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【連載 最終回】法人フランチャイジーと地方創生

公開日:2023.12.06

最終更新日:2023.12.06

※以下はビジネスチャンス2023年12月号から抜粋した記事で、内容は掲載時の情報です。

第6回(最終回)地方に対応したビジネスモデルの開発が急務

 

関西学院大学商学部 川端基夫教授

 個人の独立開業手法としてイメージが強いフランチャイズだが、こと日本においては、加盟者の属性の半数以上が法人で占められている。その数は推計1~1万3000社とされており、彼らの多くは特に地方に根を張る老舗企業ばかりだ。今回からスタートする同連載では、そんな日本のフランチャイズ業界を支える立役者たちの存在に迫っていく。

 

 

 

地方にメガジーが多いワケ

 本誌8月号のメガフランチャイジーの運営店舗数ランキングを見ると、その多くが地方に拠点を置く法人となっています。
 背景には、都市部と地方でのチェーン店の意味付けの違いがあります。地方における知名度の高いチェーン店の進出は、地域の生活者に与えるインパクトが都市部とは比べものにならないほど大きいのです。
 都市部でならチェーン店はありふれた存在ですし、多様な選択肢の1つでしかないのですが、地方では都市部の現代的な消費スタイルを提供してくれる貴重な存在となっています。
 たとえば、地方の若い世代にとっては、コンビニや有名なファストフード店、あるいはラーメンチェーン店やカラオケ店などが、地元で利用できることは極めて重要な意味を持ちます。なぜなら、いくら地元愛が強い若者であっても、テレビやSNSを賑わすチェーン店が周辺に1店舗もないという状況では、そこに住み続けることに迷いが生じかねません。
 しかし、チェーン店を介して都市的な消費生活ができるのなら、住み続けてもよいと思うかもしれません。そのことは、ファミリー層や高齢者にも当てはまることでしょう。
 こうした点で、チェーン店運営は都市部よりも地方において、より大きな意義を持つと言えます。

法人フランチャイジーの役割

 こうした地方のチェーン店の多くは法人フランチャイジーによって運営されていますが、その法人が地元の老舗企業や優良企業であることは、ほとんど認識されていません。実は地方の法人フランチャイジーの経営者は、地元経済界の有力者や名士、顔役の方が多いのが特徴です。
 筆者のヒアリング調査では、彼らはフランチャイズを活用した事業拡大だけでなく、地域経済の活性化や消費生活の質の向上を強く意識していました。本部選びにしても、「地域の人たちが望んでいる(地元の人が喜ぶ)ブランドを選んだ」といった声も多く聞かれました。つまり、法人フランチャイジーは地方の活性化、地方創生の一端を担う重要な存在なのです。
 地方で一から新たな商売を起こすには時間もかかりますし、リスクも一段と高まります。その点、フランチャイズは完成モデルの移転ですので、時間とリスクが軽減されます。すでに都市部でブランド性も構築済みです。
 ですからフランチャイズビジネスは、地方ほどメリットが発揮できる仕組みだと言えます。

新しいモデルの開発を

 ただし問題は、都市部と地方の市場ニーズの違いの大きさです。たとえば、定食店チェーンは都市部でなら1人か2人での利用が多いのですが、地方では三世代家族での来店も珍しくありません。お年寄りから孫世代までが楽しめるメニューが揃うからです。
 しかし、店舗レイアウトも収益モデルもそのような地方市場には対応していません。ほとんどのフランチャイズモデルは、都市型モデルなのです。したがって、本部と法人フランチャイジーとが協力して、少子高齢化時代にマッチした多様なモデルを開発することが急がれます。(完)

Profile  かわばた・もとお
1956年生まれ。大阪市立大学大学院修了、博士(経済学)。関西学院大学商学部教授。流通業の研究が専門であり、2021年に出版した『日本の法人フランチャイジー』(新評論)では、日本商業学会賞優秀賞および中小企業研究奨励賞を受賞。

 

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