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【連載 第2回目】外食のプロ経営者が伝授する労務管理 虎の巻

公開日:2025.05.11

最終更新日:2025.05.13

※以下はビジネスチャンス2025年6月号から抜粋した記事で、内容は掲載時の情報です。

飲食業界最大の窮地!コスト増を数値化して乗り越えろ

コロナ禍が明け、飲食業回が直面する新たな危機

 コロナ禍が明け、2024年の訪日旅客数は過去最高を記録した。しかし、飲食業界は今も試練の中にいる。当連載では、外食FCに長きに渡り携わってきた安田隆之社長が、現場の「気づき」から得たノウハウを綴っていく。

飲食店倒産数が過去最多

 現在8店舗の飲食店を経営する中で、ある異変を感じています。それは、客数の伸び悩みによる「売上の停滞とコストの増加」です。「物価高でお客様が財布の紐を締め始めている…」皆様もそんな感想を持っているのではないでしょうか。
 昨今、帝国データバンクの公表した調査によると、飲食業における倒産件数が、2024年に過去最高を更新したというのです。同調査によると、これまで倒産件数が最多であったのは2020年の780件。2024年はそれを大きく上回り、894件と過去最多となりました。前年の2023年の768件と比べると、16.4%も増加しています。
 業態別でみると、倒産件数が最も多かったのは、居酒屋を主体とする「酒場、ビヤホール」(212件)。次に、ラーメン店などの「中華料理店、その他の東洋料理店」(158件)、「西洋料理店」(123件)と続きます。
 倒産の主な原因として、同調査では、①各種支援策の縮小や終了、②コロナ禍で実施されたゼロゼロ融資の返済開始、③急速に進行した円安による物価高、④コロナ禍からの経済回復による幅広い業態での人手不足、⑤人材獲得のため賃上げなどの人件費負担の増加を挙げています。これらを一言でいってしまえば、稼ぐ力がコストを賄えず、キャッシュが回らなくなったことが原因です。

コスト増を価格に反映できるかが大きな差に

 ここで注目したいのは、倒産事業者の規模の違いによる倒産件数です。倒産事業者を規模別に見てみると、10億円以上の大企業による倒産は全体のわずか0.7%(6件)に過ぎません。ところが、1億円未満の小規模企業の倒産は全体の87.7%(784件)を占めているのです。同調査は負債1000万円以上の法的整理のみを対象としていますから、人知れず廃業した小規模事業者を含めると、実態はデータが示す以上に深刻です。この差はいったいどこから出てきたのでしょうか。
 それは、「コスト増を数値で把握できているかどうか」です。たとえば、人件費率が売上の40%を占めている企業があります。人手不足対策として賃金を時給換算で5%上げなければならないとすれば、そのインパクトは売上の2%。つまり何も対策を講じなければ、営業利益が約2%減ってしまうということです。
 これ以外にも、キャッシュレス決済の普及があります。キャッシュレス決済はコロナ禍前と比べてほぼ倍増しているといわれますが、私の会社でも、売上に占めるキャッシュレス決済はここ数年で40%も増えました。キャッシュレス決済の手数料が3%だとすると、そのインパクトは1.2%。これも営業利益が約1.2%削られてしまうのと同じです。
 これら2点に加え、物価高や電気代の高騰もあります。経済産業省が発表した「商工業実態基本調査」によると、飲食業界全体における営業利益率の平均は8.6%とされていますから、これを数年放っておくとどうなるかが想像に難くありません。これらを解決する方法は価格改訂しかありません。
 大手と中小の対応力の差とは、コスト増のインパクトを数値で把握し、それを提供メニューの原価などのコストやお客様の感度に応じて反映できるかにかかっています。

Profile Kissaco 安田 隆之社長(64)
1960年生まれ。86年3月、中央大学大学院法学研究科修士課程修了。同年4月にモービル石油株式会社入社。2005年、日本マクドナルドホールディングス入社。08年に同社取締役管理部門統括上席執行役員に就任。11年に同社を退職し、株式会社コメダの代表執行役社長に就任。13年に株式会社Kissaco設立、代表取締役社長に就任。

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