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【連載 第41回】アメリカに学ぶフランチャイズ事情

公開日:2025.01.19

最終更新日:2025.01.23

※以下はビジネスチャンス2025年2月号から抜粋した記事で、内容は掲載時の情報です。

米国で加熱するフライドチキン市場

 日本のフライドチキン市場は KFCのほぼ独占状態です。一方、米国では KFCに代わる業界のリーダーが次々と現れています。その代表が Chick-fil-A(チックフィレイ)です。同ブランドは、他に類を見ない顧客サービス力で競合他社を追い越し、今や米国トップのチキンファストフードチェーンとなりました。
 また、マクドナルドやウェンディーズなどの競合他社より店舗数が少ないにもかかわらず、売上高では米国3位のチェーンに成長しています。チキンファストフード分野での優位性を確立した同社の存在は、業界を再定義するものです。今や KFCやポパイズなどの巨大企業がチックフィレイに追いつこうと躍起になっています。

記録的な成長と市場シェア

 チックフィレイは、並外れた成長でトップに上り詰めました。業界の調査会社Technomic inc.によれば、チキンファストフード分野での市場シェアは、22年の38.3%から23年には45.5%に急上昇。一方、競合ブランドポパイズは11.9%です。この期間に市場シェアを伸ばしたのはチックフィレイだけで、KFCやRaising Cane’sなど他のチェーンは苦戦しているようです。
 また、チックフィレイで注目すべきは、限られた店舗数で大量販売できる能力です。KFCの4000店舗に対して、同店は約3000店舗。日曜定休でも年間売上高は870万ドルに上ります。ちなみに、マクドナルドの年間平均売上高は370万ドルです。

顧客サービス力とシンプルなメニュー

 チックフィレイが成功した一番の要
因は、顧客サービスに重点を置いていることです。米国の顧客満足度指数では、9年連続トップを維持しています。
 また、マクドナルドやポパイズを含む他チェーンがメニューを拡充する中で、チックフィレイはチキンに重点を置いているのも特徴です。

競合他社とチキン戦争

 19年にチックフィレイとポパイズがチキンサンドイッチを発売し、いわゆる「チキンサンドイッチ戦争」が勃発しました。SNS上での両チェーンのやりとりは世間の注目を集め、両ブランドに客が殺到。ポパイズは一時的に売上を伸ばしましたが、チックフィレイをマーケットリーダーの座から下ろすには至りませんでした。
 また、チックフィレイの人気にあやかろうとして、マクドナルドは21年にクリスピーサンドイッチを発売。一方、Raising Cane’sやDave’s Hot Chickenなどの小規模企業は、チキン人気の高まりに乗じて急速に拡大していきました。

国際展開:次のフロンティア

 チックフィレイが米国を席巻している一方で、海外での存在感は薄く、競合他社に後れを取っているのが現状です。しかし、同社は25年までに英国に初の常設店舗をオープンする予定です。さらに、海外事業に1億ドル以上を投資しています。同社は26年までにアジア進出することを目指しており、30年までに海外に5店舗を展開する計画です。

今後の課題

 圧倒的な成功の裏で、チックフィレイはいくつかの課題に直面しています。
――保守的な価値観と過去の反LGBTQ団体への寄付行為に批判
――レッドオーシャン化するチキンファストフード市場
 近年、競合他社であるポパイズや Wingstop、Raising Cane’sなどのブランドが急速に拡大しています。チックフィレイは大幅なリードを維持していますが、ライバルに打ち勝ち続けるためには、常に革新的なメニュー開発を続けなければなりません。

米国で主要なチキンファストフードチェーン

 

Profile 藤田一郎
 上智大学国際学部および南カリフォルニア大学国際学部出身。1980年にI. Fujita International, Inc.を設立。1986年から米国フランチャイズ案件の日本導入事業に着手。2000年以降から日本フランチャイズ案件の米国導入事業及び加盟店開発を行う。米国のアントプレナー誌からExcellent Entrepreneur Awardも受賞。最も米国フランチャイズ事情に精通している人物として認められ、近年は、フランチャイズのグローバル化に貢献し、多方面で講演を実施。日本フランチャイズ及び小売企業の北米進出サポートやコンサルテイングを行っている。

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