デリバリー・テイクアウトをベースに高い収益性を実現/アイランドプレートランチザ・アイランドほか

ハワイをコンセプトにした業態を主軸に多ブランドを展開


コロナ禍を機に外食業界で一気に台頭したフードデリバリーとテイクアウトサービス。フランチャイズ展開に乗り出した事業者も多く、今や飲食店にとって欠かすことのできない重要な収益源となっている。今回はフードデリバリー・テイクアウトサービスを中軸にしたさまざまなFCブランドを展開するエムスターダイニング(京都市中京区)の高野夏彦会長を取材した。



エムスターダイニング

京都市中京区

高野 夏彦会長

高野 夏彦会長
Profile◉たかの・なつひこ 複数の外食企業の代表や役員を歴任。国内外で「一風堂」を展開する力の源カンパニー(現力の源ホールディングス)在籍時には、海外事業を統括するシンガポール本社で取締役副社長COOとして既存店の業績改善や新規出店などを手掛け、海外事業における当時の最高利益率達成に貢献した。2020年、エムスターダイニングを設立し、代表取締役会長に就任。


ハワイの魅力を再現するために

現地のローカルフードに注目


――2020年9月の設立ですが、すでにさまざまな業態のフランチャイズを展開されています。

高野 特徴は大きく3つあります。一つはハワイのローカルフードを中心とした業態を展開していること。2つ目はいずれの業態についても、デリバリーとテイクアウトのサービスを軸にしたビジネスモデルを構築していること。そして3つ目は、デリバリーとテイクアウトをベースにすることで内外装費を抑え、結果として少ない初期投資で開業できるようにしていることです。主力ブランドは、ハワイ現地のランチを再現した「アイランドプレートランチ」と、クラシカルな雰囲気が特徴の本格ハワイアンレストラン「ザ・アイランド」の2つで、他の業態はこれらから特定のメニューを独立させる形で作っています。全ブランドの合計店舗数は、5月末時点でフランチャイズを含め8店舗となります。


――なぜハワイをコンセプトにした業態の開発に力を入れているのでしょうか。

高野 単純にハワイが大好きというのが一番の理由です。一度でも行ったことがある方なら分かると思うのですが、向こうは時間の流れが日本とは比べものにならないほどゆっくりしていて、いるだけで開放されたような気分を味わうことができます。精神的にもものすごく落ち着きますし、もちろん食べ物も美味しい。私は過去に、仕事でいろいろな国に行きましたが、同じ海外でもハワイだけは別格だと思っています。その魅力を何とか日本でも再現したいと思い、ハワイをコンセプトにした業態を中心に開発を行っているというわけです。また、ハワイアンで成功しているお店が意外と少なかったことも、このジャンルで勝負しようと思った理由の一つです。




築地の1号店は開店3カ月目に黒字化に成功


――最初の店舗は、2020年10月に築地で出店した「アイランドプレートランチ」です。コロナ禍真っ只中でのオープンには、周りから相当反対の声があったと思います。

高野 仕事関係以外の友人・知人はみんな反対しました。しかし一方で、一緒にこの会社を立ち上げた飯川隆社長や樫英二郎副社長は、私に対して信頼を寄せてくれているので反対はせず、それどころか「あいつならやってくれるだろう」という感じで背中を押してくれました。


――大変な状況の中でのスタートはどうだったのでしょうか。

高野 我々の展開する業態は基本的に、デリバリーとテイクアウトのサービスをベースにビジネスモデルを構築しています。1号店については場所がアパホテルの向かいということもあり、朝の時間帯については宿泊客の朝食需要を取り込み、ランチやディナーの時間帯は地域住民や周辺で働くビジネスマンのデリバリー及びテイクアウトで売上を作るようにしました。具体的には、月商300万円のうち7割がデリバリーとテイクアウトと想定しています。開店直後はコロナ禍でアパホテルの稼働率が低下していたため、朝食需要の取り込みが思ったほどできませんでしたが、一方でデリバリーとテイクアウトは順調に伸びました。「UberEats」や「出前館」などのサービスがフル稼働するようになった3カ月目には、売上目標を達成することができました。以降は一度も赤字になることなく、ずっと黒字が続いています。今年5月には月商350万円を記録しました。


――コロナ禍の影響でテイクアウトとデリバリーの需要が上がっているとはいえ、開店3カ月目での黒字化はかなり優秀だと思います。消費者の支持を獲得できた要因は何だと思いますか。

高野 本格的なハワイ料理を謳いつつも、日本人が食べやすいように味付けをアレンジしたのが良かったのだと思います。


――メニュー開発はどのように行っているのでしょうか。

高野 私が出したアイデアをもとに、料理経験豊富な飯川社長が味の調整などを行っています。もちろん、味付けだけでなく、調理のオペレーションやコスト、見た目にもかなりこだわって作り込んでいます。特に大事なのが分後の味です。デリバリーやテイクアウトのことを考え、冷めても味が落ちずに美味しく食べられるようにいろいろな工夫を凝らしています。



将来が不透明な時代ゆえあえて大きな目標を立てず


――デリバリーやテイクアウトに比重を置いた狙いは。

高野 実は、私はこの会社を立ち上げる前に、外食事業を手掛けるさまざまな企業を対象にした顧問業で独立しました。顧問先では、売上や事業の拡大、収益改善などのお手伝いをしていたのですが、そのうちに新型コロナウィルスの感染拡大が始まり、デリバリーやテイクアウトサービスが注目されるようになりました。実際に「デリバリーやテイクアウトを始めるにはどうしたらいいのか」といった類の相談もかなりありました。それで顧問先のために何か業態を作ろうと考え、先程名前を挙げた旧知の2人の協力を得て、新たにこの会社を立ち上げました。


――現在7業態を展開されています。全体の店舗数に対して業態数が多いように感じますが、最初から1つの業態を伸ばすよりも、いろいろなものを開発しようという考えだったのでしょうか。

高野 そうですね。私は今までいろいろな外食企業を見てきましたが、事業計画通りにできている会社を見たことがありません。もちろん、目標としてそういうものを作ることは大切だと思います。しかし、今のように先がどうなるか分からない時代に、3年先、5年先の計画を作ってもあまり意味がありません。それで当社はあえてそういった計画は立てずに、これだと思ったものをどんどん業態化していくことにしました。「オリジナルポケハウス」という魚介類を使ったハワイのローカルフード専門店は、築地に最初の店舗を出店した1カ月後には完成していました。場当たり的に見えるかもしれませんが、今はこのやり方でいいと思っています。


――今後も、開発する業態はデリバリーとテイクアウトを主体にしたビジネスモデルになるのでしょうか。

高野 基本的にはそうなります。ただ、出店時にモデルをアレンジすることはあります。例えば今年の3月に福岡で出店した「オーシャンシュリンプトラック」は、もともとゴーストの業態として開発したものですが、出店場所が商業施設内だったためイートインを主体にしました。これは当社としては初めてのケースです。手探りで始めてみたものの今のところ非常にうまくいっています。今後も、立地によってはイートインを主体にした店舗にする可能性は十分にあります。


――ハワイをコンセプトにした業態は、現地の良さや魅力を伝えるためだと言われました。手応えはどの程度感じていますか。

高野 やってみて思ったのは、今の若い方は意外とハワイを知らないということです。最初、我々は若い方がたくさん来てくれることを期待していたのですが、実際に開店してみるとそうでもない。むしろ、割と年配の方が来店されるケースの方が多かったくらいです。そうした世代の方は、過去に1度や2度はハワイに行っているんですね。だから、あの良さを味わいたいと、わざわざうちの店を探していらしてくれます。若い方は店舗の知名度が上がってからようやくたくさん来てくれるようになりました。「実際に来たらすごく雰囲気が良い」「食べ物が美味しい」と非常に好評です。



お金を「かけない」「かけさせない」がモットー



――全業態でフランチャイズ募集をされています。これは事業を始めた当初から計画していたことなのでしょうか。

高野 もともとは顧問先の業績改善になればと思って始めたことなので最初はフランチャイズ化についてはまったく考えていませんでした。縁があって大阪の中之島でFC店を出店してみたところうまくいったため、本格的にフランチャイズ展開をすることにしました。もし失敗していたら、フランチャイズ化はなかったと思います。


――高野会長の経歴を拝見すると、フランチャイズビジネスにもかなり深く関わってこられたようですね。

高野 本部としても加盟店としても携わってきました。「一風堂」を展開する力の源ホールディングスに在籍し、海外にあるライセンス店やフランチャイズの店舗を統括していた時期もありました。したがって加盟店に対するフォローについては十分な経験があります。


――冒頭で少ない初期投資での開業が可能だとお話されていました。

高野 基本的には居抜き物件を利用して開業しますので、物件取得にかかる保証金などは別として、店舗の内外装にかかる費用は相当抑えています。例えば築地の「アイランドプレートランチ」は約200万円で開業しました。中之島のポケの専門店は看板の取り替えのみだったので30万円しかかかっていません。


――ハワイの雰囲気を演出するために、内外装にはかなり手をかけていそうなイメージをもっていたのですが、実際はそうではないのですね。

高野 ハワイ現地のお店は手作り感満載ですので、再現するのにお金はかかりません。もちろん、ロケーションによってはしっかり作り込まなければいけないケースも出てくると思いますが、基本的には極力お金を「かけない」「かけさせない」方針でやっています。


――初期投資がそれだけ少ないと、回収もかなり早いと思います。

高野 基本的には営業利益が10%出るようにモデルを組み立てています。どんなに遅くとも1年以内に初期投資を回収できますので、収益性はかなり高いと思います。


――今後の店舗展開についてお聞きします。直営とフランチャイズのどちらに比重を置いて店舗展開を進めていくのでしょうか。

高野 先程もお話したように、そうした計画は今のところ立てないようにしています。良いものがあればその都度増やしていく、そういうスタンスで取り組んでいければいいと思っています。目標を決めて、それを達成するためにお金を使うのではなく、タイミングを見て勝負をかけるべきときにお金を使う、そうしないと本当に意味のある投資はできませんからね。この信念だけは貫き通すつもりです。FCについても新規募集は当然していきますが、一方ですでにやって頂いている加盟店に2店舗目、3店舗目を出店してもらえるように、いろいろとフォローしていきたいと思っています。


――最近も新たな業態を発表されました。

高野 頭の中にはまだまだやりたいと思っているものがたくさんあります。今はハワイ関連の業態が多いですが、今後は他のものも積極的に開発していくつもりです。今年の3月に出店したハンバーガー店はその一つで、アメリカの西海岸をイメージしたブランドです。とにかくアイデアを一つ一つ形にしていきながら、いろいろな外食企業の手助けをしていきたいです。



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