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【連載 第38回】経営者が知らないとマズイ 業績を上げるためのファイナンスの裏ワザ

公開日:2023.07.14

最終更新日:2023.07.14

※以下はビジネスチャンス2022 年12月号から抜粋した記事で、内容は掲載時の情報です。

脱、内部留保

アカウンタックス代表取締役社長 山口真導氏

 M&Aが確実に市民権を獲得しつつあります。特にFC事業は、ビジネスモデルが明確なので、売るにも買うにも好都合です。投資の出口戦略として、事業売却を視野にいれておくべきでしょう。

 

 

内部留保は二重課税の原因

 法人が内部留保するためには、必ず法人税を払う必要があります。法人税の実効税率が30%とすると、100万円の税引前利益に対して30万円の法人税等が課税され、残るのは70万円です。
 一方で、税引前利益100万円を役員報酬で受け取ると、法人税は課税されませんが、所得税と住民税が課税されます。この税率が併せて50%とすると、社長の手取りは50万円です。
 内部留保した方が手残りは多いように見えます。しかし、法人に残った70万円を社長が受け取る際には、所得税と住民税が課税され、結局は35万円となります。全額役員報酬で引き出した50万円の方が手残りは多いのです。その原因は、法人税と所得税の二重課税です。

内部留保は資本コストが高い

 内部留保した資金を再投資して事業を拡大するのが効率の良い方法だと主張する方も多いです。比較対象となる銀行借入の調達コストは、いま年利1%程度です。銀行借入の利率のことを財務理論では、借入金の「資本コスト」と呼びます。内部留保が借入金より効率が良いとすると内部留保の資本コストは1%未満となりますが、オーナー社長が銀行借入以下の低い利回りで資金提供するとは到底思えません。多くの社長が、5%以上の利回りを要求すると思います。
 このように内部留保で調達した資金は、銀行借入した資金よりも資本コストが高く、厄介なものです。

内部留保は銀行借入で代替可能

 内部留保がないと銀行借入が出来ないという銀行対策のエセ専門家が多くて困ります。貸す側は、内部留保を蓄積した経営実績を評価しています。そのため、本業のキャッシュ・フローで返済能力を示せれば借入するうえで問題はありません。融資の申込でやるべきことは、事業計画や実態貸借対照表を用意することです。

銀行借入が内部留保の利回りを上げる

 中小企業は、銀行借入の資本コストの低さを活用するべきです。
 内部留保と借入金の割合が50%ずつの会社があったとします。借入利率が1%、事業全体での利益が5%の場合、内部留保の利回りは9%です(支払利息以外の利益4.5÷50)。借入比率が80%だった場合、利回りは21%になります(支払利息以外の利益4.2÷20)。
 このように借入比率が上がれば上がるほど、利回りが向上して、内部留保の資金効率が上がるのです。
 一方で、借入比率が上がると倒産リスクが上がります。倒産リスクに内部留保で対応するのは、一つの方法ではありますが、偏り過ぎないことが大事です。

借入金の返済が内部留保を増やす

 借入金の返済は税引後利益からしか出来ません。つまり、借入をすると内部留保が必然的に発生します。この内部留保は借入金の返済に充てられるので手元に残るわけではありません。返済を終えると借入金に相当する内部留保が「記録」として残るのです。
 借入金を完済すると、返済金額分のおカネが残せる状態になります。このおカネこそが、真の留保です。

バランスが大事

 オーナー社長は、社長留保の最大化を念頭におきつつ、借入金の返済を通じて、内部留保を自然に増やすことが理想です。
 内部留保一辺倒にならずに、バランス良くおカネを操っていきましょう。

 

Profile 山口真導
 公認会計士・税理士。経理代行のアカウンタックス代表。ビズ部・部長。債権の入金確認や振込業務を含む、経理の全機能を提供し、キャッシュ・フロー改善に貢献している。毎月開催する節税セミナーには多くの経営者が参加して好評を博している。

お問い合せ TEL.03-3237-1311
ビズ部:http://kigyou-no1.com
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