
【連載 第4限目】教えて!木村先生 フランチャイズ・ニュース講座
公開日:2025.01.23
最終更新日:2025.01.23
※以下はビジネスチャンス2025年2月号から抜粋した記事で、内容は掲載時の情報です。
売上収益予測に対して本部が負う責任
売上収益予測が外れても本部が責任を負わない理由
フランチャイズ本部が契約前に加盟店に対して示した売上収益予測が不正確であったとして、本部の責任を認める判決が令和5年2月3日に東京地裁で言い渡されました。この判決では、本部は加盟店に約330万円の損害賠償を支払うように命じられています。
今回の事件で、本部の責任が認められた理由は「予測算出に用いられた数値に合理性が無かった」ことです。すなわち、本部の内部基準では Bランクの立地なのに、より良い Aランクの立地だとして、この数値を用いて本部は予測を算出していました。
また、売上予測を導き出した過程や参考とした店舗の立地などを加盟店に説明していなかったことも問題とされました。
しかし、このように本部の責任が認められることは珍しいことです。過去の裁判例では、売上収益予測が外れても、本部の責任が問われることはほとんどありません。
本部が責任を負わない理由は、いくつかあります。
まず1つ目として、フランチャイズ契約は、独立した事業者同士の契約だという点があります。すなわち、フランチャイズ契約では加盟店の事業が失敗した場合、加盟店は独立した事業者である以上、その責任は基本的に加盟店のみが負うことになります。
2つ目の理由は、加盟店の売上不振は、加盟店の経営努力不足が原因である可能性があることです。事業を成功させるには、加盟店の経営努力が不可欠であることは言うまでもありません。したがって、上記のような売上収益予測に関する裁判では、加盟店は「売上不振は自分の経営努力不足が原因ではない」と証明する必要がありますが、この立証はとても難しいです。本部が加盟店の経営に問題があったことを指摘することは比較的容易ですが、加盟店が「十分に経営努力をしていた」と反証するのは困難だからです。
そして、3つ目の理由ですが、予測はあくまで予測に過ぎないので、実際の結果と異なることは当然にあります。ですので、予測が外れたからといって、これだけで本部の責任が問われることはありません。
本部と加盟店間のトラブルを防ぐために
「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方(フランチャイズ・ガイドライン)」では、本部が売上収益予測を提示する場合には、「類似した環境にある既存店舗の実績など、根拠のある事実に基づくこと」や「合理的な算定方法等に基づくこと」を本部に求めています。また、本部はこれらの根拠となる事実や算定方法を加盟店に示す必要があります。
そして、これらのルールに違反した場合には、ぎまん的顧客誘引として独禁法違反となります。
本部と加盟店間で起こるトラブルの多くは、加盟店が思ったように利益を上げられないことが原因です。しかし、本部の予測に反して加盟店が儲からなくても、本部の責任が認められることはほとんどありません。
したがって、加盟店側も売上収益予測が外れる場合があると理解し、予測がどうやって計算されたのか、その計算に用いられた数値が合理的かどうかなどを見極めることが大切です。
Profile 木村義和
愛知大学法学部教授。関西学院大学大学院法学研究科修了、博士(法)。コンビニ問題やフランチャイズ契約の研究をしている。官公庁から法令調査や職員研修講師の委嘱を受けた経験あり。代表著書は『コンビニの闇』(ワニブックス)。
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