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【連載 第2回】FC研究会会長 山岡雄己の業界未来予測

公開日:2023.05.09

最終更新日:2023.05.25

※以下はビジネスチャンス2022 年8月号から抜粋した記事で、内容は掲載時の情報です。

第2回 FCは中小企業生産性向上の鍵となりうるのか

 同連載は、FCビジネス支援のプロであり、フランチャイズ研究会の会長を務める山岡雄己氏による「今後のFC業界の課題と対策」における洞察を全6回にわたってお送りする。経営コンサルタントの立場から見る今後のFC業界の進むべき方向性の鍵を探る。
 第2回目は、FCビジネスが日本の中小企業の生産性にどう寄与するか考察する。

 

大手と中小の良さを活かす連邦経営

 日本におけるFCの歴史は1960年代初頭、ブランドとノウハウを結合した形(ビジネスフォーマット型)で不二家やダスキンがチェーン展開を始めたことが始まりとされています。1970年代に入って、マクドナルド、ミスタードーナツ、ケンタッキーフライドチキンなどの米国発外食ブランドが日本に上陸し、日本におけるFCビジネスが本格化していきます。
 この流れの中で地場の中小中堅企業は、FC加盟によってナショナル・ブランドをローカル市場に導入し多店舗化することで、地方経済の発展を支えてきました。
 ところで最近、日本の中小企業の生産性の低さに言及したデービッド・アトキンソン氏の発言が物議を醸しています。アトキンソン氏はM&Aを活用した企業再編による中小企業の生産性向上の可能性を説いており、一部の経営者は「中小企業が大企業に支配される」というネガティブなイメージを持ったのかもしれません。
 しかしながら最近では、あえて大手企業の傘下に入ることで規模の経済性のメリットを享受しようとする若手ベンチャー経営者も増えてきました。つまり起業の出口戦略は、株式公開による創業者利益獲得が第一義的なのではなく、大手企業に自社を売却してグループ経営に参画するという選択肢もあり得るということです。
 このような大企業と中小企業による「連邦経営」は、ゼロからイチを産み出すのが得意な中小企業と、イチをヒャクに増やす仕組みづくりが得意な大企業の良さを活かした、生産性向上のための有効な手段だと捉えることもできるでしょう。

資本主義の精神にも合致

 マックス・ウェーバーは、「資本主義の始まりにはプロテスタンティズムの精神が大きく影響した」と言っています。これは「禁欲的かつ勤勉に働き得た利益を社会に再投資し経済の乗数効果を得ることで資本主義が形成されていった」と解釈することができます。そしてFCは「成功したビジネスモデルを独占するのではなく他人にも使わしむることで経済発展に寄与する」という側面があり、この観点からすればFCはエシカル(倫理的)な資本主義の精神にかなったものであるとも言えます。
 このようにFCとは、FC本部の開発した生産性の高いビジネスモデルを、ロイヤリティなど一定のフィーを徴収することで加盟者に使用を許諾するものです。したがって前述したM&Aによる資本的連携だけでなく、FCによる契約型の「連邦経営」でも中小企業の生産性を上げることは、その目的からして本来的に可能です。そういう意味でFCは、「日本の中小企業の生産性向上に資するビジネススキームとなりうる」と個人的には考えています。

Side Note

「デービッド・アトキンソン」
 小西美術工藝社社長。1965年にイギリスに生まれ、オックスフォード大学では「日本学」を専攻。元ゴールドマン・サックスのアナリスト。同社在籍中に日本の不良債権の実態を暴き、世間の注目を集めた。著書に『日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義』や『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』など多数。日本経済における生産性向上の必要性を説く。

「マックス・ウェーバー(1864-1920)」
 ドイツの偉大な社会学者、経済学者。代表作に『職業としての学問』や『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』などがある。

Profile  山岡雄己
1965年松山市生まれ。京都大学文学部卒。サントリー宣伝部を経て、2002年に経営コンサルタントとして独立。専門はチェーン・ビジネス、サービス・マーケティング、HRM(人的資源管理)。中小企業診断士。一社)東京都中小企業診断士協会認定フランチャイズ研究会会長。公財)川崎市民活動センターかわさき市民公益活動助成金審査委員長。法政大学経営大学院イノベーションマネジメント研究科(MBA特別コース)兼任講師。

 

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