フランチャイズ45周年を迎えた老舗居酒屋チェーン/八剣伝、酔虎伝、居心伝、他

更新日:3月22日

焼きそばや餃子をメーンにした食事業態にも注力



マルシェ

大阪市阿倍野区

加藤洋嗣社長(48)


フランチャイズ業歴45周年を迎えたマルシェ(大阪市阿倍野区)。「八剣伝」「酔虎伝」などの居酒屋業態を主軸にしながらも、近年は食事を主体にした業態の展開にも乗り出し、新たな事業モデルの構築に取り組んでいる。老舗企業の今後の事業戦略について話を聞いた。

(ビジネスチャンス2022年4月号「トップインタビュー」より)


加藤洋嗣社長(48)

PROFILE かとう・ひろつぐ

1973年9月生まれ。大阪市出身。大阪商大商経卒。1996年、マルシェ入社。2011年に関西八剣伝統括次長。2014年、執行役員西日本営業本部関西八剣伝統括部長就任。同年、執行役員社長就任。2015年、代表取締役執行役員(関西八剣伝事業部長)就任。同年、代表取締役社長執行役員就任。2015年より現職(代表取締役)。

 

八剣伝1号店の緑橋店


店舗の一角を利用したテイクアウト焼鳥が好調



――居酒屋業界を取り巻く環境が厳しさを増しています。

加藤 昨年末に発表した第50期第2四半期決算における売上高は、前年同期比56・4%減の約8億4200万円と、非常に苦しい結果となりました。この2年はコロナ禍の影響で休業や時短営業などが相次ぎ、思うような業績を上げることができていません。もちろん、我々もただ手をこまねいているわけではありません。状況を改善すべく、現在、さまざまな施策に取り組んでいるところです。


――最も多いときで、全ブランドの合計店舗数が約500店舗ありました。

加藤 店舗数は以前よりも少し減りました。2021年12月現在は全体で353店舗になります。このうち直営は105店舗で、残りはフランチャイズ加盟店になります。ブランド別では「八剣伝」が一番多く、218店舗。これに10店舗の「酔虎伝」、6店舗の「居心伝」などが続きます。


――居酒屋チェーンでは、ワタミグループが行っている焼肉店への業態転換が大きな話題となっています。

加藤 我々は居酒屋で50年以上やってきました。フランチャイズについても今年で45周年を迎えました。多くの加盟店様もおりますので、今さらこの業態をやめることはまったく考えていません。まだまだできることはたくさんあると考えています。


――居酒屋業態の収益力を高めるために、どのような取り組みをされているのでしょうか。加藤 コロナ前まで、外食市場はずっと緩やかな成長を続けてきました。とりわけ好調だったのが中食で、120%以上の伸び率がありました。我々もここに何とかしてアプローチしようと、実は以前から新しいビジネスモデルの構築に取り組んでいました。「八剣伝」の店舗の一角を利用した焼鳥のテイクアウト専門コーナー「街の焼鳥屋さん」が、それです。



――中食へのアプローチに焼鳥を選んだのはなぜでしょうか。

加藤 前提として、できるだけお金をかけずに、店舗の売上を最大化するというコンセプトがありました。そうなると当然、今あるリソースを活かすことになるわけですが、そこで注目したのが、八剣伝の焼鳥でした。国産の鶏肉を使った八剣伝の焼鳥は非常に評判が良く、タレやマヨネーズも化学調味料を使っていないため、消費者に訴求しやすいと思いました。厨房も既存のものをそのまま利用できるので、販売するための場所さえ作ればすぐに始めることができます。とにかくやってみようということで、2020年1月に、本社の近くにある直営店の一角に約150万円かけてスペースを設け、テイクアウト販売を始めました。これが予想以上に好評で、オープンからしばらくは1日約2000本売れました。1本あたり税込100円から140円なので、売上にすると万円ちょっとです。しばらくして落ち着いてからも平均500本は売れています。もちろん、立地によって売上は変わりますが、最低でも月商万円くらいは見込めます。サイドビジネスとしては十分優秀です。


――持ち帰りコーナーを設けたことで、八剣伝を利用したことがない方の集客効果も見込めそうです。

加藤 実際、「テイクアウトで試してみたら美味しかったから今度は店舗の方に来てみた」というお客様もたくさんいらっしゃいます。現状、非常に良い循環が生まれているなと感じています。国産鶏に無添加のタレで、安心してお子さんにも食べさせられますので、主婦の方が買って帰るケースも非常に多いです。


――現在、「街の焼鳥屋さん」のコーナーを設けている八剣伝の店舗はどのくらいあるのでしょうか。

加藤 フランチャイズ店も含めて44店舗です。今も毎月にように増えています。大阪や静岡のロードサイド、東京の下町など、いろいろな場所の店舗を視察にいきましたが、テイクアウトコーナーを併設した店舗はどこも、一定の成果が上がっています。


――「酔虎伝」「居心伝」といった他の居酒屋業態については、今後どうしていくのでしょうか。

加藤 「酔虎伝」については、もともと宴会需要が多い業態だったこともあり、コロナ禍の打撃が非常に大きく、断腸の思いではありましたが、大型店約30店舗を閉店しました。今後は小型店および中型店を中心に展開していきます。「居心伝」についても繁華街を中心に展開していたため、似たような状況です。



今ある強みを活かし新業態を開発



――居酒屋業態を主力としながらも、最近は「焼きそばセンター」や「餃子食堂マルケン」といった食事をメーンにした業態の展開にも力を入れておられます。

加藤 企業としてのリスク分散の意味合いで、アルコール業態以外のものも、少しずつではありますが増やしています。今は良くても、10年先、20年先を考えた場合、やはりアルコール一本では厳しい。少子高齢化や若者のアルコール離れなどを踏まえた事業展開がどうしても必要になります。


――新しい業態を作る上で、何か共通のコンセプトのようなものはあるのでしょうか。

加藤 まずは出店場所ですが、基本的には中心となる駅から2、3駅離れた、乗降客が1万から2万人くらいの場所を想定しています。もちろん、商品の品質にもこだわっています。先程の国産の焼鳥や無化調の話もそうですが、新たに商品を導入する際は必ず現地まで足を運び、生産者と直接、会うようにしています。あとは、できるだけ今ある強み活かすようにしています。例えば「焼きそばセンター」は、「酔虎伝」の創業当時からの人気メニューである焼きそばに着想を得て開発しました。もちろん、そのままというわけにはいかないので、茹で麺と生麺のどちらが良いのか、ソースはどうか、鉄板はどうかなど、いろいろな試行錯誤を繰り返しました。結局、業態としてしっかり固まるまでに約1年かかりました。


「餃子食堂マルケン」も似たような流れです。「酔虎伝」や「居心伝」で出していた餃子が以前から好評でよく出ていたため、「これを目玉にした業態を作ろう」ということになりました。焼鳥の売上が伸びず苦しんでいた店舗で売ってみたところ、非常にうまくいきました。やったことのないものを一から作るのは非常にやりがいがありますが、反面、時間もコストもかかりますし、そもそもうまくいくかも分かりません。それよりも、もともとあるノウハウをベースにして業態を作った方が、確実性があります。加盟店様に説明する際も、例えばいきなりやったことのない「うどん屋さんをやりましょう」よりは、「焼鳥の美味しさをもっと広めるためにテイクアウトコーナーを作りましょう」と提案した方が、納得してもらいやすいです。


――過去には、やってみたけれどうまくいかずに辞めてしまった業態もあるのでしょうか。

加藤 私が社長になる以前に、一人しゃぶしゃぶやラーメン、ドーナツなどの業態に挑戦したことがありました。やはり、まったくノウハウのないことをいきなりやってもなかなかうまくいきません。過去のこうした経験が、今の事業展開に活かされています。


――新たな取り組みとして、昨年、ラーメンのフランチャイズに加盟されました。

加藤 我々が加盟店になった初めてのケースです。「くそオヤジ最後のひとふり」というユニークな名前のラーメンチェーンです。新たなビジネスモデルを模索してみようということで、加盟しました。


――今後も他のブランドを含め、FCに加盟する形でのビジネスを広げていくのでしょうか。

加藤 ラーメン店の売上は順調ですが、現段階ではこの事業をそこまで大きくしようという考えはありません。他のブランドも含めてチャンスがあれば、検討するというレベルです。



女性や高齢者、外国人が活躍できる業態の開発に着手



――フランチャイズを始めてから今年で45年になります。これまでたくさんのオーナーが加盟されてきたと思います。

加藤 我々のチェーンに加盟されている方はほとんどが個人です。もちろん、中には法人化している方もいますが、店舗数は多くても6店舗で、メガフランチャイジーのような規模で多店舗展開されている方はいません。みなさん地元に根差し、地域の方との絆を大事にしながら商売をされています。


――大型店も割と多いイメージがあったので、法人オーナーがほとんどいないというのは少し意外な気もします。

加藤 実は、「街の焼鳥屋さん」をはじめ、できるだけ少ない投資でできる業態を作っているのは、この辺の事情にも関係しています。資本力のある法人オーナーがたくさんいるのであれば、「この業態はちょっと調子が悪いので、これだけ投資して新しい業態に転換しましょう」という話もしやすいですが、我々のブランドに加盟されている方は個人の方が大半ですから、経営がうまくいっていないときに大きな投資を求めることはできません。我々の役割は、今の仕組みの中でどうすれば売上を最大化できるのかを考える、これに尽きると思います。


――新たな業態も含めたフランチャイズ事業の今後の展開について教えて下さい。

加藤 今後も、FC募集については積極的に行っていきます。コロナ禍で飲食業界が大変な時期であるにもかかわらず、昨年も「八剣伝」で新たな加盟がありました。


――現状、複数のブランドに加盟されているオーナーは少ないようです。

加藤 「八剣伝」に加盟しつつ「餃子食堂マルケン」にも加盟しているといった具合に、弊社の複数のブランドを運営されている方は現時点で9名だけです。繰り返しになりますが、今後はアルコール業態だけに依存せず、食事も含め、バランスを考えて事業を行っていかなければなりません。コロナ禍が落ち着いてから、改めてその辺りの提案もしていこうと思っています。


――新たな業態開発も続けていくのでしょうか。

加藤 投資を1000万円以内に抑えたうえで、高齢者や女性、外国人の方が活躍でき、さらに今ある我々の強みやノウハウをうまく組み合わせる、そんな業態を開発しているところです。今は歳以上でも働く意欲のある方が多いですから、そうした方々にも取り組んでもらえるような、投資回収が2年くらいのビジネスモデルを、できるだけ早い段階で発表したいと思います。

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