【連載 第5回】FC研究会会長 山岡雄己の業界未来予測
公開日:2023.07.27
最終更新日:2023.07.27
※以下はビジネスチャンス2023 年2月号から抜粋した記事で、内容は掲載時の情報です。
第5回 DXによるフランチャイズ・システムSHINKAの可能性
同連載は、FCビジネス支援のプロであり、フランチャイズ研究会の会長を務める山岡雄己氏による「今後のFC業界の課題と対策」における洞察を全6回にわたってお送りする。経営コンサルタントの立場から見る今後のFC業界の進むべき方向性の鍵を探る。
第5回目は、FCビジネスにおける成長戦略の方向性について、ビジネスシーンで用いられる「SHINKA」の理論に当てはめて考察する。
ビジネスシーンにおける成長戦略を、生物学的なメタファーとしての進化ではなく、多様な意味を包含する「SHINKA」として表現することがあります。本稿ではこの「SHINKA」をFCビジネスに当てはめて、成長戦略の方向性を解釈してみたいと思います。
まず「伸化」は、地理的量的にチェーンを拡大し、規模の経済のメリットを享受するというオーソドックスな成長戦略と言えます。しかしながら、少子高齢化による労働力不足や原材料不足によるコスト増といった供給サイドの不確実性が増している昨今、従来のように単純にスケールメリットを追求することが難しくなってきています。
そのような中、あらゆる業種でDX導入による生産性向上への取り組みが試みられています。FCビジネスにおいても、CRM(顧客関係性マネジメント)やUX(顧客体験価値)の付加価値を高めることにより、競争優位性を維持発展させようとしています。
また、FC本部においてはマネジメント・ツールをダッシュボード化するBI(ビジネス・インテリジェンス)や、メガジーにおいては複数のFC本部が提供するマネジメント・ツールを連動させるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)によって、経営の効率化が図れる可能性があります。これらは既存事業をベースとしたDX活用であり「深化」にあたると言えるでしょう。
一方、新商品・新業態・新規事業の開発においてもDXは有効です。例えば外食産業では、ゴーストレストランに見られるようなテイクアウトやデリバリーに特化した業態開発にスマートフォンアプリやプラットフォームビジネスのスキームが応用されています。
また、コンビニエンスストアを始めとした小売業においては、完全キャッシュレス化や無人店舗などDXを絡めた新業態の実験が行われています。これらの全てが上手くいくという訳ではありませんが、そのようなトライ・アンド・エラーを経て次世代のスタンダードが創出されて行きます。これらの革新的な取り組みは、「新化」と言うことができるでしょう。
そしてこれらの「深化」や「新化」は、バリューチェーンやネットワークの中で統合されて、新たな価値を共創する「進化」へとつながります。これは前々号で仮説として取り上げた「地域経済におけるメガジーの可能性」を示すものであり、また前号で紹介したポーターの「CSV=価値共創」を体現するものでもあります。日本のFCビジネスは渥美俊一氏のチェーン理論の恩恵に浴して発展してきた一面もありますが、パラダイムシフト後は新たな視点によるチェーン理論も必要とされるようになるのではないかと、個人的には考えています。
Side Note
渥美俊一(あつみ・しゅんいち) 1926-2010
経営コンサルタント。東大法学部卒。経営研究団体ペガサスクラブ主宰。高度経済成長期にチ ェーン理論を打ち立て流通業界の名だたる経営者に影響を与え、日本のチェーンストアの高度化を推進した。
Profile 山岡雄己
1965年松山市生まれ。京都大学文学部卒。サントリー宣伝部を経て、2002年に経営コンサルタントとして独立。専門はチェーン・ビジネス、サービス・マーケティング、HRM(人的資源管理)。中小企業診断士。一社)東京都中小企業診断士協会認定フランチャイズ研究会会長。公財)川崎市民活動センターかわさき市民公益活動助成金審査委員長。法政大学経営大学院イノベーションマネジメント研究科(MBA特別コース)兼任講師。
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