倒産寸前の家業を、焼肉店を成功させて3年で立て直す/レモホル酒場、肉韓バルたむら、ほか

レモンサワーと生ホルモンの専門店がヒットし、1年半で20店舗に



GC

大阪市北区

石原義明社長



焼酎、日本酒、ハイボール等々、時代ごとに変わるアルコール飲料のトレンド。現在、消費者から高い支持を得ているのはレモンサワーだ。キリンやアサヒ、サッポロといった飲料メーカー各社もレモンサワーの製造にはかなり力を入れており、「檸檬堂」や「こだわり酒場のレモンサワー」といったヒット商品も生まれている。そんなレモンサワーに、新鮮なホルモンを組み合わせた新たなチェーンで話題になっている会社があることをご存知だろうか。

「レモホル酒場」の全国展開を進めるGC(大阪市北区)の石原義明社長に話を聞いた。



石原義明社長

Profile◉いしはら・よしあき長崎県出身。専門学校卒業後、社会人を経てK―1の世界に入る。練習に打ち込む一方で、飲食店を経営して成功を収める。後に経営の傾いた家業を立て直すため、実兄に代わり代表取締役に就任。見事3年で結果を出す。現在、既存ブランドの全国展開を進めるとともに新業態の開発にも注力する。



コロナ禍真っ只中に新業態をオープン




――御社は〝たむけん〞こと、タレントのたむらけんじさんで有名な「炭火焼肉たむら」をはじめ、複数の外食店を運営されています。最近では、コロナ禍真っ只中の2020年11月に、大阪の天満でオープンした「レモホル酒場」が外食業界で大きな話題になっています。

石原 現在、フランチャイズも含め、30店舗の外食店を運営しています。「レモホル酒場」は初出店からまだ1年半ほどしか経っていませんが、店舗数は20店舗を超えました。おかげさまで、いろいろなメディアにも取り上げられています。


――石原社長はもともとK―1の世界で活躍されていたと伺いました。どういった経緯で外食の世界に入られたのでしょうか。

石原 実は、外食業にはK―1時代からずっと携わっていました。私は長崎の生まれで、父は地元で不動産賃貸業をメーンにした会社を経営していました。早い段階で「家業は兄に継がせるから、お前は好きなことをやりなさい」と言われていたので、ちょうどK―1がものすごく盛り上がっていた時期だったこともあり、私は社会人を経て、格闘技の道に進みました。とはいえ、格闘技だけで食べていける人はほんの一握りだけです。ほとんどの人は、練習の合間にアルバイトなどをして生計を立てなければなりません。私も最初そう考えたのですが、それだと、急に試合が決まっときに休みを取るのが大変です。そこで、自分の裁量で休みを取れるように個人でたこ焼き店を始めました。経営は順調で、最盛期には居酒屋やダイニングバーなども展開していました。


――現在は格闘技を辞め、お兄さんの代わりに、家業だった会社の経営をされています。

石原 最初は予定通り、兄が会社を引き継ぎました。しかし、しばらくしてから父が会社の決算書を見たら、借金まみれで、経営がガタガタになっていたんです。所有していたビルはすべて共同担保になっていて、どの銀行ももう絶対にお金を貸してくれない状況でした。当然、父は激怒しました。もう兄には任せておけないからと、飲食業で成功していた私が呼び戻され、家業を引き継ぎました。


――そこまでひどい状況の会社をどうやって立て直したのでしょうか。

石原 長崎に戻る直前に参加したあるレセプションで、偶然、たむらけんじさんの隣の席になりました。ちょうど、元焼肉店だった空テナントがあることを思い出し、その場で「長崎に出店してくれませんか」とオファーしました。しかし、遠方であることに加え、たむらさん自身が事業拡大に失敗した後だったため、残念ながら出店については断られてしまいました。でもいろいろ話しているうちに「フランチャイズとしてやるならいいよ」ということになり、自分で出店しました。これが見事に当たりました。開店直後から行列ができて3時間待ちは当たり前。周りの焼肉店は月商100万円がやっとのところ、うちは初月から1000万円を売り上げました。地方では、芸能人のお店というだけで、こんなに人が集まるのかと、私も大変驚きました。おかげで、少しずつ返済ができるようになり、福岡や大分にも店舗を出しました。福岡の売上は長崎に比べるとイマイチでしたが、大分は大成功。結局、3年間がんばったタイミングで、金融機関の一つが借金をすべて肩代わりしてくれることになり、どうにか会社を立て直すことができました。たむらさんとの出会いが大きなきっかけになりましたね。


――現在は「炭火焼肉たむら」から派生した「肉韓バルたむら」のフランチャイズ本部として活動されているそうですね。

石原 今後は実店舗と、デリバリーに特化した業態の両輪で店舗展開を進めていく予定です。



大手食肉会社とアサヒビールがバックアップ



――焼肉店を主軸に会社の立て直しに成功された後は、オリジナルの業態も出店しながら事業拡大を進めています。中でも今、注目されているのが、すでに東京進出も果たした「レモホル酒場」です

石原 「レモホル酒場」は、レモンサワーの飲み放題と生ホルモンの食べ放題をウリにした、今までにない新しいタイプの居酒屋です。一般的に、食べ放題と聞くと、多くの方は〝安かろう、悪かろう〞というイメージを抱かれると思いますが、うちは違います。大手食肉会社の全面協力により、有名な高級焼肉店レベルの高品質な生ホルモンを破格の値段で提供しています。ちなみにレモンサワーの方は60分の飲み放題をかなりお得感のある価格で出しています。


――そもそも、どういった経緯でこの新しい業態は生まれたのでしょうか。

石原 2年前にある大手食肉会社で、伸び盛りの飲食店経営者を応援しようというプロジェクトが立ち上がり、すでに外食店経営で成功を収めていた私がそれに選ばれました。そして担当役員の方から「新型コロナウイルスの影響で飲食店関係の肉の消費が世界的に落ち込む。カルビやロースと違い、ホルモンはスーパーなどで売れないから大量の在庫が出ることになる。今なら高品質のものを安く提供することができるから、これを使った新しい業態を作ってみないか」という提案を受けました。非常に面白そうだなと思い、ホルモンをメーンにした業態の開発に着手しました。


――もう一つの売りがレモンサワーです。

石原 私は基本的に、新しい業態を開発するときは、できるだけプロの方の言葉に耳を傾けるようにしています。今回は、以前から取引のあったアサヒビールにアドバイスを求めました。「次はどんな飲み物が流行りそうか」と聞くと、「卓上レモンサワーがくる」という返事が返ってきました。レモンはそもそも肉との相性が良い。きっとレモンサワーも生ホルモンと合うはずと思い、両者を組み合わせることにしました。各テーブルに設置するレモンサワー用の卓上サーバーは、弊社だけに卸してもらっています。大手食肉会社とアサヒビールの全面協力によって、「レモホル酒場」は誕生したというわけです。



コロナ禍にもかかわらず開店直後から大行列



――大阪の天満エリアといえば、リーズナブルな呑み屋が非常に多いことで知られています。その中でも「レモホル酒場」の値段は驚くほど安い印象を受けます。当然、開店当初からかなり話題になったのではないでしょうか。

石原 新型コロナウイルスが流行っていたタイミングではありましたが、最初から満席で行列ができるような状態でした。わずか50席の店舗にもかかわらず、レモンサワーが1日20樽出ることもありました。今はだいぶ落ち着きましたが、アサヒ飲料の担当者の話では、当時はうちの店だけで、居酒屋60軒がひと月で消費する量のレモンサワーを出荷していたそうです。アサヒビールの社内広報などでも、「レモホル酒場」はかなり話題になっているようです。


――それにしても新型コロナウイルスの感染拡大が続く中での新業態出店には、かなりの勇気が必要だったのではないでしょうか。

石原 普通は慎重になるのでしょうが、私はそんなことはまったく考えもしませんでした。そもそも、どん底の状態のときに今の会社を引き継いでいるので、怖いものは何もありません。あのときは、銀行口座の残高はたったの2万円、それで毎月200万、300万円返済しなければならない状態でしたからね。どんな経営者よりも苦労していると自負していますし、同じ条件なら、誰と戦っても勝ち残る自信はあります。だからコロナ禍になったときも、「むしろチャンスだ」くらいにしか感じていませんでした。


――その言葉通り、「レモホル酒場」は順調です。店舗数はすでに20店舗を突破しました。現在は、フランチャイズの方にもかなり力を入れているようですね。

石原 今ある店舗のうち13店舗がフランチャイズです。そのほか、すでに契約済みで間もなく出店予定のものが3店舗、契約待ちの案件が10件ほどあります。


――FC展開については、業態を開発した当初から構想にあったのでしょうか。

石原 弊社を応援してくれている食肉会社とアサヒビールの2社に対しては、店舗数を増やすことで報いなければなりません。それもできるだけ早く。そうなると直営でやっているのでは時間がかかり過ぎます。その点、フランチャイズであればスピーディーに店舗を増やしていくことができます。1号店の出店からわずか1年半足らずで20店舗まで増やせたのは、フランチャイズの仕組みを導入したからです。


――具体的にはいつ頃、正式にフランチャイズの募集を開始したのでしょうか。

石原 公表したのは2021年の5月頃です。それまではいろいろな検証を行ったり、システムをより完全なものにするために、仲の良い経営者の方に加盟してもらったり、社員独立で店舗を増やしていました。


――開業にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。

石原 基本プランでは、加盟金の300万円や店舗デザイン費の100万円、その他さまざまな諸経費を合わせて3000万円としています。しかし、もともと焼肉店だったところを居抜きで使う場合や、そこまで広くない店舗であれば、もっと初期投資を抑えることができます。例えば東京の新橋駅前でオープンした店舗は、1000万円以下で開業しました。場所柄、家賃はそこそこしますが、初期投資が抑えられた分、投資回収は非常に早く済みました。

――昨年の2月には、渋谷の駅前に直営店を出店されました。今後も一等地を中心に出店を進めていくのでしょうか。

石原 渋谷店については広告塔の意味合いが強く、実際は超一等地みたいなところに出す必要はありません。どちらかというとローカルな駅の近くが理想です。それでも十分集客できますし、賃料が安い分、利益率も高くなります。


――投資額を見ると、加盟対象は法人に限定されそうです。

石原 本業がしっかりしている法人の加盟が望ましいです。今、何かと話題になっている事業再構築補助金を活用しての開業をおススメしています。というのも、実は「レモホル酒場」は今年の2月の段階で、申請した4案件がすべて審査をクリアしているからです。聞くところによると、他では、申請しても通らないケースが結構あるようなのですが、うちはコロナ禍中に作った業態ということもあり、後付けではなく、最初からタッチパネル式のオーダーシステムや非接触型のセルフレジなどに対応していて、コロナ対策が完璧にできています。言ってみれば、今の時代にピッタリの業態になっているんです。もちろんタイミングにもよりますが、補助金を利用できる場合はぜひ検討してもらいたいですね。



故郷のマグロを使った新業態にもチャレンジ



――今後は直営、FCの両輪で店舗を増やしていく。

石原 出店についてはFCに軸を置いて進めていきたいと思っています。フランチャイズである以上、全体の統制はきちんとしなければなりません。加盟店フォローやマニュアル見直しなど、本部としてやらなければならないことは山積みです。


――今の反響を見ていると、出店スピードはどんどん加速していきそうな気配です。

石原 一応、100店舗という目標を掲げてはいますが、そこまで数にこだわってはいません。大事なのは需要がどれだけあるかです。需要がある限り出店し続けますし、なくなれば出店をやめる、それだけのことです。


――2月には、同じ天満界隈で新業態の「新鮮組まぐろ屋」を出店されました。

石原 私の出身地の長崎県の養殖マグロを使ったお店です。養殖マグロでは近大マグロが有名ですが、実は長崎のも結構美味しいんです。自治体の方から、長崎県産のものを使って何かやってくれと要請され、やることにしました。こちらについても早い段階でフランチャイズ化する予定です。





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