ワタミが挑む韓国風フライドチキン・FC展開で1000店舗体制を目指す/bb.qオリーブチキンカフェ

ワタミ

東京都大田区

渡邉 美樹 会長兼グループCEO(61)


若者のアルコール離れや新型コロナウイルスの感染拡大で苦境に立たされる居酒屋業界。その中にあって、状況の打開を図るべく、居酒屋に代わる新たな業態のFC展開に乗り出しているのがワタミ(東京都大田区)だ。唐揚げやフライドチキン、焼肉など、さまざまな業態をチャレンジする同社の営業戦略について、渡邉美樹会長を直撃した。

(※2021年10号「Top Interview」より)



渡邉 美樹 会長兼グループCEO(61)

PROFILEわたなべ・みき

1959年10月生まれ。神奈川県横浜市出身。「つぼ八」のFC店経営を経て、居酒屋「和民」を開業。参議院議員を務めた後、 2019年7月にワタミグループに復帰。同年10月1日付で会長兼グループCEOに就任。


最初の店舗は宣伝なしで 毎年売上を更新中



――2021年度3月期は、売上高が約608億円、営業損益は約97億円の赤字と、前年度から数字を落とす結果となりました。

渡邉 コロナ禍による外食自粛で宅食事業は非常に好調だったのですが、一方で外食事業は時短営業や休業の影響で、1年を通じて不振が続きました。現在、業績の立て直しを図るべく、メーンブランドの「和民」と「三代目鳥メロ」「ミライザカ」などの居酒屋チェーンを、それぞれ成長性の見込める新業態へと転換していっているところです。


――2018年に発表した「から揚げの天才」や「bb・qオリーブチキンカフェ」「焼肉の和民」「かみむら牧場」などの新業態は、いずれも直営だけでなく、フランチャイズによる店舗展開を進めていくそうですね。

渡邉「から揚げの天才」の出店については今のところ順調で、7月には板橋区で100店舗目がオープンしました。今後はこの勢いを維持しながら、一方で韓国風フライドチキンの「bb・qオリーブチキンカフェ」のFC展開を本格化させていきます。


――「bb・qオリーブチキンカフェ」は韓国発祥チェーンだと伺いました。

渡邉 運営本部はGENESIS(ジェネシス)という会社で、25ヵ国で約2500店舗を展開しています。GENESISが「和民」の韓国におけるフランチャイジーであることから、「bb・qオリーブチキンカフェ」の日本での展開は我々の方でやりましょうということになり、2016年に本社が入る「大鳥居駅」の駅ビル1階で最初の店舗をオープンしました。これまで宣伝らしい宣伝はほとんどやってこなかったのですが、居酒屋業態が苦戦を強いられる中で、毎年売上を伸ばし続けています。特に女性のリピート客が多いのが特徴です。



オリーブ油で揚げることで健康にも配慮

――なぜ、それほどまでに人気があるのでしょうか。

渡邉 「美味しい」というのが大前提としてありますが、それだけでなく鶏肉自体が他の肉よりも低カロリーかつ高たん白質で、しかもそれをオリーブ油で揚げていることも支持されていると要因だと考えています。それと大ヒットした韓流ドラマにも登場するのですが、それを観ていらっしゃる方も多いようです。大鳥居駅店は場所柄、羽田空港で働くキャビンアテンダントの利用も多いのですが、世界中で美味しいものを食べている彼女たちも、商品を高く評価してくれています。


――もっと早いタイミングでFC展開もできたのではないでしょうか。

渡邉 このタイミングになったのは、業態を日本流にアレンジするのに少し時間がかかったためです。例えばメニュー構成ですが、韓国では基本的に骨付きフライドチキンしか販売 していないのに対し、日本ではさまざまな需要に対応できるように、サラダやチキンバーガー、カレーなども販売しています。また、鶏肉には、韓国のものではなく、マレーシアの養鶏工場で瞬間冷凍した高品質のものを使っています。韓国の鶏肉はフレッシュで非常に美味しいのですが、その分、値段が高く、使うとなると原価50%超を覚悟しなければならな いからです。もっとも、鶏肉についてはいずれ国産に切り替えようと思っています。ただし、国産化にはある程度の店舗数が必要ですので、なんとか年度内に80店舗を達成し、これを実現したいと思います。


――国産のものを使った方が消費者受けは良いと思います。ただ、韓国の鶏肉ほどではないにしろ、国産鶏を使えば原価は上がるのではないでしょうか。

渡邉 マレーシアのものと比べると原価はかかりますが、一方で店舗数が増えたことで原価が抑えられるものは他にもあります。全体的にうまく均せば、今の原価を守ることはそれほど難しいことではありません。 加盟店に対して「国産鶏に変えたから原価が上がります」とは、さすがに言えませんからね。


――「から揚げの天才」はテイクアウト専門店を基本的な形態にしています。「bb・qオリーブチキンカフェ」はどのような形で出店を進めていくのでしょうか。

渡邉 FCでは駅前路面店、モールの2パターンで考えています。先日、二子玉川に出店した10店目の路面店で直営による実証実験はほぼ終わり ましたので、基本的には半々ぐらい の割合で出していければと思っています。また、他に直営によるフリースタンディング店の出店も進めていく予定です。



10店舗目「bb.qオリーブチキンカフェ二子玉川店」

――コロナ禍による業績の悪化で、撤退する外食店が増えています。出店攻勢をかける側にとっては、物件探しに有利な情勢になっているように見えます。

渡邉 確かに撤退する外食店は多いですが、だからといって必ずしも出店地探しが有利になっているわけで はありません。例えば、我々は「かみむら牧場」というA4、A5ランクの薩摩牛が食べ放題の焼肉業態もやっているのですが、出店を狙っている郊外は他の焼肉店や回転寿司チェーンとぶつかってしまい、物件情報がなかなか入ってこない状況にあります。都心部を見ても、空きテナントは確実に増えているのですが、その大半は空中階です。出店目標を達成できるかどうかは、出店立地をどれだけ確保できるかにかかっていると言えるでしょう。



3年半で投資を回収する ビジネスモデル



――「bb・qオリーブチキンカフェ」の基本的なFCモデルを教えて下さい。

渡邉 まず広さですが、モールだと10坪〜出店が可能です。カフェタイプは25坪〜で考えています。席数にして30席前後になります。


――物件取得費を除くと、開業にはどのくらいの初期投資が必要でしょうか。

渡邉 18〜20坪の店舗で、加盟金や研修費、デザイン管理費などを合わせ2780万円というのを基本モデルとしています。これとは別に保証金と物件取得費がかかります。ロイ ヤリティは月の売上の3・5%です。


――「bb・qオリーブチキンカフェ」はどのくらいの期間で投資資金の回収を想定しているのでしょうか。

渡邉 フランチャイズビジネスのROI(投資収益率)は、どんなに低く見積もっても20を下回るようなことはあってはなりません。このことから「bb・qオリーブチキンカフェ」は、キャッシュフローベースで2年半で回収できるようにモデルを組み立てました。この事業は10年は継続できるので、早期に投資を回収して、残りの期間でしっかり儲けてもらうことができます。


――大鳥居店は宣伝等をせずに毎年売上を伸ばし続けているということですが、現在はどの程度の月商があるのでしょうか。

渡邉 立地を考えれば850万円いけば大成功なのですが、300万円から始まって今では約1000万円を売り上げるまでになっています。 コロナ禍も追い風になっていると思 います。


――今年度内に80店舗、その先の目標は。

渡邉 うまくやれば1000店舗は展開できる可能性があると考えています。出店立地をきちんと見極めるとともに、今のモデルを守っていけば、それほど難しいことではないはずです。


――目標を達成する上での業態としての課題のようなものはありますか。

渡邉 先程も申し上げたように、まずはできるだけ早い段階で80店舗を達成し、鶏肉の国産化にこぎつけることです。これができれば商品供給が今以上に安定するので、一気に店 舗を増やすことができます。あとはいかにして良いパートナー企業を見つけるかですね。


――鶏肉の国産化が実現すれば、「から揚げの天才」とのシナジー効果も生まれるのではないでしょうか。

渡邉 たまに聞かれるのですが、正直なところ、その点についてはまったく考えていません。というのも、両者では使用する鶏肉が根本的に違うからです。「から揚げの天才」は60g90円という低価格のビジネスモデルのため、国産のものではどうやっても収支が合いません。逆に海外のもっと大規模な養鶏所と組みたいと考えています。一方で「bb・q オリーブチキンカフェ」は客単価がだいたい1350円くらいになりますから、国産のものでもきちんと利益を出すことができます。



4業態の直営・FCで 3000店舗体制を目指す



――「から揚げの天才」が100店舗を超えました。

渡邉 今後はいかにしてマーケットを面で取っていくのかが重要になります。そのために低投資かつ低コスト運営が可能な380万円の出店モデルを新たに開発しました。始めた頃と比べて生産効率が飛躍的に上がっているので、通常時は2名で運営することができます。ピーク時でも3名いれば十分です。今後は街のから揚げ店に負けないように、さらに出店を加速化させていくつもりです。年度内に200店舗を出店する予定です。


――鶏肉を使った業態とは別に、「焼肉の和民」「かみむら牧場」などの焼肉業態の展開にも力を入れておられます。

渡邉 いずれも今後はフランチャイズで伸ばしていく計画です。「焼肉の和民」は駅前にある居酒屋からの業態転換を想定していて、すでに何店か実績もあります。中には転換したことで売上が3倍近くに伸びた店舗もあります。初期投資は1億円になります。

 一方、A4、A5ランクの薩摩牛が食べ放題をウリにした「かみむら牧場」については基本的に郊外での展開を考えています。この分野で言えば「焼肉きんぐ」が競合店となるでしょうね。こちらは初期投資が1億3000万円かかります。ただ、先程も申し上げたように、郊外は今、物件の取り合いになっています。すでに大手のフランチャイジー数社から加盟に関する具体的な相談が来ているので、何とか条件に合う物件を見つけて出店にこぎつけたいと思っています。

  いずれにせよ、今後は「bb・qオリーブチキンカフェ」と「から揚げの天才」「焼肉の和民」「かみむら牧場」の4業態を、直営・FCの両輪で伸ばしていきます。将来的には「bb・qオリーブチキンカフェ」で1000店舗、「から揚げの天才」で1000店舗、焼肉2業態で1000店舗の体制までもっていきたいですね。

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