【前編】PB商品と低価格のナショナルブランド商品で店舗網を急拡大・1000店舗体制がいよいよ射程圏内/業務スーパー

神戸物産

兵庫県加古川市

沼田 博和 社長(40)


自社工場で製造したオリジナル商品を軸に、さまざまな商品を販売する「業務スーパー」。店舗数は928店舗を数え(6月末時点)、スーパーマーケット市場で際立った存在感を放つ。コロナ禍をものともせずに業績を伸ばし、出店スピードは衰えるどころか、ますます加速化している。沼田博和社長を直撃した。

(※2021年10月号「Top Interview」より)



沼田 博和 社長(40)

Profileぬまた・ひろかず

1980年11月生まれ。兵庫県出身。2005年、京都薬科大学薬学部・大学院卒業後、大正製薬に入社。2009年、神戸物産入社。STB生産部門部門長、取締役を経て、2012年2月、31歳で代表取締役に就任。現在に至る。

タピオカのヒットで若い世代の利用者が急増



高品質と安さで消費者から多くの支持を得ている「業務スーパー」。特にPB(プライベートブランド)商品の充実ぶりには目を見張るものがあり、タピオカやチーズケーキといったヒット商品を次々に生み出している。



――2020年10月期決算は、新型コロナウイルスの流行下にあったにもかかわらず、売上高約3408億円、営業利益約238億円と、前年度を上回る業績を上げました。


沼田 基本的な衛生管理や感染防止対策については各店で徹底するようにと、本部としてもかなり力を入れてアナウンスしましたが、戦略的な部分に関しては、コロナ禍だからといって何か特別なことをしたわけではありません。業績が伸びたのは、軽減税率の導入やコロナで人々の生活スタイルや買い物の仕方が変わったことに加え、この2年半ほどで、我々のオリジナルのPB商品の魅力が、メディアやSNSを介して一気に一般消費者に広まった影響が大きかったと分析しています。


――「業務スーパー」といえば、メーカー商品の安さとPB商品の充実ぶりが特徴的です。PB商品については、いつ頃から力を入れているのでしょうか。


沼田 チェーン展開を始めた当初から取り組んでいます。初期の頃はPB商品の大半は中国からの輸入などに頼っていましたが、現在は国内の生産体制が整っていることもあり、製造についてはそのほとんどをある国内工場で行っています。


――現在では多くの小売チェーンがPB商品を取り扱うようになったこともあり、抵抗感があるという方は非常に少なくなりました。しかし、 御社がPBを取り扱い始めた当時は、 今とは違った反応もあったかと思います。


沼田 当時は今よりもメーカー志向の方が多かったこともあり、分かる人には分かる、そんな反応だったと思います。「独自商品はあるけれど、中国のものが多いよね」という印象を抱いておられた方が多かったのではないでしょうか。


――PB商品といえば、最近ではタピオカのヒットが特に印象的です。「業務スーパー」の認知度を飛躍的に上げるきっかけにもなりました。


沼田 若い層のお客様が来てくれるようになりましたし、ヨーロッパをはじめとする諸外国の商品がよく売れるようにもなりました。SNSに敏感な若い方の利用が増えたことで、 twitterやInstagram などに取り上げられ、在庫切れになってしまう商品も増えました。


――今では毎日のように、さまざまなメディアで「業務スーパー」のPB商品が取り上げられています。


沼田 メディアの影響力は本当に大きいと感じています。以前、「業務スーパー」の認知度に関するアンケートを行ったことがあります。「知っている」と回答してくれた方が全体の9割もいたので非常に良い結果になったと思いきや、その中で「利用したことがある」と答えた方は半数しかいませんでした。我々はこの結果を踏まえ、「業務スーパーを知っているけれど足を運んだことがないという方に、いかにして足を向けてもらうか」、そして「実際に体験してもらった後に、顧客として定着させる」という2点を課題にして、努力を続けてきました。もちろん、それはそれで一定の成果はあったのですが、SNSはわずか2年半足らずで、我々が9年かけて取り組んできた以上のことをやってのけてしまいました。



コロナ禍を追い風に業績を伸ばす「業務スーパー」

――商品をPB化するかどうかの判断は、どのような基準で行われているのでしょうか。


沼田 商品は大きく、「国内で自分達で作った方が良いもの」「国内で調達した方が良いもの」「輸入してきた方が良いもの」という3タイプに分けることができます。例えば缶の飲料 水のように、製造に多額の設備投資が必要な商品は、今のうちの規模であれば、自分達で作るよりも、メーカーから仕入れた方が良いという判断になります。逆に、大がかりな装置を必要としない商品については自社工場化するメリットが大きいので積極的にPB化しています。もちろん、現段階でPB化していない商品であっても、将来的に我々の店舗がもっと増え、販売力が強くなった段階で自社製造に切り替える可能性はあります。そこは状況を見ながら、流動的に判断していくことになります。


――海外は日本と比べて人件費が安いので、商品を安く製造できるというイメージがあります。

沼田 製造だけ安くできても、輸送コストが加わることで結果的に高くついてしまうこともあります。今は、トータルで考えれば国内で製造した方が、メリットが大きいと考えています。


理想形はアメリカスーパー大手

トレーダージョーズ


――最近はPB商品のイメージが強くなっている「業務スーパー」ですが、実際に1店舗で取り扱うPBとナショナルブランドの比率はどのようになっているのでしょうか。


沼田 現在は3分の1くらいがPB商品になっています。以前はPB3に対してナショナルブランドが7でしたから、少しずつPBの占める割合が増えてきています。


――今後、どこまでPB商品の割合を増やそうと考えていますか。


沼田 増やせるところまで増やしたいという気持ちはあります。例えば販売商品の8割がPBの、アメリカの「トレーダージョーズ」のようになれればいいですね。あれはまさに理想形だと思います。ただ、日本の消費者はナショナルブランドに対するこだわりも強いですから、あまりPBばかりを増やし過ぎると、お店として成り立たなくなってしまうのではないかという心配もあります。 どこまでできるかは、お客様の満足度を最大化するということを大前提に、バランスを見極めながらということになります。


――PB商品だけでなく、メーカー品が安く買えることも、消費者に支持されています。低価格を実現するためにどんな工夫をしているのでしょうか。


沼田 ナショナルブランドの仕入れは、単品大量で買い付けるということを徹底しています。一般のスーパーはさまざまな顧客ニーズを満たすために、ナンバーワンブランドを中心に、何種類もの商品を置くのが普通ですが、このやり方だと場所を取りますし、商品1つ1つの仕入れコストも高くついてしまいます。そこでうちではあえて種類を絞っています。例えば醤油のナンバーワンブランドといえば、キッコーマンの濃口醤油1ℓサイズですが、「業務スーパー」ではこれは置いていません。ナンバーワンブランドでなくてもよく売れて、かつ安く仕入れられる商品が他にあるからです。

 

 また、これは 販売管理費の削減にもつながっています。扱う商品数が1000点と1万点では、管理にかかる手間暇は大きく変わります。我々はアイテム数を極限まで絞っているため、少ない人数で商品を管理することができ、 また、陳列も短時間で終わらせることができます。什器や陳列方法もいろいろな工夫をしているため、人数をかけずに店舗の運営ができるわけです。


 業界では販管費は25〜30%が平均だと言われていますが、うちは14%台が基本モデルになっています。他店のように生鮮産品を扱ったりベーカリーを併設したり、あるいはサービスカウンターなどを設けていな いことも、少人数での店舗運営を可能にしているポイントです。我々のFC加盟店の中にも生鮮産品などを扱っている店舗はありますが、それでも販管費は他店より低いはずです。 自社のコストにしたくないという加盟店は、他の販売店に店舗の一角をテナント貸ししています。


――以前の取材では、商品数は登録ベースで3000〜4000種類あり、そのうち実際に店頭には2000〜3000種類のアイテムが並んでいるとお話しされていました。


沼田 今はもっと増えていて、登録ベースで5000以上あります。何が増えたのかというと、主にはアルコール商品です。もともと、アルコール商品については加盟店任せにしていて本部では扱っていなかったのですが、3年ほど前に取り扱いを始めました。本部主導に切り替えたことで、国内の商品はもちろん、ワインやウイスキーといった海外の商品も仕入れやすくなりました。他に資材類の取り扱いも増えています。


――酒屋が加盟しているケースが多いと伺いましたが、仕入れの部分でバッティングするということはないのでしょうか。


沼田 本部がアルコール商品を取り扱うようになったのは、お酒を販売している加盟店が競合店と戦えないようになっていたという事情があります。加盟店単独では、メーカーから大量仕入れができる大手には到底太刀打ちできません。おっしゃるように、酒屋がルーツの加盟店は多いですが、一部を除き、ほとんどは競合に勝てる売り場になっていませんでした。そこで大手並みかそれ以上の条件を引き出すために、本部が加盟店の分をまとめて仕入れるようにしたのです。



PB商品からは次々にヒット商品が生まれている(画像は大人気の「リッチチーズケーキ」)



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