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【連載 第1回】ワークマン式ホワイトフランチャイズ経営論

公開日:2023.12.11

最終更新日:2023.12.11

※以下はビジネスチャンス2023年12月号から抜粋した記事で、内容は取材時の情報です。

〝加盟店オーナーは人生を賭けている〞勝ちが見えない限り、出店はしてはならない

 ホワイトフランチャイズ提唱し、実践するワークマン。近年の目覚ましい成長ぶりは、2018年に初出店したワ ークマンプラスのヒットが皮切りとなった。そしてその火付け役を担った同社専務取締役土屋哲雄氏の連載企画が今号からスタートする。初回はワークマンのFC本部としての経営論について語ってもらった。

ワークマン(東京都台東区) 土屋 哲雄 専務取締役

PROFILE つちや・てつお
東京大学経済学部卒業後、三井物産入社。三井物産デジタル社長、三井情報取締役を経て2012年にワークマン入社。 19年専務取締役(現職)。WORKMAN Plusや#ワークマン女子など仕掛け、大ヒ ット。22年からは東北大学客員教授も務める。代表的な著書に「ワークマン式『しない経営』」(20年ダイヤモンド社)。

 

 

作業服からアウトドアウェアへ

 皆さん初めまして、ワークマンの土屋哲雄です。本連載では、私が在籍するワークマンという会社で自身がこれまでに経験してきたことを中心に、加盟者にとって〝ホワイト〞なFCとはどういうものかをお話できればと思います。
 まずは自己紹介になりますが、私は大学卒業後に三井物産に入社し、その後グループ会社である三井物産デジタルの社長に就任。そして本社経営企画室次長、グループ会社である三井情報の取締役を経て、2012年にワークマンに入社しました。入社した当初はワークマンに強い将来性があると感じていましたが、2年が経った頃でしょうか。このままではあと数年で1000億円といわれる作業服のマーケットを我々が取り尽くし、飽和状態になることが分かりました。ですから当時の業績自体は好調でしたが、当時の社長は危機感を持っていました。そこで2014年頃から客層を拡大するためのフォーマット作りを始め、「ワークマンプラス」というブランドを作り上げていったのです。
 そもそも、作業服がどんどんアウトドアに近づいていたこともあり、作業服の見せ方を変えることで、アウトドアウェアのお店に変化させることができました。同じ商品でも、蛍光灯で照らすと無機質な〝作業服〞のまま。しかしオレンジ系の柔らかい光を照らしマネキンに着せると、〝アウトドアウェア〞といった具合になるのです。
 ワークマンプラスを初出店したのは4年後の2018年。時間が掛かりましたが、これはあえてそうした部分もあります。なぜなら、いきなり新ブランドを打ち出してしまうと、現場の加盟店オーナーたちが混乱してしまいますから。既存店の反応も見つつ、慎重にスタートさせましたが、時間をかけた分、その後はスムーズにワークマンプラスを拡大することができました。

既存店の棲み分けを徹底

 その後も既存店と被らず売上を奪わないフォーマット作りを進め、現在は多数のブランド展開に至っています。特にここ数年は、「#ワークマン女子」や「ワークマンプラス2」、「ワークマンプロ」や「ワークマンカラーズ」など、エリアや想定利用者に合わせて使い分けて出店しています。#ワークマン女子のように、この時代に「女子」と冠した名前はおかしいとも言われましたが、これも男性客が来すぎて既存店の客を減らさないようといった意図があるのです。
 これら複数のブランドを上手く使い分ければ、向こう20年は既存店とぶつかることなくさらに店舗の拡大をしていけると考えています。
 私は加盟店という存在がいるのであれば、本部の経営が絶対的に安定している必要があると考えています。加盟店オーナーは人生を賭けているので、本部がコケてその人の人生を狂わせることは絶対にしてはいけません。ですから、経営に不安がある状態で加盟店の募集をするなどもってのほか。ワークマンプラスの出店に4年が掛かったのも、加盟店という存在がいたため慎重にならざるを得なかった結果です。
 売れない店を作って加盟店が在庫を持つことになったら、個人資産を侵害することになります。まずは加盟店のことを考えて、必ず勝つと分からない限り出店してはいけません。

店舗ごとに加盟希望者を募集

加盟判断材料の公開

 通常のFCモデルでは考えにくいことだと思いますが、ワークマンでは加盟募集する店舗が既に決まっており、店舗ごとに加盟希望者を募っています。ブランドごとに特色も違いますが、エリアや前の店長のライフステージによっても、売上実績は大きく変わります。そのため、店舗ごとに募集広告の内容を変えて書かなければなりません。「ガッツリ稼ぐ」店舗なのか、「ゆとり経営」の店舗なのか。募集の時に必ず区別するようにしています。
 実は募集広告の原稿は私が書いています。現地に行って半日程度店舗の様子を見て、どのくらいの商圏で人が訪れてくれるのか、競合があるのか、一般客と作業着客の比率がどのくらいかなど、必ず現地に行かなければ分からない情報を記載しているのです。
 そして募集広告を書く際に特に重要なことは、マイナス情報も書くことです。マイナス情報は加盟店面接時にも正しくお伝えします。たとえば、「駐車場が少ない」「車を渋滞させてしまい近所に迷惑を掛けたことがある」「売上が平均より下の店舗である」などです。もちろん、店長が変わることで売上が伸びる可能性も十分にありますが、マイナスポイントを承知の上で加盟していただくことが重要だからです。
 お子さんの教育費のためにガッツリ稼ぎたい人が、「ゆとり型」の店舗に加盟することになったら悲劇ですよね。そうならないように加盟時の判断材料は、できるだけ多く公開しています。

新しい承継制度の導入

 現在の既存店オーナーは団塊世代の方が多いことから、ここ数年は年間20〜30名ほどの方が引退しています。ですから承継というテーマでは、今が一番大変な時期です。当社ではこうした流れに対応すべく、1年前に「副店長制度」という承継制度を作りました。
 以前は、親族の方がなんとなくお店を手伝っているという理由で、時期が来たら継承をしていただくか、その時の店舗状況や面接を通して判断していました。つまり、本部が指導をする時間もなく、承継の合否を判断していたのです。
 しかし最近の加盟希望者は、長期経営ができることを分かっていますから、加盟する前から「息子に継がせたい」と言っている人も多くいます。そこで副店長制度を作り、現店長の契約が終了する約1年半前に副店長の申請を出していただき、継承をしたいという意思を明確にしてもらうようにしたのです。そうすることで、1年半掛けて本部が指導を行うことができるようになりました。結果として、現在は年間約半数のオーナーがお子さんなど親族への承継を希望されています。
 正直、指導をしても承継が難しいと判断することもあります。しかし、大切に育ててきた店舗を親族にスムーズに承継する制度を作ったことで、先々の不安を解消し、より前向きな気持ちで店舗運営に臨んでもらえるようになったのは明確です。

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