【後編】業界健全化をテーマに活動続けた50年/(一社)日本フランチャイズ チェーン協会

25兆を組成する有望なビジネスモデルを啓蒙


(一社)日本フランチャイズ チェーン協会

東京都港区

増本 岳会長(57)

(カーブスホールディングス代表取締役社長)



一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会(以下:JFA)は、1972年に通商産業省(現:経済産業省)の認可を受けて設立し、来年で設立50周年を迎える。日本のフランチャイズ業界の唯一かつ最大組織として多くの FC本部が属する同協会は、「フランチャイズの健全化」をテーマに歴史を重ねてきた。国内でFCが誕生してから現在に至るまで、協会としてどのような取り組みを行ってきたのか。現会長の増本岳氏に振り返ってもらった。

(ビジネスチャンス2022年2月号より)

前編はこちら

 

増本 岳会長(57)

 

JFAは10月末時点で495社の会員で構成され、内訳は正会員が102社、準会員が12社、研究会員が109社、賛助会員が272社となっている。その中でFC本部が主体となっているのが正会員・準会員の114社。該当企業はいずれも歴史ある大手のチェーン本部で構成されている。

 

昨今、フランチャイズ業界では法改正の動きが活発化している。今年4月にはフランチャイズ加盟募集に際しての情報公開に関する項目をまとめた「中小小売商業振興法(以下:小振法)」の一部改正、また同じく4月にはフランチャイズシステムにおける独占禁止法上の考えをまとめた「フランチャイズ・ガイドライン」が10年ぶりに改正された。

 

開示情報が増えるからこそ

加盟者は正しい経営判断を



―成熟期を迎えたフランチャイズ業界においては、改善と進化の両面を行っていく必要があると思います。 会長として、増本さんが発信していきたいことは何でしょうか。

増本 まず対外的な部分としては、フランチャイズの持つ社会的な価値を理解いただくことだと思っています。デフレ脱却といった日本経済の再生を考える局面において、新しい 成長戦略を国全体として考えた時に、FCが果たす役割は非常に重要だと思っています。

また内部においては、小振法やガイドラインの改正点をきちんと浸透させていくことですね。ウィズコロナ・アフターコロナの中でどのように企業が成長発展していくかというと、それは学び合いです。業種業態を超えたノウハウ共有の機会をもっと増やしたいですね。


―小振法に関しては、「加盟者の店舗のうち、周辺の地域の人口、交通量その他の立地条件が類似するものの直近の三事業年度の収支に関する事項」というものが追加されました。こちらの項目をどのように解釈されますか。

増本 「加盟される方へのより正確な情報提供を」という流れの一環だと捉えています。今回新しく追加された項目については、それ以上のものを既に出してる本部もあれば、そうでない本部もあるのが実態だと思います。JFAではすでに弁護士の先生との勉強会をスタートしているので、今はそれぞれの本部で法定開示書面等の見直しに着手し始めていると思います。


―そもそも、法廷開示書面の発表はどこまで普及しているのでしょうか。

増本 ほとんどのFC本部では、加盟の成約確率を上げるために個別の情報提供として行っているのが現状でしょう。ですから今回のような項目もそうですが、誰でも見れるよう な書類として提供しているかというと、それは別の話です。FC本部にとって、法定開示書面の発表とそのルールに合わせた厳密な取り組みを行うのであれば、実務的には大変な作業になると思っています。


―どのような点が大変なのでしょうか。

増本 「類似の立地」という定義です。商売は生き物ですから、明文化しきれないところがある。仮にこれが明文した通りにできてしまえば、地図上のセカンダリデータだけですべて分かってしまい、立地開発担当の方は要らなくなってしまうわけです。またこうしたデータを全部計数化できるかというと、考えづらい。なぜなら出店をする際には、プロの開発担当者がその街を見た上で判断したり、創業者ならではの勘で見極めた立地は絶対に外さないということがあるからです。ですからある程度実態に合わせて、協会の中で運用ガイドラインを作っていく形になっています。


―ただルール化自体は、 加盟をする側にとっては頼もしいですね。

増本 こうしたルールが整備されること自体は、非常に良いことだと思っています。しかしその一方で、このルール化はリスクもはらんでいると私は思っています。なぜなら、計数化されたデータだけが全てではないからです。ディスクローズする情報を増やすことは良いことですが、増やしたからといって全てが解決することはない。

極端ですが、たとえば全店の数字を見せたからといって、正しい経営判断ができる訳ではないのです。やる・やらない、ここで出す・出さないといった見極めは、加盟側のトップ自身が意思決定をすべきこと。位置や商圏を確認したり、ほかのFCに話を聞いたり、どういう戦略をとるべきか自身で考えることが重要なのです。


―同時期に改正された「フランチャイズ・ガイドライン」については、コンビニ業界を意識したものに見えます。


増本 業界のルール作りという大きな流れだと思いますが、フランチャイズとなると真っ先に思い浮かぶのは、やっぱりコンビニチェーンという部分があります。コンビニ業界サイドは、共同歩調で運用ガイドラインを協会委員会の中で作り、弁護士の先生にも相談に乗っていただいています。大手チェーンを意識してルールが複雑化し、法律ができると、導入期や成長期のベンチャー型の本部さんにとっては重い側面があると思います。ただ会計と一緒で、なるべく早い段階で着手した方が良いですね。JFAの研究会では、先輩企業からも学んでいる会員もいらっしゃいます。


 

コロナ禍の今年5月に16代目の会長に就任した増本氏。平時に増して重責を担うことになった訳だが、あえて思い切った施策を打ち出すことはない。「フランチャイズの良さを知ってもらう」という原点回帰を重要視し、会員や業界に向けて発信をしていきたいと話す。


 

FCの魅力はイノベーションの起こしやすさと環境適応力


―50年という歴史を経て、日本のフランチャイズ市場は25兆円まで発展しました。いかに魅力がある業界であるかは、この数字を見る限り明らかです。

増本 1990年代後半から、個人の脱サラや独立開業での加盟ではなく、中小企業の加盟がかなり増加しています。世の中の大きな流れから、本業が伸びなくなった時に新たに成長する事業分野にシフトすることは、なかなか大変です。大手企業ならまだしも、普通の中小企業には全くノウハウがない分野が多く、成功率は非常に低い。そのような状況下では、時代に合わせた新しいビジネスモデルであり、ある程度確立されたノウハウを入手した状態で経営できるフランチャイズは一番成功確率が高い。まさにビジネスチャンスです。


―「時間を買う」や「成功の種を買う」といった表現をされる法人フランチャイジーは多いですが、まさにそういうことですね。

増本 他方、フランチャイズ本部の視点で見ると、「成長のスピード」という点が魅力です。ヒト・モノ・ カネがないベンチャー企業にとって、持たざる者の成長戦略の意味合いがあります。良いアイデアとビジネスモデルを持ってはいる。しかし自分の手元資金でどうにか頑張って店舗を作り、自信はあるけれどこれを100店舗にするには信用力もなく、10年 20年かかってしまうだろうという時。フランチャイズという仕組み特有の強みは、このような時にビジネスモデルそのものを提供することで、他人の資本で事業拡大ができるという点です。


―増本会長は、「カーブス」を運営するカーブスホールディングスの社長も務めていらっしゃいますが、自社の拡大もフランチャイズを採用したことが大きかったですか。

増本 そうですね。ただ当社の場合は、フランチャイズ展開することに別の価値も感じています。確かに資金面でいうと、当社は昨年3月に東証一部へ上場することができたので問題はありません。よく「上場して資金調達ができるようになったら直営で出せばいいじゃないか」とも言われます。しかし私はそれも違うと思っています。日本は地域やお客様の層によって、ニーズが多様化しています。 BtoCのCの変化にマッチし、革新を続けていくためにはフランチャイズの存在が重要なのです。


―具体的にどのような点で重要なのでしょうか。

増本 たとえば当社の場合は、平均で5店舗から10店舗を運営していただいているオーナーが多いです。その彼らが地域に根差して経営を行うことで、本部が机上の空論で考えて いるマーケティング施策よりも遥かに素晴らしいことをする現場が必ず出てくる。見方によっては言うことを聞かない加盟店とも捉えられますが、フランチャイジーが自由闊達に 知恵を絞って経営していただいている状態は、オープンイノベーションを起こしやすい。

そしてその知恵は、現場で一生懸命やっているだけでは標準化しにくい。そこで本部が、優秀なノウハウの片鱗や欠片をちゃんと集めて標準化し、一つのビジネスモデルの中にビルトインして拡大発展させていく。

ですから、自分の大事なノウハウを他人には見せないフランチャイジーさんは長続きしません。「面白いよ」「これ上手く当たったけどどうだろう」と言って来られる方は、それがほかでも検証されてもっといいノウハウとなって必ず帰って来る。特にコロナのようなことが起こると、業種・業態の環境が激変します。フランチャイズ固有の強みは、こうした環境にも適用できる環境適応力の高さだと感じています

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