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【連載 第37回】経営者が知らないとマズイ 業績を上げるためのファイナンスの裏ワザ

公開日:2023.05.25

最終更新日:2023.05.25

※以下はビジネスチャンス2022 年10月号から抜粋した記事で、内容は掲載時の情報です。

スモールM&Aと税金

アカウンタックス代表取締役社長 山口真導氏

 M&Aが確実に市民権を獲得しつつあります。特にFC事業は、ビジネスモデルが明確なので、売るにも買うにも好都合です。投資の出口戦略として、事業売却を視野にいれておくべきでしょう。

 

 

会社売却と事業譲渡

 スモールM&Aの手法としては、会社売却か事業譲渡のいずれかの方法が採られます。会社売却は、会社の持分を売却することです。事業譲渡とは、特定の事業とそれに紐付く資産・負債を売却することです。
 上場会社や中堅企業では会社売却が主流ですが、スモールM&Aでは事業譲渡が圧倒的です。簿外負債(決算書に載っていない負債)が買収後に発覚すると、買手側が想定外の損をすることになります。規模の小さい会社は、おカネの管理が杜撰な傾向があるので、事業譲渡でそのリスクを回避しようとするのです。

事業譲渡代金は会社が受取

 オーナー社長が事業譲渡から利益を得るには、会社に入金された事業譲渡の代金を役員報酬や退職金の形で引き出す必要があります。そうしなければ丸ごと法人税等の課税対象になり、事業譲渡の収入の約3割を法人税等として納めることになります。
 利益を引き出す時、役員報酬の損金算入のルールが障害になります。役員報酬は期中に増減させると、毎月定額の部分以外は法人の損金に出来ません。そのため役員報酬の改定が可能な決算期末日後3ヶ月以内に、事業譲渡のタイミングを合わせる必要があります。合わない場合は、事業譲渡の時期をずらすか、決算期変更を実施するなどの努力が必要です。
 一方の退職金には、特段規制はありません。しかし、事業譲渡後に廃業や代表取締役の交替をする場合に限定された対策です。

事業譲渡は消費税が課税される

 消費税の課税対象になる資産が譲渡対象となれば、事業譲渡でも消費税が課税されます。譲渡代金が税込か税抜かで、売値は10%も違うので、買手との意思の齟齬がないように、予め確認するようにして下さい。

会社売却代金はオーナーが受取

会社売却は、既存株主が保有する株式を新株主に譲渡することです。既存株主が会社の場合は、売却代金が会社に入るため、事業譲渡と同じ問題が発生します。
 一方で、オーナー社長個人が保有する株式を新オーナーに売却する場合は、オーナー個人の収入になります。オーナー個人の所得は株式譲渡所得に分類され、他の所得と合算せずに、売却代金から出資額を差し引いた差額(売却益)に対して20%の税率で所得税等が課税されます。
 株式譲渡所得は、法人税等よりも税率は低いです。しかし、分離課税なので相殺出来るのは、他の株式譲渡損失だけです。

オーナー社長が株式売却する場合

 会社売却の場合、株式譲渡収入とオーナー社長の退職金を合わせた売却額となることがあります。退職所得も分離課税ですが、オーナー社長の勤続年数と退職金の金額によっては実効税率が20%以下になります。例えば、勤続年数が30年以上で退職金1億円を受け取る場合は、実効税率は20%を下回ります。譲渡代金3億円で会社売却するなら、退職金として1億円、残りを株式譲渡代金として受け取れば、手残り額を最大化出来ます。
 応用すると、買手は手残り金額で交渉することで支払額を少なく出来ますし、売手は額面金額で交渉すれば手残り金額を大きくできます。M&Aの交渉の場では、売手と買手の税務理解度の違いで損得が出ることもあります。
 M&Aに専門家を活用することはコスパの良い投資になると思います。多少お金がかかっても、詳しい人に相談されることをオススメします。

Profile 山口真導
 公認会計士・税理士。経理代行のアカウンタックス代表。ビズ部・部長。債権の入金確認や振込業務を含む、経理の全機能を提供し、キャッシュ・フロー改善に貢献している。毎月開催する節税セミナーには多くの経営者が参加して好評を博している。

お問い合せ TEL.03-3237-1311
ビズ部:http://kigyou-no1.com
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