FC加盟は〝自社を磨き上げる〟ための手段本部との関係構築の中で実感/「炭火焼肉牛角」「浪速ひとくち餃子餃々(チャオチャオ)」「ゴルフパートナー」「エニタイムフィットス」/渋谷 潤社長


東北テレメディア開発

宮城県仙台市

渋谷 潤社長(43)


宮城県仙台市を地盤に、外食、小売り・サービス業を展開する東北テレメディア開発。通信事業を行う会社として1988年に設立された同社は、現在通信関連拠点を30拠点のほか、「炭火焼肉牛角」5店舗、「浪速ひとくち餃子餃々(チャオチャオ)」1店舗、「ゴルフパートナー」4店舗、「エニタイムフィットネス」10店舗、「自遊空間」1店舗を展開する有力企業だ。FC展開を積極化させる同社の渋谷潤社長に話を聞いた。(※2021年2月号「メガフランチャイジーの経営哲学」より)



渋谷 潤社長(43)

Profileしぶや・じゅん

1977年1月生まれ、宮城県出身。宮城県仙台南高等学校卒業後、石巻専修大学在学中に東北テレメディア開発株式会社に入社し、大学を中退。その後管理課長、経営企画室長、専務取締役を経て、2014年4月に代表取締役社長に就任。現在にいたる。

――御社は渋谷社長のお父様で、現会長の渋谷啓二さんが創業された通信関連事業がスタートだと聞いています。当初はどのような仕事をされていたのですか。


渋谷 私の父は当社を設立する前、個人事業主としてレストランの経営を行っていました。当時はオーナー自ら現場に入り、1日10何時間の労働を365日休みなしで行っていたため、倒れてしまうこともありました。そんな状況ですからこの事業をずっと続けるのは厳しいと考え、新規事業を探していました。通信事業に出会ったのはその頃です。

 当時の電話業界は通信の自由化がスタートした頃で、NTTが独占していた市外電話サービスに第二電電(現:KDDI)や日本テレコム(現:ソフトバンク)といった新電電が参入した時期で、各地で代理店を一斉に募集していた。当社もそこに目を付け、新たな市外電話サービスの営業や工事を行うようになったのです。


――直近2020年3月期の売上高は97億2000万円までになりました。売上の内訳は。


渋谷 外食事業が4億1000万円、ゴルフパートナー事業が6億7000万円、エニタイムフィットネス事業が5億5000万円、自遊空間事業が7000万円弱で、それ以外がキャリアショップ事業での売上となります。携帯電話は端末の単価が高いので、結果的に売上のほとんどを占めていますが、今後は廉価端末のウエイトが上がり、売上は減少して

いくと思います。


――通信事業以外の事業、つまりフランチャイズ事業については2004年に子会社の事業を譲受したのが最初になると思いますが、どのような経緯で参入を決めたのでしょうか。


渋谷 元々、2000年代に入ってから新規事業を行おうということで展開していたのが外食事業で、別会社で開始しました。しかしその後、BSEが起こってしまい、全店真っ赤っ赤になってしまって。当時私はこの会社の社長をしていたのでよく覚えていますが、牛角が売りにしていたアメリカ産の牛肉が直撃されてしまったため、仕入れ先を変えないとまず売るものがないという状態でした。結果的に事業の再構築を行う中で当社が事業譲受を受け、それからは直接手がけるようになったというわけです。


――そもそも牛角に加盟した理由は何だったのですか。


渋谷 新規事業に対しては、2つの考えがありました。1つが本業の通信系で業容を広げるというもの。具体的にはコピー機やFAXのメンテナンスなどを行っていました。そしてもう1つが外食。元々会長が当社を創業する前にやっていた事業だったので、ある程度分かっていた部分があったためです。


――当時の牛角は急拡大の真っ只中ですから、勢いもあったと思います。


渋谷 牛角ではアルバイトを対象にした全国大会(フォーラム)を行っており、そういった取り組みが素晴らしいと思ったのです。ブランド力や投資回収といった点より、FCの仕組みにポイントを置いていたので、牛角に加盟をしました。BSEで大変な時期もありましたが、あれをやっていたからこそ磨かれた物件開発力もあります。また収益や人件費のコントロール、インダストリアルエンジニアリング(生産工学)、オペレーション見直しなどの部分もすごく学びました。


「そのエリアにないサービスを展開する」地域を面で押さえるブランドのレイヤー化


――その後は09年に「ゴルフパートナー」、15年に「エニタイムフィットネス」、17年に「自遊空間」と、外食以外で様々な業種で出店をしています。御社の業種の選定基準はどこにあるのでしょうか。


渋谷 加盟をしても1店舗で終わってしまい、それ以上の広がりがないブランド、また1店舗の売上規模が小さいところには加盟意欲がありません。たとえば、フィットネスでいえばカーブスのような小さな店よりも、エニタイムフィットネスの方が大きい規模でできる。


そして2つ目が同じ地域に対して色んなレイヤーで事業展開できるという視点です。当社は会社名に「東北」という言葉が付いていますが、その地域においてまだ展開されていない事業が挙げられます。これは比較的新しいビジネスや空白地帯を狙えるような業態になります。


そして3つ目が継続性のあるもの。ブームや時代の変化で無くなってしまうものではなく、ビジネスとしてストックのあるものです。当社の本業である携帯電話も〝何歳になったら卒業〞といったわけではありませんから、そこにポイントを置いてやっています。また、当社は通信事業があるので、そこで培った部分を活かせるものなのか?また共倒れにならず、リスクを分散するという考えがあります。その結果、出てきたのが地域の将来の課題解決に合うような事業。そしてそれが「スポーツと健康」でした。現在加盟しているゴルフパートナーやエニタイムフィットネスなどはそうした観点からです。


――地域のインフラとして、そのエリアで圧倒的な存在になるということですね。


渋谷 地域に対してサービスのレイヤーを持たせることで、地域を面で押さえる。携帯電話も提供し、ゴルフギアも販売し、フィットネスも行っている。そうすると、お客さんにとって当社が無くなるとそれらのサービスが受けられなくなり、困る会社になってくる。たとえば大手だと一つのサービスで一定のシェアを持たせて存在感を示し、生き残りを図りますが、当社は地域に対して影響力を持たせることで強みを出していきたいと思っています。


▲ス ポ ー ツ と 健 康が テ ー マの事 業

――本業を持っている企業の場合、加盟するFCは本業のノウハウを活かせるという理由が多いと思いますが、御社はどうですか。


渋谷 携帯電話を販売する際は、「どんな使い方をされますか?」や「今、何を使っていますか?」といった話をし、その機種について色んなスペックをお話しします。実はこれはゴルフパートナーでいうクラブと同じなのです。色んな会話やヒアリングをしながら商品を勧め、場合によっては前の商品を下取りする。そして「どうでした?」といったように、その後の関係も続いていくのです。


自遊空間についても、業種は全然異なりますが、ネットカフェ自体は色々なデジタルコンテンツを体験できる場所ですから、携帯と近い部分もある。また自遊空間はカラオケやビリヤード、ダーツやVRゲームもある。また無人の店舗もあったりするなど、業態として色んな事にチャレンジしている。スペースを上手く使って時間を過ごしていただくというのは、携帯電話業界でもエッセンスとして必要ではないかと思っています。そして少人数でオペレーションしている点も、ノウハウとして吸収できるのではないかと思ったので

す。

―通信事業から人材を配置することも行っているのでしょうか。


渋谷 そこは多分、他社と大きく違っていて、既存事業から人材を持っていくのは極めて少ない、もしくはないです。なぜかというと、たとえば社長がリーダーシップを発揮して新規事業を行うと、それが一番手の事業となり、二番手、三番手の事業といった形になってしまう。また人材に関しても、利益が出やすい所に行きたくなってしまう。ですから当社の役員陣は、誰もがそれぞれの事業の責任者にはなっていません。それぞれの事業部に別で責任者を置いて、それぞれがその事業しかないくらいに一生懸命やる。そうすることで、各事業が上手く回っていれば、企業体としての安心感を強めることができると思っています。


――ノウハウは共有するけれど、働く人材はそれぞれが固定化されている。なかなか珍しい形だと思いますが、どのようなメリットがあるのでしょうか。


渋谷 同じ会社でも、それぞれの部門で独自性を出すことを意図しています。体育会系や文化系というように、色々なキャラクターが揃うことで様々な相乗効果や化学反応が起こりますが、ルールを設けてガチガチにしてしまうと、今回の新型コロナウイルスのような事態が起きた場合、同じ病気(雰囲気)になってしまう。


――あえて共通化させないことで、危機になった時でもリスクを分散できるわけですね。

渋谷 逆に共通化している点としては、人材の給与体系です。普通だと事業ごとに収益が異なるので給与体系も変わってくると思いますが、基本的には同じにしています。そのため、業態によっては他のFCよりも給与が高くなります。またアルバイトが中心となってマネジメントされている業態であっても、フル勤務をしているスタッフに関しては本人が希望すれば正社員に登用しています。こうした点も、他社とは少し異なる部分だと思います。


――事業は独自性を尊重させる一方、待遇は共通化させて不公平感を無くす。面白い取り組みですね。


渋谷 ですから当社全体で収益が下がった時は、どの事業部門でも賞与が下がります。そういう連帯責任のような要素も取り入れ、「自分だけ良ければいい」とならない仕組みにしています。また絶対的な売上・利益は事業ごとにある程度決まってしまう部分もあるので、その点はマネジメントによってどれだけ差が出たかというところに評価の重きを置き、公正に見られるようにしています。絶対的な利益ではなく、社内に為替が存在するような形です。


接客ノウハウが活かせる「ゴルフパートナー」事業

新規事業を保育する「事業開発室」を設置 検討業態の継続的な情報収集も


――新たにFC加盟をする際は、どういった手順で検討していくのでしょう。


渋谷 主に当社の役員が新たなFCを探してくるのですが、その役員の直轄である、「事業開発室」という部門がこの点を大きく担っています。この部門は新たなFCを探してくるというよりかは、新事業を育てる育成室の役割が大きいです。社内で新たな事業を展開する場合、どうして既存事業をやっているメンバーとの間で複雑な環境が出てきてしまいます。そこでマイナスの影響が出るのを排除するために、社内で独立し、保育できるような機関になっています。


――部門を作ることで、常に新たな情報を集める機能と、絶えず事業を開発していくという機能があるわけですね。


渋谷 あとは対象となるブランドを継続的にウォッチする機能もあります。当社では新規事業について常々3名の役員で情報交換をしているのですが、そこで「一旦はないね」といったブランドに関しても、引き続き事業開発室で重点的に情報収集をしてもらっています。期間が長いものに関しては3〜5年ほどになりますが、長くウォッチしているとその業態や本部が本当にいいかどうかが分かるのです。


――御社にとってFCビジネスのメリットはどこにあるとお考えですか。


渋谷 企業対企業のお付き合いができるところだと思います。FCに加盟するとノウハウがもらえたり、時間を買うとか利益の出る種を買うという部分がありますが、それだと加盟して店舗を運営した段階で終わってしまう。そうではなくて、その事業に深入りすることで本部に対しても「こうした方がいい」といったことが言える。そうするといち取引先というより、お互いの良い所も悪い所も客観視でき学べる部分が非常に多い。会社として磨かれるのです。


――ビジネスで儲けられるかどうかだけではなく、企業として成長していくために必要なものだと。

渋谷 本部としっかり関係が作れると、本部の人事や戦略がなぜそうなったのかということも見えてくる。普通、こうしたことは株主でも分からないことだと思います。事業が成功するかどうかは、本部に占めるウエイトがかなり大きい。そして我々もそこに対してある程度のものをお預けするわけなので、その本部が信頼に足る能力を持っているかどうか、かなり吟味して見極めています。本部の事業会議や役員会にも出て、事業計画を練って本部のトップともや

り取りする。過去にはそこまでしても加盟しないケースもありました。

――新型コロナウイルスによって積極的な事業展開がしづらい状況だと思いますが、今後の展開についてはどうお考えですか。


渋谷 新規事業に関してはいくつか手掛けていきたいと思っています。ただポイントとして、社員数をどんどん増やして店舗も増やしていくというのではなく、社員数はできれば増やさず、より生産性を上げていきたい。人口はどんどん減っていくわけですから。


――人員や手間をかけずにできるビジネスであれば、直営店のスタッフを派遣してくれるものやコインランドリーのように投資型の装置ビジネスもあります。


渋谷 当社はあくまでも実業でやる。現在展開しているエニタイムフィットネスは、割と装置産業的な要素がありますが、あくまで人は必要。無人で完結する事業だったらやらなかったと思います。やっぱり人がいて、対人コミュニケーションがある。一方で装置的な要素がある程度ないと、人材が採用できなくなったり利益が出づらくなってしまうので、そこはITを取り入れて解決できる事業がいいですね。


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