洋菓子メーカーがつくった食パン専門店/高級食パン専門店嵜本

ロードサイドでカフェ併設店の出店に注力


ドロキア・オラシイタ

大阪市西区

嵜本将光社長(41)



─ドロキア・オラシイタ─一度聞いたら忘れられない印象的な社名は、「あたらしい驚き」のアナグラムから考え出されたという。焼きたてのチーズタルト専門店「PABLO」をはじめ、人々にサプライズを届けることを目指して、さまざまな業態を開発。最近では高級食パンの専門店「嵜本」が大きな話題となっている。嵜本将光社長に話を聞いた。


嵜本将光社長(41)

PROFILE◉さきもと・まさみつ

1980年3月生まれ。大阪府堺市出身。2008年、四角いシュークリームで一世を風靡したパティスリーブラザーズで洋菓子業界に進出。2004年、ドロキア・オラシイタを設立し、焼きたてチーズタルト専門店「PABLO」を発表。2017年、新事業として高級食パン専門店「嵜本」を出店。



人々のライフスタイルに寄り添える業態



―高級食パンの専門店「嵜本」の出店に力を入れているそうですが、御社は「焼き立てチーズタルト専門店PABLO」でも有名です。

嵜本 「PABLO」はもっとも多いときで、フランチャイズ40店舗を含め、国内で60店舗を出店していましたが、コロナ禍を機に事業規模を縮小しました。4月には国内は3店舗になる予定です。海外店舗については、現地のパートナー企業の判断にお任せしています。


―コロナ禍の影響があったとはいえ、本店以外をすべて閉めるのは惜しいような気もします。

嵜本 そもそもスイーツは利用頻度がそれほど高くない業態です。「PABLO」を見ても、会員の方ですら利用は月に一度くらい。流行り廃りも激しく、どんなに売れていても、ブームの終焉はいつか必ずやってきます。「PABLO」もそろそろそういう時期に差し掛かってきたなと感じていた矢先、新型コロナウイルスが流行り出したため、思い切って事業を縮小することにしました。本店はコロナ前まで月に2000万円くらいの売上がありましたから、みなさんとても驚かれます。


―今後は「嵜本」を中心に事業展開を進めていくことになるわけですが、なぜスイーツの次に、食パンに目をつけたのでしょうか。

嵜本 前提として、もっと人のライフスタイルに寄り添えるブランドを作りたいという想いがありました。それで行き着いたのが、日常的に利用されるベーカリーの業態でした。ただ、普通にベーカリーショップを始めても面白くないですし、人々に驚きや感動を与えることもできません。ちょうど食パンがブームになりそうな気配があったこともあり、高級食パンを看板商品にした業態「嵜本」を作りました。


―「嵜本」の商品はどこに強みや特徴があるのでしょうか。

嵜本 他の専門店との一番の違いは、洋菓子屋が作っているところにあります。洋菓子作りは見た目以上に難しく、製造工程の管理や品質の維持などがとても大変です。そんな中で我々はチーズタルトをはじめ、過去にヒット商品をいくつも生み出してきました。その経験は、食パンにも存分に生かされています。だから商品のクオリティに関しては、どこも相手にならないと思っています。水分量も普通の食パンの1・4倍くらいあるため、美味しさが長持ちします。


―パンの中でもっとも日常的なイメージが強い食パンだからこそ、他が真似できないものが完成するまでに相当の苦労があったのではないでしょうか。

嵜本 納得のできるものができるまでに丸々2年かかりました。はっきり言って、もうこれ以上のものはできないと思っています。実は、小麦や乳製品の価格が高騰している影響で、今年に入ってから一部の商品を値上げしたのですが、その際にお客様の納得を得やすいようにと、材料やレシピの変更を検討しました。でも、やればやるほど美味しくなくなってしまたため、結局、レシピは変えませんでした。それくらい、よくできているということです。



洋菓子作りのノウハウが詰め込まれた嵜本


製造拠点を軸に販売店を増やす戦略を推奨



―フランチャイズによる出店にも力を入れています。

嵜本 現時点で31店舗(なんばベーカリー、嵜本珈琲焙煎所除く)あるうちの22店舗がフランチャイズ店です。当面の目標は、全都道府県に出店することです。


―ベーカリーはパンを焼くための設備が必要なため、出店には高額な投資が必要なイメージがあります。

嵜本 出店にはいくつかのパターンがあります。まずは食パンの製造拠点となる「工房付き店舗」を作ってもらうのですが、初期投資は物件取得費を除いて約3500万円になります。これには200万円の加盟金や内外装工事費などが含まれています。食パン専門店としては投資額はやや大きめかもしれませんが、〝高級〞と謳っている以上、安っぽい事務所のような店舗で売るわけにはいきません。そんなことをしたら、せっかくの商品の魅力が半減してしまいますので、店舗の内外装にはかなりこだわっています。


―「物販店舗」は、どんな内容の出店プランなのでしょうか。

嵜本 その名の通り商品の販売に特化した店舗です。工房付き店舗を生産拠点にして、その周辺にサテライト的に出店していくイメージです。あくまでも工房付き店舗を出店した上で加盟できるプランとなっています。製造設備がない分、投資額はかなり下がり、物件取得費を除いて800万円前後で出店することができます。物販店舗作ることで、工房の製造効率が上がっていくため、結果的に事業全体の収益性が飛躍的にアップします。我々としては最低でも1、2店舗は出店してもらいたいと考えています。


―食パンに特化すると、惣菜パンや菓子パンなどを販売している総合的なベーカリーに比べ、客単価が低くなる気がします。

嵜本 うちの場合は1300円前後です。これは食パン専門店としてはかなり高いはずです。他店ではおそらく、1000円もいっていないのではないでしょうか。


―なぜ、他の専門店よりも客単価が高いのでしょうか。

嵜本 食パンにもいろいろバリエーションがあります。定番商品の「極美〝ナチュラル〞食パン」と「極生〝北海道ミルクバター〞食パン」に加え、餡やメープルを練り込んだもの、さらに季節限定の食パンなども販売しています。他に手作りジャムやラスクなども置いています。│かなり若い世代を意識した商品展開をされている印象を受けます。嵜本若い方にも食べてもらうためのブランド作りをしています。例えば、バレンタインやホワイトデー用の食パンも作っています。しかも、チョコの代わりにプレゼントしやすいように、業界で初めて、1枚単位でパッケージして販売しています。これは非常に好評で、シーズンには1人で10枚、20枚まとめて買っていくお客様がたくさんいます。


―カフェを併設した店舗の展開にも力を入れています。

嵜本 宮崎県にあるFC店が一番理想に近いスタイルで、30台停められる駐車場はいつもいっぱいです。コーヒーを飲みながらパンの食事を楽しむ方もいれば、コーヒーだけ飲んで、帰りに食パンを買って帰る方もいます。従来の工房付き店舗よりもさらに大きな建物や敷地が必要になるため、投資額は大きくなりますが、食パンの方でも売上が上がる分、よくある郊外型カフェよりも、収益性は高いです。他にドライブスルーの仕組みを採り入れた店舗も増やしていきたいです。

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