FCで従来型の百貨店のビジネスモデルからの脱却目指す/近鉄百貨店

目標は2024年度に業種70店舗150億円



近鉄百貨店

大阪市阿倍野区

営業政策本部FC事業部

奥野浩之部長(54)



市場規模の縮小が止まらない百貨店業界。その中にあって、従来のビジネスモデルの改革に乗り出し、フランチャイズ事業に着手したのが近鉄百貨店(大阪市阿倍野区)だ。

2024年度150億円を目標に多彩なブランドを展開、その動きは他の百貨店からも注目されているという。事業の陣頭指揮を執る営業政策本部FC事業部の奥野浩之部長に話を聞いた。

(ビジネスチャンス2022年2月号「メガフランチャイジーの経営哲学」より)


奥野浩之部長(54)

Profile◉おくの・ひろゆき

1991年入社。近鉄百貨店奈良店・婦人用品売場、販売推進担当などを経て、MD統括本部・婦人靴担当バイヤーに就任。その後、本店・婦人用品売場を経て、FC事業を担当するセクションに配属。現在、営業政策本部FC事業部部長。



 

「ファミリーマート」を皮切りに現在14業種に加盟



―「成城石井」や「ファミリーマート」、「東急ハンズ」、「ビアードパパの作り立て工房」など、さまざまなフランチャイズブランドに加盟されています。

奥野 現在、フランチャイズ14業種で42店舗を運営しています。今、挙がったもの以外にも、「タリーズコーヒー」や「オンデーズ」、「ABCクッキングスタジオ」などに加盟しています。11月には、下着やルームウェアなどを販売する「チュチュアンナ」の新店を近鉄百貨店名古屋店内にオープンしました。


―百貨店が自ら主体となってフランチャイズ店舗を運営するというのは、これまでにない取り組みなのではないでしょうか。

奥野 そうですね。ご存知の通り、百貨店のマーケットは都心・郊外に限らず、厳しい状態にあり、市場規模は縮小し続けています。この状況を打開するためには、従来型のビジネスモデルを脱却し、収益構造を変えていく必要があります。我々はその選択肢の一つとしてフランチャイズビジネスに目をつけました。全社的な取り組みとして、中期経営計画にも盛り込んでいます。


―資料を拝見すると取り組みがスタートしたのは2015年です。

奥野 最初は「ファミリーマート」を出店しました。この時点では専門的な部署はまだありませんでしたが、翌年にFC事業を統括する部門が発足しました。そこから他のブランドにも裾野を広げていき、現在の体制になりました。


―いずれこの事業を大きな収益の柱に成長させていくとのことですが、現時点での全体に占める売上は。

奥野 百貨店の個別売上高1970億円の5%程度になります。全体からすればまだまだですが、まずは2024年度までに、20業種70店舗で150億円という目標を掲げています。


―さまざまな業種のフランチャイズ店舗を運営されていますが、どんな基準で加盟するブランドを選んでいるのでしょうか。

奥野 FC事業としての収益性はもちろん大切ですが、我々のベースはあくまでも百貨店にあります。そこに来て下さるお客様のことを第一に考え、「お客様に喜んでいただけるもの」「お客様を幸せにできるもの」「今後もニーズを見込めるもの」「今までご利用いただく機会があまりなかったデイリーユースでお客様を呼び込めるもの」を選ぶようにしています。すでに取り扱いがある業種についても、フランチャイズ店の方が利益が上がると判断すれば、入れ替えることもあります。


―百貨店内にフランチャイズ店を入れることで、既存の売り場にも刺激や相乗効果が生まれることが期待されます。

奥野 例えば、郊外店は中層階の服飾フロアが苦戦しているケースが多いのですが、そこに有力ブランドの店舗を出店することでフロア全体の客数を増やす、といったことは常に考えています。またカテゴリーに捉われず、いろいろな組み合わせで従来型の売り場を変えていくことも大切だと思っています。



将来的には本部としての活動も視野



―百貨店としての強みを活かせている部分、逆に百貨店であるがゆえに苦労している部分はありますか。

奥野 一番の強みは接客です。我々はベースとして百貨店の接客マナーを身につけておりますので、アルバイトも含めて、挨拶やお辞儀の仕方など、接客の基本となる部分のレベルはかなり高いと思います。あるFC本部からは、逆に教えて欲しいというお話を頂いたこともあります。あとは百貨店の集客力も強みだと思います。過去の実績から来店客数をある程度は予測できますので、店舗ごとの売上や新規に出店する際の収支計画は立てやすいです。逆に苦労するのは、販売以外の作業を伴う店舗の運営です。百貨店は販売にのみ注力してきた業種ですので、例えば眼鏡のような、検査や製造も必要な業態は未知の領域になります。ただ作るだけでなく、その精度も上げていかなければならないので、その点は苦労しています。


―百貨店のビジネスモデルを変える取り組みをなされているわけですが、業界内でも話題になっているのではないでしょうか。

奥野  東京、あるいは地方に本社を置く百貨店から、話を聞きたいという連絡は何件か頂きました。普通に考えれば、ライバルである同業に、がんばって蓄積したノウハウを教えたりすることはないのでしょうが、冒頭でもお話ししたように、百貨店業界は今苦境に立たされているわけですから、我々としては業界全体を盛り上げていくためにも、可能な範囲でご協力させて頂いております。


―近鉄グループ全体を見渡すと、近鉄リテーリングや近鉄レンタリースなど、他にもフランチャイズ事業に取り組んでおられる企業がいくつかあります。

奥野  今までは人事交流がそれほど盛んではなかったのですが、我々がフランチャイズ事業を始めたことで、情報交換などをするようになったという話は聞いています。今はまだ具体的な話があるわけではないのですが、将来的にはグループで連携して何かしらのメリットを出していければと考えています。


―改めて、フランチャイズ事業の今後の展望についてお聞かせください。

奥野 我々は百貨店のビジネスモデルを変えるためにこの事業に取り組んでいます。先程も申し上げたように、2024年20業種70店舗で150億円という目標がありますので、まずはこれを達成するために、今後も新規ブランドを含めて、出店を続けていきます。また、将来的には、我々自身が本部となってFC展開をすることも視野に入れています。すでに、そのためのブランドとして、台湾のライフスタイルショップ「神農生活」の権利を取得して、日本での展開に着手しています。どこかのタイミングで加盟店を募集していく計画です。

あべのハルカス近鉄本店

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