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【連載 第3回】25兆円市場を支える立役者 法人フランチャイジーの可能性

公開日:2023.08.30

最終更新日:2023.09.20

※以下はビジネスチャンス2023年6月号から抜粋した記事で、内容は掲載時の情報です。

第3回 法人フランチャイジーの拡大プロセス(その1)

 

関西学院大学商学部 川端基夫教授

 個人の独立開業手法としてイメージが強いフランチャイズだが、こと日本においては、加盟者の属性の半数以上が法人で占められている。その数は推計1万~1万3000社とされており、彼らの多くは特に地方に根を張る老舗企業ばかりだ。今回からスタートする同連載では、そんな日本のフランチャイズ業界を支える立役者たちの存在に迫っていく。

 

 

 

70年代初頭段階ですでに45%が法人加盟

米国は「個人の企業」日本は「本部の拡大」

 フランチャイズの加盟者は、米国では個人が7割を占め、日本では法人が7割以上を占めるという真逆の状況であることはすでに述べました。今回は、なぜこのような日米の相違が生じたのかについて述べていきます。
 米国でフランチャイズが登場したのは1950年代後半のことであり、1950年代末から1960年代にかけて、空前の加盟ブームが起こりました。その背景には、第2次世界大戦後に発生した大量の退役軍人の存在がありました。
 彼らは、軍役中や退役時に受け取った手当(資金)が手元にありましたが、新たに事業を興すノウハウが不足していました。そのタイミングで、ノウハウを丸ごと提供してくれるフランチャイズシステムが登場したのです。
 その結果、退役軍人たちが各種のフランチャイズに加盟していきました。また、当時はチャンスに恵まれなかった有色人種や移民たちも加盟しました。こうして、米国では個人の起業の道具としてフランチャイズが拡大しました。
 1960年代になると、日本にもフランチャイズが入ってきます。当時の日本は高度経済成長下で地価や賃金の高騰、人手不足が深刻でしたので、多店舗展開を行う企業は新規出店による成長が困難になっていました。一方、小売・飲食業界では中小零細と大手チェーン店との競争が激化していました。
 そこで、出店攻勢をかける企業(本部)はコストや資金の節減の視点からフランチャイズ方式を採用するようになり、他方で追い詰められた小売・飲食店が、フランチャイズ加盟によって生き延びようとする状況が生じます。とくに、立地の良い店舗物件を所有する人々が優先的に選ばれました。こうして、不二家や養老乃瀧、どさん子ラーメンや小僧寿しなどのFC本部が店舗数を急増させたのです。
 要するに、米国では個人による起業の手段として、日本では本部がコスト負担なしに店舗を拡大する手段、既存の小売・飲食業が生き延びる手段としてスタートしたのです。この違いこそが、その後の発展の道筋を大きく変えました。なお当時の米国では出店コストが安かったので、店舗は本部が建設し、加盟者にリースをする形で出店することも多くありました。これも日米の違いと言えます。
 重要なことは、日本では初期の加盟者の中に複数店舗を運営する小規模な法人が多く含まれていたことです。個人よりもこのような小規模法人の方が経営に行き詰まっていたのです。中小企業庁の調査では、1970年代初めの段階で、すでに加盟店の45%が法人によって運営されていました。
 ところが、1970年代に入ると、海外から多数の外食業が進出してきます。それらの日本側パートナーの多くは大手商社や大手スーパーといった大企業でしたので、日本本部は個人ではなく経営が安定し投資力のある中堅中小企業を加盟者に選びました。三菱商事がパートナーだったKFCの場合は、スタート時点から加盟者すべてが、信頼性の高い取引先や各地の優良な中堅中小企業でした。法人加盟が本格化したのは、この時期からです。

Profile  かわばた・もとお
1956年生まれ。大阪市立大学大学院修了、博士(経済学)。関西学院大学商学部教授。流通業の研究が専門であり、2021年に出版した『日本の法人フランチャイジー』(新評論)では、日本商業学会賞優秀賞および中小企業研究奨励賞を受賞。

 

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