小規模事業者中心に掲載数2000件以上/トランビ

サブスクモデル導入し経営サポートを強化



トランビ

東京都港区

高橋聡社長



2011年にスタートしたM&Aプラットフォーム「TRANBI(トランビ)」は現在、国内外2000件以上の案件から探すことができるサイトだ。小規模事業者に特化しているのが特徴で、居酒屋や美容室などの個人事業者も多い。同サイトは10年目の節目となる今夏、ビジネスモデルを大きく転換。これまでの収益モデル「買い手から成約時3%徴収」をサブスクリプションに切り替えたのだ。同様のサイトは国内に200以上あるといわれているが、同サイトを運営するトランビ(東京都港区)の高橋聡社長は、M&Aに限らないサービス提供に舵を切った。


高橋聡社長

PROFILEたかはし・そう

1977年4月26日生まれ。長野県長野市出身。米デポール大学情報システム学科を卒業後、アクセンチュアを経てアスク工業を先代から事業承継。中小企業におけるM&A活性化の必要性を痛感しトランビを創業。現在、アスク工業代表取締役社長兼任。中小企業庁中小M&Aガイドライン作成委員。



 

買い手側は月額3980円から専門知識学ぶ

イーラーニング提供


同サイトは現在、会員数約8万7000社。事業規模のコア層は年商3000〜5000万円で、成約時の売買額は1000〜2000万円が中心。億単位で成約が成立するケースもあれば、30万円というケースもあるという。平均成約期間は3カ月間。同サイトでは2011年のサービス開始以来、実績が高まってきたことから、今回、大きくビジネスモデルを転換させた。


今回変更したのは、買い手側の企業・個人に対して、月額費用を徴収すること。売り手は無料で会員登録するだけだが、買い手は有料会員として、月額3980円から同1万9800円の3パターンを用意、その代わり成約時の3%は撤廃した。今回の変更は、M&Aだけのプラットフォーマーからの脱却を図ったもので、M&A以外のコンテンツを充実させることに主眼を置いている。例えば「TRANBIコネクト」は、人材採用のマッチングサービスで、「TRANBIイーラーニング」は、M&Aに関する専門知識を学べるセミナーや、専門家からのアドバイスなどをオンラインで提供する。

高橋聡社長によれば、転換の理由は2つあるという。「1つは、本来は中小企業の経営は時代に柔軟に変えていかなくていけないはずです。地方の中小企業の意識はまだそこまで行っていない、との思いからでした」もともとトランビは中小企業が集まって、経営の変革ができる場として位置付けていたという。その最たるものがM&Aだった。「会社を売る、買うは選択肢の一つにしかならない。基本は企業をもっとよくしていこうという考えが土台にあった」(高橋社長)という。2点目は、10年間プラットフォームを運営してきて、中小企業が成長できない理由は経営者の経営力の不足に尽きる、と考えたこと。「経営とは総合格闘技です。マーケティング・人事・会計などありとあらゆる専門知識が必要です。にもかかわらず、充分な勉強をしないで経営者になった人も多い。一方で経営を学ぶ場も少ない。当プラットフォームには、個人事業主なども入っていますが、経営力に乏しい人が多い。こういう人たちがM&Aをやると、買ったときにリスクが発生する。そこで支援するコンテンツを提供しよう、という訳です」(高橋社長)サブスクリプションにすることで、単にM&Aをするだけでなくて、経営力を磨く場にしていこうというのが同サイトの新たな取り組みだ。


自身の事業承継の経験が契機

中小企業の経営資源を生かす


高橋社長の考えは、自身の事業承継の経験がもとにある。高橋社長は大学卒業後、コンサルティング会社に従事し、約15年前にアスク工業という家業の製造会社を継いだ。当時経営の現場では、取引先が次々と廃業していたという。「当社の周りでは、300社ほどあった取引先が毎年3〜5社廃業していました。当社は私が跡取りでいたので良かったのですが、多くの企業は跡取りがおらず、取引先企業は、いつ周りが廃業してしまうかと戦々恐々としていました。メーカーにとって、部品一個なくなっても物は作れません。会社が廃業するたびに毎回移管先を探すのは大変でした」。


一方、同社では経営の多角化を進めており、高橋社長は新事業をゼロから立ち上げるよりは、もともとあった経営資源を活用できないかと考えていた。そこで興味を持ったのがM&Aだった。世の中は中小企業がほとんどなのに、当時は中小企業をターゲットにしている会社はなかった。そこで考え出されたのが「トランビ」というプラットフォームだった。2011年にアスク工業の一部門として立ち上げた。「悩んだのは個人事業主を入れるかどうか。しかしここを入れないと日本のM&Aが活性化されないのではないか。居酒屋・美容室・学習塾等こういう人たちが売買できる環境を作りたいとの思いから、幅広い層をターゲットにしました」(高橋社長)。当初は無料で開放していたため、サイトは5年間鳴かず飛ばずだったが、金融機関との提携で信用力が増したことで掲載企業も増え、徐々に成約事例が増えてきた。


「この5年間で、事業承継問題に関わる意識が高まってくるなど、潮目が変わってきた。2016年にユーザー数が3000社になり、活発に使われるようになりました」。実績が高まったことで、晴れて会社を分割して株式会社トランビを設立したのだった。


アメリカよりも10年遅れの日本

マーケットは拡大傾向に


同社に限らずマッチングサイトは、コロナ禍でマーケットの環境が変わり、買い手が増加。中でも新規事業や多角化のためのM&Aが増えてきたという。「新しい分野に進出したい会社が多くなった。以前は平均1社あたり買い手候補は14社だったが、16社ほどになった」。個人の買い手も30%と高くなっている。「もともと一定層独立志望者がいたのですが、コロナ禍で生活スタイルが変わってきた影響もあるのか、個人が目立つようになりました。実際、事業をゼロから立ち上げるより、設備、人材、顧客など全て整っているM&Aは魅力がある。こうした傾向は今後も増えてくるのではないでしょうか」(高橋社長)。今後の課題は、増える個人に対しての審査基準の厳格化だ。「ユーザーが増えると怪しい人も増える。一方でM&Aを啓蒙していかなくてはならないので、バランスをとらなくてはならない。徐々に質を高める取り組みを行っています」(高橋社長)。


会員向けの経営改善プラットフォームへのコンテンツの拡充も急務だ。M&Aプラットフォームは現在、それぞれが個性を打ち出している。「プラットフォームは買い手、売り手が自由に申し込んでくるため、全然違う地域、違う業種からのアプローチがある。M&Aで重要なのはシナジーですが、全く違う業種とのケミストリーが起こりうる。まだまだプラットフォームの可能性は広がっていくと可能性は広がっていくと期待しています」(高橋社長)


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