【業務スーパー】1500店舗まで拡大戦略継続(前編)

公開日:2023.07.27

最終更新日:2023.09.27

※以下はビジネスチャンス2023年8月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

1500店舗まで拡大戦略継続

 東証プライム上場企業の神戸物産(兵庫県加古川市)は、この年間で売上が倍増し、急激な円安や物価高騰のあおりを受けながらも業績は依然好調を維持する。主力の食品販売店「業務スーパー」は全国1018店舗(2023年3月時点)と、ひとつの節目である1000店舗を突破。同社の沼田博和社長によれば、1500店舗までは拡大戦略を進めていきたいという。

業務スーパー (神戸物産:兵庫県加古川市) 沼田 博和 社長(42)

PROFILE ぬまた・ひろかず
1980年11月生まれ、兵庫県出身。2005年京都薬科大学薬学部・大学院卒業。大正製薬に入社。2009年神戸物産入社。10年STB生産部門部門長。11年取締役就任。12年代表取締役社長就任(現任)。18年外食事業推進本部担当役員(現任)。

 

 

 

 

首都圏の出店余地まだあり 既存店改装・移転も推進

――「業務スーパー」は昨年、節目の1000店舗を突破しました。現在は、1500店舗を目標にしています。具体的な出店戦略を教えてください。
沼田 将来的に強化しないといけないのは、やはり首都圏、特に都内だと思います。山手線の内側は未だにほとんどない。家賃的に合わないのと、駐車場の確保が難しい場所も多いからです。駅前立地の店舗は何店かありますが、客数が多いにもかかわらず、どうしても客単価が上がらないので、蓋を開けてみるとあまり郊外店と売上が変わらないようなケースもあります。
――売り場面積も確保できない。
沼田 例えば、緊急事態宣言が出た時は、巣ごもり需要で郊外店が非常に伸びました。一方で都市部、駅前立地の店舗になると客数が増えても店の広さに限界がありますし、バックヤードも含めて狭い。商品はどんどん動くのですが、バックヤードに置ける量が限られているので、店舗売上の天井が一定数決まってしまいます。
――そう考えると「業務スーパー」は郊外の方が店舗モデルとしてはあっている。
沼田 ただ、1500店舗を目指す中では、家賃が高いエリアもしっかりと開拓できるようなモデルも作る必要があるので、ここは検証を続けています。
――一方で、1500店舗ともなると、出店できるエリアはどんどんなくなってくるのでは。
沼田 おそらく1500店舗くらいまでが上限だと思います。それ以上ですと既存店とのカニバリが進むことが考えられます。そのため、同時に進めていかなくてはならないのが、古い店舗の移転や改装です。
――1号店のオープンは23年前です。
沼田 20年以上経っている店舗もかなりありますし、10年以上となると過半数がそういった状況にあります。老朽化した店舗を今のフォーマットに直した上で移転する。計画的に進めていくことで、各地域のシェアを高める大きなエンジンにしたい。それによって、1店舗当たりの売上はもっと底上げできます。
――新規出店はもちろん、店舗自体を大きくしていくのですね。
沼田 店舗は当初、生鮮食品を置かないというコンセプトでスタートしたため、売り場はそれほど大きくなくていい、という考えでした。駐車スペースも小さい。こうした店舗に対して、今の基準でいくと生鮮食品を置きたい、そこに自社開発の「馳走菜(ちそうな)」という惣菜も入れたい、となってくる。
――そうなるとやはり150坪前後ぐらいの売り場面積が必要になってくる。
沼田 業界水準からいえば遥かに小さいのですが、売り場拡大や駐車スペースが広い方が客単価も上がりやすいです。総合的に勘案すると、移転先はその条件を満たすところが理想的ですし、実際条件が整った中で移転した店舗が売り上げを非常に大きく伸ばしています。
――FC加盟店は、設備投資も必要になるでしょう。
沼田 古い店舗の場合、冷蔵ケース・冷凍ケースは、今の省エネ機器に対応したものを積極的に導入いただきたいと思ってます。
――最新機器を導入することで、長期的に見れば光熱費の圧縮にも繋がる。
沼田 そういった部分の投資回収データも当社が持っています。積極的に投資した方が、長期的にみると圧倒的に優位ですよ、ということです。

「業務スーパー」と「馳走菜」の併設店舗

同業種からの加盟も増加 既存店舗のブランド替えも

――「業務スーパー」の場合、FC店は直轄エリアと、一部のエリアオーナーに独占権がある地方エリアの2つに分かれています。今後店舗を増やす場合、地方エリアで店舗数を増やしてもらった方がいいのか、あるいは、直轄エリアの中で新規出店してもらった方がいいのでしょうか。
沼田 地方エリアも無理のない範囲で出店いただいた方がいいかなと思っています。地方の方が先々の人口減少など、環境としては厳しくなりますので、そこを加味した中で出店計画を組んでいただく必要があると思います。
――基本的には既存オーナーに増店してもらうという考えですか。
沼田 どちらかと言うと既存オーナーが主体になると思います。もちろん、新規オーナーを募集しないわけではないのですが、新規オーナーが加盟される時には、一定数既存の小売店を運営しているなど、当社にとってもメリットがあればウェルカムです。
――同業からの加盟もあるのですか。
沼田 以前より京急電鉄のグループ会社に加盟いただいてるのですが、5年ほど前に京成電鉄のグループ会社にも加盟いただいてます。
――電鉄系は駅周りの不動産を所有して、自社ブランドのスーパーを展開しています。
沼田 いくつかの店舗を「業務スーパー」に変えて、運営しているケースもあります。
――既存店舗を「業務スーパー」にリブランドする。
沼田 「業務スーパー」に変えることで新たな顧客を獲得することができますし、当社としても駅近はなかなか家賃含め条件面で合いにくいのですが、こういったケースであれば十分に採算ベースに乗ります。当社としても出店しにくいエリアをカバーできます。
――新潟に本社を置くオーシャンシステムは単体で「業務スーパー」を展開しているエリアフランチャイジーですが、自社で「チャレンジャー」というスーパーマーケットも運営しています。その「チャレンジャー」店舗の一部にも「業務スーパー」のコーナーがあります。こういったケースも今後考えられますか。
沼田 規模感に応じて、「チャレンジャー」のようなケースは十分に考えられると思います。
――異業種が加盟することによって、相乗効果も期待できるでしょう。
沼田 ホームセンターの中に入っているケースもあります。ホームセンターはかなり大きな売り場をもっていますので、当社を利用していただいているようです。
――集客装置にはなるかもしれない。
沼田 「業務スーパー」がホームセンターの中に入ることによって、お客様が頻度よく買い物に来てくださるということで、ホームセンターの方も売上が上がるという傾向があります。
――様々な複合店として出店していくなどの可能性はある。
沼田 集客力が上がるというのは当社でも分かっていますので、うまく活用していただきたいと思います。
――今後、1店舗あたりの売上を上げていくことも重要になってきますが、ホームページで公開されている加盟店基本モデルでは月額売上が4350万円です。数値はもう少し上げていけるという考えですか。
沼田 まだまだ上げていけると思います。非食品を強化したり、最近であれば「馳走菜」という惣菜事業を売り場内に展開することによってかなり集客が上がる傾向がありますので、1店舗売上の底上げはまだ可能だと思います。

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