイズチェーン協会の副会長、会長も歴任し、その間、日本で初の大学FC専門講座の開講を実現するなどフランチャイズ産業の発展にも大きな足跡を残している。今年4月に喜寿を迎えてなお、今も国内・海外を飛び回る山本会長に、1.「リユース企業として」2.「FC企業として」3.「上場企業として」のハードオフ経営のこれまでの経験と考えを聞くと共に、同社の50余年に及ぶ成長の軌跡を追った。

新品小売への反省から生まれたリユースのビジネスモデル「はじめに正しい売価」「次に正しい買取価格」

1.リユース企業としてのハードオフ

 同社の2024年度業績は、売上高が335億円、営業利益は32億円で大幅な増収増益となった。また昨年11月には全国1000店舗目の出店も果たし、目下、絶好調だ。ハードオフは今から32年前に1号店をオープンして以来、リユース事業専業。だが、その前身は新品のオーディオ専門店「サウンド北越」で開店は1972年。創業から53年の間には大きな苦難にも直面し、それを乗り越える中で今のビジネスモデルを生み出してきた。

倒産の危機をリユース事業転換で乗り切る

 左ページ上のグラフは、同社のこれまでの53年間の業績推移を示したものだが、新品オーディオ販売の時代の前半約25年と、リユース業態に転換してからの後半の同25年では、劇的に変わっている事が一目瞭然だ。
 だが山本会長は、ハードオフのリユースビジネス成功は、実はこの「サウンド北越」を経営していた20年間における失敗や経験が原点になっていると語る。
 山本会長が24歳で創業したサウンド北越は、その後着実に店舗を増やし、20年間で県内10店舗、年商約8億円と県内トップの専門店に成長していた(注1)。ところがバブル景気の崩壊とオーディオブームの終焉が同時に来た1992年に突然、売上が半減する事態に見舞われた。それを見た取引銀行や仕入れ先のメーカーも一斉に手を引き始め、資金繰りは逼迫。一気に倒産の危機に直面した。
 現金支払いだけでは足りないので手形を切った。支払いが遅れたら一発アウトだ。そのため毎週末には現金をかき集めて銀行へ。クレジットも使いまくった。それでも足りず、しまいには、その日の現金欲しさに店で10万円で仕入れた商品を9万円で売ったりもした。最悪状態だった。
 その時、山本会長は45歳。気力、体力も充実していた頃だ。まして拓殖大学時代はアーチェリー部主将を務めたというバリバリの体育会系。そんな男が資金繰りのストレスでボロボロになった。日々吐き気が止まらず、体重がみるみる減ってやせ細ってしまった。
「真面目にやっているのになんでこんなに苦しまなければならないんだろう」
 どん底の状態でフラフラになりながら、ある時ふと自らの愚かさに気付いたという。
「そもそも理念が間違っていた。『より豊かなオーディオライフを追求する』なんてカッコ良さだけ追求して、実際には『アンプ1個売って20万円だぞ。ウチは普通の電気屋とは違うんだ』とか言って、安っぽくて次元が低かった。こっちの都合で買ってもらいたいだけだった」(山本会長)
 改めて自問したという。本当に世の中に必要とされているのなら、売上が落ちるはずがない。では、なぜ必要とされないのか。その時、頭に浮かんだのが「カッコ悪いしな」とためらいながらも気になっていた中古販売のビジネスだった。
「真っ白な気持ちで考えた時、やはり世の中のために、困っていることを解決すべきだと気付いたんです。これはもうリユースで一から出直そうと」(山本会長)
 腹が決まればあとはやるのみ。2年間で「サウンド北越」全店をリユース業態の「ハードオフ」に転換。95年にはハードオフコーポレーションに社名も変えて、第2創業を果たした。
 以後、粗利率が大幅に向上して、債務超過も解消。最悪の倒産危機をなんとか乗り越えた。

ガレージセールがヒントになった売価設定理論

 同社には、山本会長が新品オーディオ販売からリユース業態に事業転換する過程で作り上げた「経営理念」「経営方針」があるが、それに加えて業務を行う上での考え方をまとめた「ハードオフ理論30ヶ条」というものもある。その最初の2ヶ条がこれだ。
①はじめに正しい売価ありき
②次に正しい買い取り価格ありき
 この理論、そしてハードオフ事業そのもののヒントになったのは、オーディオ専門店時代のガレージセールだったという。
「高級オーディオを買ってもらうため、前のオーディオを下取りしますよね。それを倉庫に貯めておいて年に1回ガレージセールをする。するとそれがよく売れるんです。その時に思ったのが、これはお客さんが欲しい価格に近づくんだなと。100万円じゃ買えないけど50万円だったら買える。新品か中古かはあまり関係なくて、欲しい商品が欲しい価格、買いたい価格に近づけるのが中古なんだと。そんなことで1年中、中古の店にしたらどうなんだろうと考えたんですよ」(山本会長)
 当時はまだ新品オーディオが良く売れていた時代で、リユース業態への転換は先のことだったが、理論の原点はここから始まっている。ハードオフでは、顧客がその商品をいくらで買いたいかをまず査定して売価を決める。その上で適正な利益分を差し引いて買い取り価格を提示する。これはまさに新品小売とは真逆の考え方だった。
「それまでやっていた新品のオーディオや電気販売の場合、メーカーさんが10万円で卸すからそこに10%、15%乗っけるとかで売る。つまりお客さんが欲しい価格とは関係なく値段を決めていた」(山本会長)
 こちらは完全に“売る側の理論”であり、顧客の立場に立った考えではない。山本会長はハードオフでは①②の理論でそれを逆転させたのだ。新品小売時代の商売のやり方に対する反省から生まれたのが、リユースのビジネスモデルだった。

▶リユース転換第1号(1993年)の「新潟紫竹山店」

正しいことをやれば売上は後からついてくる

 ①②に続く3ヶ条は以下の通りだ。
③ハードオフは見切り屋さん
④ハードオフの基本は180度逆理論
⑤ハードオフの方程式 100→100→100 1000→1000→1000
 店が提示した価格に納得しない買い取り客に対しては買い取りを断ることもある。これが「見切り屋さん」ということだ。あくまで購入客にとっての販売適正価格をベースに買い取り価格を決める。そして「180度逆理論」とは売上で悩むより買い取りで頑張ろうという意味だ。
「我々は買い取り成立は90%〜でいいと思っています。そして、お客さんが欲しい価格で売値を決めているから、100個仕入れたら100個売れる。1000個仕入れたら1000個売れるわけですよ」(山本会長)
 反対に、新品オーディオ販売の時代は、どんなに良い時でも常に1割以上は売れ残りがあり、結局それはディスカウントになって赤字を生んでしまったという。
「当時はウチもそうでしたが、朝から晩まで売上のことしかありませんでした。売上とお金には悪魔が潜んでいるんですよ。だから世の中、間違いばかり起こす。リユースに切り替えてからは売上はあまり考えなくてもいいと言っています。正しいことをやっていれば売上は後からついてくるからです」(山本会長)
 この後にも⑥5:4:1の理論、⑨ハードオフはメーカーである、など独特な表現の言葉が続く。
「1日の考え方や行動では、買い取りで50%、40%は心を込めてきれいにしなさい、だから売上は10%でいいよと。売上は黙っていてもついてくるものです。そして、ハードオフは仕入れ・製造・直売業のメーカーなんですよ。仕入れたものはあくまで半製品。我々がリペア、クリーニングして製品にする」(山本会長)

〝金のなる木〟ジャンクコーナー誕生秘話

 もう一つ、「ジャンクコーナー」の誕生でも、サウンド北越時代の経験が活きた。
 ハードオフに店を切り替えるため、サウンド北越では「在庫一掃閉店セール」を行った。だが、当時の同社はとにかくキャッシュがなかった。店を転換する資金も必要だった。だから、閉店セールでも、売れるもの、現金に変えられるものは、商品以外のものでも何でも値段をつけて売ったのだ。
「メーカーから貰った販促ポスター、マーク付きコップ、等身大の人形、エプロン…。とにかくあるものは全部お金にしたい一心でした。ところがこれがよく売れたんですよ(笑)」(山本会長)
 来店客からしてみたら、ほかでは絶対に売っていない“掘り出し一品モノ”だったのかもしれない。実はその考え方は、ジャンクコーナーそのものでもあった。山本会長はこの経験を通じて、いよいよリユースビジネスの可能性を確信したという。「究極のエコロジーはジャンクだなと考えたのです。それでやっぱりエコロジーとエコノミーの共生で、完全にリユースでいこうという決心が改めてつきました」
 現在も、ハードオフにおいて、ジャンクコーナーは集客の鍵を握る売場だ。ファンの間では「ハドフ巡り」といって、1日に店を何軒も廻ってジャンクコーナーを渡り歩く人も多い。しかもジャンクコーナーは販売価格も安いが、当然、仕入れ値も低いので利益率は高い。ハードオフ業態におけるこのコーナーは、売上の17%を占める“金のなる木”とも言える儲かる売場なのだ。そのアイデアもまた、サウンド北越から生まれているのだった。
「サウンド北越がなければ絶対にハードオフは生まれませんでした」(山本会長)

【ハードオフコーポレーション】「社会のためになるか」「お客さまのためになるか」後編

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