【アバント】スイーツ業態の加盟店、逆境を迎えながら22店舗展開
公開日:2026.03.09
最終更新日:2026.03.02
※以下はビジネスチャンス2026年4月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。
2ブランド展開が人材不足・離職問題の解決に
アバントは、千葉県を中心にFC店を22店舗展開するフランチャイジーだ。「サーティワンアイスクリーム(以下サーティワン)」15店舗、「ビアードパパ」7店舗を運営している。前期の売上は11億円で、従業員は社員とパートアルバイトを含めスタッフは450人を数える。現在は順調な経営をしている同社だが、以前は苦難の時期を過ごしてきた。特にFC運営では、人材不足や離職問題に課題を抱えていたが、複数ブランドに加盟することが、そこうした問題の解決に大きく繋がったという。
加盟初期は売上好調 バブル崩壊を機に苦境
中島靖之社長は、もともと千葉県で祖父の代から続く高圧ガス販売事業の経営に携わってきた。建築部材の製造や医療などに欠かせない高圧ガスを、鉄工所や製造業、病院などに供給する事業だ。
そんな中、FC事業に乗り出すきっかけをつくったのは、先代社長の父だった。父は当時、高圧ガス販売とは別にデベロッパー業の役員をしており、商業施設の運営開発に携わっていた。大型商業施設であるイオンノア店(当時扇屋ジャスコ)の開業に際して、テナントの1区画を任されたことから、FCでの新たな事業を模索することになったという。
「父は店舗を構えるなら、自分で一から業態を起ち上げるより、ブランド力や運営ノウハウが確立されたFC事業が良いと考えたようです。また、本人がアイスクリーム好きだったこともあり、加盟ブランドにサーティワンを選んだのです」(中島社長)
1989年1月にアバントを設立。同年3月にFC 1号店となるサーティワン野田店をオープンした。開店当初は、アイスクリーム専門店ブームが追い風となり、スタートは順調だった。

1号店となるイオンノア店(当時扇屋ジャスコ)の様子
しかし、1994年にロードサイドに2店目を出店したころから状況が変わった。ちょうどその頃、バブル景気が崩壊したことをきっかけに、世の中全体が不況の波にさらされていた。そんな中で、祖業である高圧ガス販売事業の経営が伸び悩んだ。建設業界等全体が下火になり、建築部材製造等に使用する高圧ガスの需要が減ったことが原因だ。当時、FC事業とガス事業の両方を任されて経営に当たっていた中島社長は、高圧ガス販売事業の立て直しに専念せざるを得なくなり、サーティワンの経営にかける時間の割合が少なくなった。その間、サーティワンの方は不況に加えて一時のアイスクリームブームが冷めてしまったこともあり、月商が良いときの約70%まで落ち込んでしまったという。
「長く仕事をしてきましたが、この時期が一番大変でしたね。とにかく高圧ガス販売事業を立て直すべく身を粉にして働きました」(中島社長)
祖業を守ることを最優先にした結果、ガス販売の業績は徐々に回復し、10年後には安定した経営を取り戻すことができた。しかし、その分サーティワンの経営はおろそかになり、結局、2店目は閉店した。

現在のイオンノア店の様子
新店より難しいスタッフ教育 15店舗に拡大
ようやくアバントの経営にも注力できるようになったのは2006年ごろだ。業績を伸ばすには新規出店が欠かせない。そこで、あらためてサーティワン事業に注力する意思を本部に伝え、物件情報があれば出店を検討するというスタンスで再始動した。店舗開発は基本的に本部主導で行った。当時は大規模小売店舗法改正の影響もあり、各地で大型SCの開業が相次ぎ、サーティワンでもそこへの出店が活発化していたことから、本部の開発力が活きる形で出店機会が広がっていったという。
その頃の初期投資額は1店舗あたり1500万円ほどかかったが、居抜きの物件が舞い込んでくることもあった。2008年には他オーナーからの譲渡によって4店舗を一気に引き継いだ。だが、実際に引き継いでみると、運営面で想定以上の苦労があったという。前オーナーのやり方が染みついたスタッフとのコミュニケーションに難しさがあり、オペレーションや品質の再構築に時間と労力がかかったという。
「当初は、新しい上層部を快く受け入れてくれる方は少なく、まずはスタッフの方々に我々の理念や取り組みを知ってもらうことから始めました。オペレーションに慣れているベテランスタッフだからこそ即戦力になると思っていましたが、実際には新店スタッフを教育するよりよっぽど難しく感じました」(中島社長)スタッフ1人ひとりと時間をかけて話し合い、次第に理解を深めていった結果、何とかすべての店舗を自社の基準まで引き上げることはできたものの、その間、教育、採用、そして改装などで不測の投資を余儀なくされた。
こういった経験から、同社は社内の運営体制を整える決断をした。それまでは中島社長自ら現場を回り、全店舗を直接管理していた。しかし、店舗数が増えるにつれ、娘の中島理恵子エリアマネージャー(現・専務)を中心としたマネジメント体制へと移行した。エリアマネージャーを軸に、組織として現場を管理する形へ転換したのだ。
「店舗は社員がいなくても運営できる状態が理想です。エリアマネージャーがマネージャーに、そこからさらに店舗のスタッフに規律を教育できるかが大切です」(中島社長)2008年からの6年間は既存店舗の運営と体制強化に注力。体制が整った2014年以降は、年1店舗のペースで着実に出店を継続してきた。結果、2014年に1店舗だったサーティワンは現在、15店舗まで拡大している。店舗全体の平均売上は、月商700万円以上を維持しており、順調な運営を実現しているという。
事業多角化を目的に加盟 真逆の性質がシナジーに
同社は、その後2ブランド目となるビアードパパに加盟した。加盟のきっかけは、SCのデベロッパーからの提案にあった。同社が出店しているサーティワンテラスモール松戸店に隣接しているエリアで、ビアードパパの出店計画が固まっていた。デベロッパーが出店社を探していたところ、FC運営の実績を持つ同社に白羽の矢が立った。中島社長としても、事業の多角化を検討していた矢先の事だったという。お互いに条件の合う話だったため、「それなら」と出店を決断した。

ビアードパパペリエ千葉ペリチカ店
季節特性を活かした人材配置を実施
ロードサイドや路面店への展開目指す
加盟には他にも狙いがあった。アイスクリームは夏に売上が立ち、逆にシュークリームは冬に売上が立つ業態だ。そのため、収支が落ち込む季節をお互いに補完でき、経営を安定させられると踏んだ。
「長年、単独ブランドで経営してきましたが、多角化の必要性はずっと考えていました。ビアードパパは、繁忙期と閑散期がサーティワンとは真逆のブランドで、結果これがリスクヘッジの手段として良かったです」(中島社長)
2019年にビアードパパ1号店となるテラスモール松戸店を出店。直後にコロナが発生し、大きく影響を受けたものの、外出規制の緩和後は来店数が回復した。2021年には直営店から引き継ぐ形で柏モディ、セブンパークアリオ柏に出店。さらに2024年に1店舗、2025年には一気に3店舗を出店しており、加盟から6年で7店舗と精力的に店舗数を伸ばしている。
2ブランドに加盟したことは、同社が長く抱えてきた人材問題の解決にも繋がっているという。サーティワンの1ブランド時代は、閑散期に入ると店舗運営を少人数で行えるため、スタッフが辞めるケースや、ほかの仕事と掛け持ちして、閑散期が終わってもシフトに入らなくなるケースが頻繁にあった。しかし、ビアードパパに加盟したことで、2ブランドの特性を活かした人材配置やシフト体制を作れるようになったという。たとえば、一部のスタッフには両方の仕事を覚えてもらい、双方の閑散期にヘルプに入れるようシフトを管理した。さらに、同一施設内に両ブランドを構える場合は、キャンペーン時の混雑状況を踏まえてスタッフが相互に応援に入れるよう、人員配置に工夫をしている。
「2ブランド展開だからこそ可能な取り組みでした。どちらもスイーツ業態で、かわいくPOPなイメージがあるブランドなので、スタッフにヘルプを依頼してもすんなりと受け入れてもらえています」(中島社長)
複数ブランドに加盟した利点は多かったと中島社長は話す。
本部からの信頼 50店舗展開を目指す
同社は、これまでSCをベースに出店を重ねてきた。高いテナント料というハードルはあるが、その分を集客力で大きくカバーできている。基本的に売上が立ちやすく経営面で先を読みやすいという。
出店戦略において、サーティワンとビアードパパを明確に区別することはなく、良い物件があれば、いずれのブランドでも出店する方針だ。その前提として、本部に対して常に出店意欲を示し続けているという。サーティワン加盟から36年にわたり、本部と誠実に向き合ってきた姿勢に加え、ビアードパパでは2024年の顧客アンケート「店員の挨拶・笑顔・応対」部門で全国1位を獲得している。こうした実績が本部からの評価においても高い信頼を得られ、物件情報が集まりやすい環境を作れているという。
今後は、2031年の50店舗展開を目標としつつ、一方ではさまざまな新ブランドの加盟も検討している。
「これまでSCを中心に出店してきましたが、ロードサイドや路面店への展開も視野に入れています。また、サーティワンとビアードパパのシナジーが高かったので、新ブランドの検討は続けていきたいです。季節に左右されない商品もひとついいかもしれませんね」(中島社長)
FC事業開始の当初はバブル崩壊による祖業の立て直しに追われ、その後も人材問題などで長年苦労を強いられてきた中島社長。しかし、その後の社内運営体制の抜本強化に加えて、2ブランド展開の成果によって事業を大きく成長させることができた。
今後もフランチャイジーとしてさらなる成長を目指す。
アバント
(千葉県野田市)
中島 靖之 社長(66)
1959年千葉県生まれ。日本大学経済学部卒業。1989年に株式会社アバントに入社し、1号店のサーティワンアイスクリーム野田店の店長業務に携わる。1995年に専務取締役就任。2000年に代表取締役就任。
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