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【連載 第16回】FC弁護士が答えるフランチャイズ法律相談 

公開日:2026.01.04

最終更新日:2026.01.06

※以下はビジネスチャンス2026年2月号から抜粋した記事で、内容は掲載時の情報です。

カスタマーハラスメント

 フランチャイズに加盟する、本部を構築または運営する。いずれの場合も法律の知識は欠かせない。「知らなかった」では済まされない失敗を防ぐために、法に基づく考え方を知っておきたい。チェーンビジネスに詳しい現役弁護士が、実例を交えてわかりやすく解説する。

Q: 最近カスタマーハラスメントが社会問題となっています。使用者としてはどのような点に注意すればよいでしょうか?

1.カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)とは「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」を言います。(※)
 カスハラが生じた場合、被害者である労働者は、加害者(顧客)に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求できます(民法第709条)。雇用主である企業も、カスハラにより業務を妨害されれば加害者に対して損害賠償を請求できますし、もしSNS等で企業に対する誹謗中傷がなされれば、名誉棄損に基づく損害賠償やSNSの記事の削除等を請求できます。
2.他方、使用者は労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務を負うので(安全配慮義務:労働契約法第5条)、使用者の言動がカスハラを助長した場合は、使用者自身も被害者である労働者に対して賠償責任を負います。市立学校の教諭が児童の保護者から理不尽な言動を受けたことについて、校長が事実関係を冷静に判断することなく教諭の言動を一方的に非難し保護者に謝罪するよう求めた事案で、裁判所は市と県に対し当該教諭への損害賠償を命じています(甲府地裁平成30年11月13日判決労判1202号95頁)。これは使用者の安全配慮義務違反の一例です。
 また、厚労省の「心理的負荷による精神障害の認定基準」が令和5年に改訂され、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」ことが認定基準に追加されました。そのため、カスハラによって精神疾患に罹患した労働者が労災申請を望んだ場合、企業は適切に対応する必要があります。
3.今後は、各企業もカスハラ対策を積極的に進める必要があります。まず、企業は自社のカスハラの実態を把握した上で、カスハラの概念を明確にするとともに、経営トップがカスハラに対する対応方針を表明してください。最近では、悪質な顧客に対しては接客拒否など毅然たる対応をすることを表明する企業も増えています(JR東日本、高島屋グループ、各種ホテル会社など)。
また、カスハラが生じた場合の対応方法をマニュアル化して労働者に周知してください。具体的にどのような行為がカスハラに当たるか否かについては、前掲カスハラ対策マニュアル9頁に各企業からのヒアリング結果が掲載されていますので参考にしてください。東京都から公表された「カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル」も参考になります。
さらに、企業としては、カスハラについての相談窓口を設け、カスハラが生じた場合に、労働者の生命身体の安全や健康に配慮して適切に対応してください。

【厚生労働省】カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル

【東京都】カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル

(※)厚生労働省:令和4年2月 25日付「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」7頁。以下、「カスハラ対策マニュアル」

 

弁護士法人心斎橋パートナーズ

フランチャイズ
弁護士法人心斎橋パートナーズ
フリーランス保護法Profile かんだ・たかし
1963年大阪生まれ、早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。チェーンビジネス法務を専門とし、多くのFCチェーン、レギュラーチェーンの顧問を務める。現在、弁護士法人心斎橋パートナーズ代表社員。(社)日本フランチャイズチェーン協会研究会員・専任講師。(社)中小企業診断協会東京支部フランチャイズ研究会特別会員。経営法曹会議会員。(株)あさひ社外取締役。趣味は筋トレと格闘技。2023年度全日本マスターズレスリング選手権78㎏級3位。
 「ケース別 法的交渉の実務」(共著・青林書院・2020年)「フランチャイズ契約の実務と書式(改訂版)」(三協法規・2018年)
「事例で分かる外食・小売業の労務戦略(増補版)」(第一法規・2018年)
「フードサービス店長法律ハンドブック」(商業界・2013年)「よくわかる!フランチャイズ入門」(共著・同友館・2011年)

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