【FOOD&LIFE INNOVATIONS】コロナ禍でも9割以上の売り上げを維持

公開日:2023.06.16

最終更新日:2023.06.16

※以下はビジネスチャンス2023年6月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

テイクアウト需要の高まりも売上に貢献

 ファミリー利用が多い回転すしは、コロナ禍でも人気が高かった。小規模・都心型店舗の登場で市場は拡大する見込み。

好調な業種だがFC展開はマイナー

 寿司の業態はさまざまで、握り寿司や回転すし、最近では寿司居酒屋も続々と登場してきている。外食の中でもとりわけ人気の高い寿司は、外出自粛でも、他業態に比べて売上は好調に推移した。日本フードサービス協会の調査によると、寿司の売上高はコロナ前と比較して、2020年は93.7%、2021年は99.1%、2022年は99.6%とほぼ横ばい。多くの寿司屋はコロナ以前からテイクアウトを実施していたことから、巣ごもり需要も相まってテイクアウト売上が好調だった。
 回転すしをはじめ、コロナ以前より市場拡大してきた寿司業態だが、FC展開するブランドは数少ない。それは、衛生管理の厳しさとサプライチェーン構築の難しさに起因する。生魚を使用するため、保存方法や食材の併用禁止などを定める必要があることから、飲食初心者には参入ハードルが高い。また、サプライチェーンは一定の品質をクリアした魚類を大量かつ安く、全国に供給する必要がある。スタートアップ企業が構築するのは至難の業だ。
 そんな中、スシローグループのFOOD & LIFE INNOVATIONS(東京都千代田区)が展開する「鮨酒肴杉玉」は、2019年にFC展開に踏み切った。居酒屋業態をとる同店は、寿司のほかつまみも充実させる。リーズナブルな価格を実現するため、スシローで購入した寿司ネタで、端材となる部分をつまみにアレンジするなど、グループの強みを生かしている。コロナ下では、酒類提供制限による売上減少はあったものの、寿司業態が機能し、客足の大幅減少は抑えられた。
 ウクライナ侵攻に伴うロシア水産品の禁輸やガソリン価格高騰による物流費の上昇などにより、寿司業態も価格改定を余儀なくされている。これまでロードサイド中心に展開していた回転すしは、ターミナル駅に小規模店舗で出店。これにより、新たな客層を掴み始めている。今後の盛り上がりに期待できそうだ。

 

鮨酒肴 杉玉 FOOD&LIFE INNOVATIONS  (東京都千代田区)山邉 圭介社長(47)

PROFILE やまべ・けいすけ
2020年1月、株式会社FOOD & LIFE COMPANIES (旧社名 株式会社スシローグローバルホールディングス)入社。上席執行役員に就任し、経営企画を管掌。2021年4月、同じくF&LC傘下の株式会社京樽の代表取締役副社長を経て、 2022年10月より現職。

 

 

 

 

 

グループ初のFC事業はコロナ下で67店舗を増店 スシローの調達力を生かしたアレンジ商品とコスパが強み

 FOOD & LIFE INNOVATIONSは、スシローグループの中で新規業態の開発を担い、グループで唯一FC展開を行っている。2017年に寿司×居酒屋をコンセプトに「鮨酒肴 杉玉」を立ち上げ、現在全国に73店舗(直営57・FC16)を展開中だ。特に2020年のコロナ禍以降からの出店が多く、この3年間で直営50店舗、FC17店舗の増店を行ったという。

客単3000円の寿司居酒屋 女性・ファミリー層から支持

―「鮨酒肴 杉玉」の立ち上げの経緯を教えてください。
山邉 当社はグループの中で新規業態を開発することを目的に、2015年に設立された会社です。スシローが直営のみの展開のため、グループの中にFCという武器を取り入れて出店を加速させようという戦略があり、FC事業にチャレンジするというミッションを持っていました。
 グループの強みを生かした新しい寿司業態の開発を目指し、設立当初からいくつかの新業態を立ち上げ、試行錯誤を繰り返し、2017年に〝寿司×居酒屋〞というコンセプトの杉玉が出来上がったのです。グループが持つ調達力を生かし、提供する単品メニューは369円(西日本エリアでは異なる)から、また平均客単価3000円弱の金額で食べ飲みができるコスパの高い形態が、多くの人に受け入れてもらえたのです。明るい店内の店舗も多いことから、男性ビジネスマン以外にもカップルや女性が3割、ファミリー層が2割というように幅広い属性・年齢層の方にご利用いただいています。

―コロナ直前の2019年末にFC事業をスタートし、コロナ禍で大幅に店舗拡大されました。
山邉 出店店舗数でいうと、2020年末時点が直営22店・FC4店の計26店舗。2021年末が直営36店・FC9店の計45店舗。2022年末が直営57店・FC15店の計72店舗というように、順調に出店を拡げることができました。
 当社では、スシロー以外でお寿司を提供できる新しい場をつくりたいという思いがあり、こういう時期だからこそ出店ができる場所があると考え、出店を止めるということしませんでした。この大幅な増店はグループの資金力があったからできたことです。FC増店に関しては、寿司というコンテンツに魅力を感じてくれた加盟オーナーさんが多かったです。コロナ禍でも回転寿司はあまり落ちず、寿司という業態が強いと感じて、やりたいと考える方が増えているように感じます。

―コロナ禍でも売上を保つためにとられた施策は。
山邉 アルコールが出せなかった時期は、ノンアルコールの領域を強化し、ウィットに富んだネーミングを考えノンアルコールメニューの訴求をしました。またテイクアウト・デリバリーの販促にも力を入れましたね。通常時はテイクアウト・デリバリーの売上は10%程度ですが、コロナ禍で多い時にはテイクアウト・デリバリーの比率が全体で4割弱まで達した時期もありました。

―推奨している立地はありますか。
山邉 基本的に駅から2〜3分の駅近立地への出店を継続的にしています。コロナ下は繁華街を狙わず、お勤めからの帰着駅に出店するような戦略をとってきました。ここ3年間は生活路線への出店が多かったですが、ターミナル駅への出店も可能だと考えています。

―成長戦略についてはどのようにお考えですか。
山邉 我々の一番の強みは、どこまでいってもグループが持っている調達力です。この調達力を生かして多種のメニューを用意しており、料理は約100品目、ドリンクについては60品目ほどのご用意が可能です。またスシローでは寿司ネタとして提供できない部位や端材を、杉玉ならではの料理に仕立て、積極的に販売しています。アジの身を取った部分を使用した「アジの骨せんべい」や、期間限定メニューとして回転すしでは販売が難しい「マグロの尾の身」など、品質と価値に自信を持ってご提供してきました。今後は調達できる魚種やタイミングを見越して、より戦略的にメニューの構成を作り、季節限定の販促メニューの強化、また夏ごろにグランドメニューの刷新も予定しています。
 FCに関しては、扱う食材が食材なので、衛生管理の部分で経験値を積まれている方にやってもらった方が良いと考え、既存オーナーさんに増店の話を積極的にしています。ただ、その中でも新規の問い合わせが増えるのであれば、バランスを見ながら加盟していただきたいです。

コストパフォーマンスが高いブランドとして定評がある

 

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