旧態依然の体質からの脱却に成功/名畑


飲食店総合支援会社に変貌した業務用酒類卸業者外食業界で存在感を高めている「名畑」という会社をご存知だろうか。大阪に本社を置く同社は1936年に創業。長らく業務用酒類卸を生業としてきたが、後に三代目社長に就任する名畑豊氏が大改革を敢行。取り扱う商材を酒類以外にも広げ、飲食店を総合的に支援する会社へと変貌を遂げた。名畑社長を取材した。


名畑 豊社長社長(59)

名畑 豊社長社長(59)

プロフィール◉なばた・ゆたか1962年月日生まれ。大阪府豊中市出身。大阪大学経済学部卒業後、サントリーに入社。6年後、家業の名畑に戻り、会社の改革に着手。2007年9月、代表取締役に就任。



酒販業界で〝異端児〞と目される存在




――業務用酒類卸業者の新しいモデルづくりに取り組んでおられそうですね。

名畑 弊社は今年で創業86年を迎えました。祖父が創業してから父の代までずっと業務用酒類卸一本でやっていましたが、私が入社したのを機に改革に着手し、酒類だけでなく、食品や消耗品といった、飲食店の運営に必要な他の品目も取り扱うようになりました。ほかに物件探しや、メニューをはじめとする各種営業ツールの作成などもお手伝いしています。また、メーカーから仕入れるだけでなく、自社で商品の企画も行っています。最近だと、飲食店用に開発したコロナ対策商品「いただきマウス」が非常に好評です。商品販売以外では、廃油の買い取りなんてこともやっています。廃油はお店側がお金を払って業者に引き取ってもらうのが一般的ですが、うちはお金を払って飲食店から買い取っているんです。昨年9月時点の数字になりますが、取引先数は飲食関係を中心に8145店舗になります。酒類だけしか扱っていなかった時代は、取引先に感謝されることはほとんどありませんでしたが、今は良い意味で使い勝手が良いので重宝してくれるところが多いです。関係性は180度変わりましたね。


――取引先は個店とチェーン店、どちらが多いのでしょうか。

名畑 大まかに全体の3割くらいが全国チェーンで、あとは地元密着でやっている中小チェーンや個店です。正確な数は把握していませんが、フランチャイズをやっているところもかなりあります。どこを意識的に増やそうというのはないのですが、数店から10店舗前後の規模でやっているような地場のチェーンの方が、我々は強みを発揮できます。逆に大手の全国チェーンはすでに仕組みがしっかりでき上がってしまっているため、我々がお手伝いできることはあまりありません。


――業務用酒類卸業界の中で、御社のように飲食店を総合的に支援しようという会社は増えているのでしょうか。

名畑 全国でも数えるほどしかありません。当社のように会社の理念にまで書いて取り組んでいるところは、おそらくほとんどないのではないでしょうか。少なくとも、関西では我々だけだと思います。


――業界では〝異端児〞のような存在なのですね。

名畑 そうですね(笑)。みんな儲かっていた時代の成功体験が忘れられないのだと思います。だから新しいことにもチャレンジしたがらない。以前は同業者に「一緒にやらないか」と声をかけたこともありました。例えば、我々は毎日取引先に商品を届けている関係上、「何がどれだけ売れたか」「どんな層に売れたか」といった生の情報をたくさん持っていて、メーカーに提供しています。これは大きな強みです。だからもっとこうした強みを活かして、単にお酒を売るだけの会社から脱皮しようと。しかし、誰も共感してくれませんでした。お酒だけ売って儲るのであれば、その方が楽ですからね。



――他の業界と比べて遅れている印象を受けます。

名畑 実際そうだと思います。だから最近は若者がどんどん減っています。今、酒屋で働きたいっていう若者はなかなかいませんよね。結構、大変な仕事ですし、労働時間が長い割に給料も安い。しかも取引先に求められるのはスピードと安さばかり。仕事にやり甲斐や喜びを見つけるのが本当に大変です。このままだと、いずれ本当に働き手がいなくなってしまうかもしれない。だから我々はそうなる前に、この業界をもっと魅力的なものに変えていこうと、いろいろと新しいことにチャレンジしているんです。おかげ様で、当社に関しては若い従業員がどんどん増えています。あまり大きな声では言えませんが、他社から転職してくる方もいます。我々を見て、真似る会社が1社でも2社でも出てくれば、業界全体の底上げにもつながると思います。



サントリー時代に飲食店の苦労を経験



――そもそも、名畑社長がこうしたことを考えるようになったきっかけは何だったのでしょうか。

名畑 私は大学卒業後、すぐにこの会社に入らずに、6年間サントリーでお世話になりました。入社から5年間は飲食店を回ってサントリーの商品を提案する営業の仕事に従事していたのですが、最後の1年だけ、自ら希望して業態開発をする部署で働かせてもらいました。そこで営業とは逆の立場の、飲食店側の仕事をさせてもらったのですが、これがとても大きかったですね。開業準備は本当に大変で、やらなければならないことが山のようにあります。市場調査や物件探しに始まり、仕入れ業者の選定、原価計算、広告宣伝等々、それこそ猫の手を借りたくなるほど忙しい。でもそんな中でも「これ買ってください」「今度、この商品が出ます」というメーカーの営業にも対応しなければなりません。伝票を整理するだけでもものすごい時間がかかります。実際にやってみて、私はパンク寸前になりました。でも、そのとき気付いたんです。「この煩わしさこそ、飲食店が本当に困っていることなんじゃないか」「この無駄をなくしてあげれば、飲食店は心の底から喜んでくれるんじゃないか」と。

名畑でやるべきことを見つけた瞬間でしたね


(後半につづく)



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