2度にわたる失敗も海外進出を諦めず 売上の半分を稼ぐ中核事業を目指す

リンガーハット(リンガーハット:東京都品川区)

長崎ちゃんぽん最大のチェーン店として、国内で687店(2019年3月末時点)を展開するリンガーハット(東京都品川区)。少子高齢化を見据え、約30年前から海外進出にも果敢にチャレンジ。撤退と進出を繰り返すも、ここにきてようやく定着に向けての道筋が見えてきた。とんかつチェーンの「濵かつ」やその他の業態も含めた海外事業について、3月に着任した佐々野諸延社長に聞いた。


  リンガーハット 佐々野 諸延 社長(59)

ささの・さかえ

長崎市出身。熊本商科大学(現:熊本学園大学)卒業後、1983年にリンガーハットに入社。執行役員西日本営業事業部長などを経て、2012年5月に取締役管理部担当に就任。2019年3月、社長に就任。



30年前から海外展開に着手


―日本に加え、アジアやアメリカでも店舗展開を進めています。現在、7つの国と地域で18点を出店されていますが、海外事業も最初は失敗続きだったそうですね。


佐々野 我々が海外にはじめて店舗を出したのは1990年のことで、アメリカ・カルフォルニア州のサンノゼに「リンガーハット」を出店しました。当時、国内の店舗数はまだ200を超えていませんでしたが、東京を中心とした関東での展開も上手くいっていたので、次は海外だということで、当時の会長が自ら陣頭指揮を執って乗り込みました。最初から現地に工場を作るなど、かなり本腰を入れてやりました。


 ところが5年で5店舗まで増やしたものの、少しずつ調子が悪くなり、92年のバブル崩壊で国内が赤字に転落したことも手伝って、94年に撤退しました。


―改めて振り返ってみて、当時の失敗は何が原因だったと考えていますか。


佐々野 運営が軌道に乗らないうちから工場を作るなど、投資ありきで事業を進めてしまったこと、海外で成功したいという夢ばかりが先行して、地域のマーケット調査が不足していたことなどが挙げられます。ただ、会社としては一旦撤退しましたが、サンノゼの店舗は丼ぶりや定食などもメニューに加えたディナーレストランとして当時の会長指導のもと運営を続け、30年かけて黒字化させました。現在も直営店として運営しています。


―アメリカ撤退から8年後、中国の青島に出店して再び海外に挑戦されましたが、3年後に撤退しています。


佐々野 最初の失敗を踏まえた上で、投資の上限をいくらまでと決めてやったのですが、上手くいきませんでした。現地では、麺と野菜は別々に食べるという文化が定着していたため、うちの「ちゃんぽん」があまり受け入れられなかったようです。  あと、これは先のアメリカでの失敗にも通じる部分なのですが、どこに出せば上手く集客できるのか、立地のポイントが分かっていなかったことも大きかったと思います。両方とも独資でやらずに、地域の特性を知っている地元の企業などと合弁会社などを作ってやっていれば、また違った結果になっていたかもしれません。


―アメリカ、中国と立て続けに失敗したことで、もう海外はやめようとはならなかったのでしょうか。


佐々野 それは全くありませんでした。国内市場が少子高齢化の影響で縮小していくことが確実である以上、10年、20年後も会社を存続させようと思ったら、海外を成功させるしかありませんから。それだけ強い危機感を持っていますので、成功するまで何度もトライしようという気持ちで取り組んでいます。


―3度目の挑戦となるタイ進出を境に、海外店舗が増えています。


佐々野 バンコクに出したお店は、日本人の利用が多い反面、日本食らしさを出すために、値段を一般的な定食屋の5倍くらいにしているため、地元の方にはあまり利用されていません。売上は安定するのですが、繁盛店と呼べるレベルではない。しかし、今後も海外を続けるのであれば、やはり地元の方に多く利用してもらえる繁盛店を作らなければ意味がありません。


 そこで、タイの2店舗目は地元の裕福な方が多くいるタニヤに出したところ、これが当たりました。アメリカの店舗を参考に、丼ぶりや豚カツなどのメニューに加えたことや、日本食のお店だと一目で分かるように、提灯をたくさん取り付けるなど、店舗の見た目を工夫したことも功を奏したのだと思います。


日本的な雰囲気を強調したタニヤの店舗

―地元の方に受け入れられるように、味付けなどで工夫していることはあるのでしょうか。


佐々野 ベースになる部分をいじってしまうと我々の「ちゃんぽん」ではなくなってしまうので、そこは変えていません。代わりにアレンジを加えた現地仕様の商品をメニューに入れるようにしています。海外の方に言わせると、我々のちゃんぽんの味はちょっと塩辛いようで、今でも味覚の違いで色々と苦労しています。また、日本ではヘルシーさをウリにした「野菜たっぷりちゃんぽん」が話題になりましたが、もともと野菜を食べる文化が定着している地域では、あまり響きません。「野菜炒めに見えた」なんて、嘘のような本当の話もありますしね。


―国内ではフランチャイズによる出店にも力を入れています。海外についてはフランチャイズによる出店もあるのでしょうか。


佐々野 ベトナムの店舗は、エースコックグループの現地法人によるフランチャイズ店です。もともと当社監修のカップラーメンの開発などを通じて取引があった関係で、加盟してもらいました。相手次第ではありますが、手を挙げる企業がいれば、色々な形で出店を検討したいと思っています。


―国や地域によって、「リンガーハット」や「濵かつ」の使い分けは考えているのでしょうか。


佐々野 それについてはその都度、考えています。たとえばタイは、「とんかつ まい泉」さんが進出している関係で、豚カツが浸透しているので、あえて「濵かつ」を出店しています。メニューについてはアメリカの店舗の例もあるので、一本だけにこだわらず、色々なメニューを提供するようにしています。メニューを増やすとオペレーションが複雑になるのでは、と言われることもありますが、業態ごとにきちんと仕組み化をしているので、特別負担が増えるといったことはありません。


―海外事業の今後の計画については、どのように考えていますか。


佐々野 グループとしては、将来的に海外で売上の半分を稼げるようにしたいと考えています。今はそのための体質づくりをしている段階です。なるべく早い段階で、黒字化させたいですね。


―今はアジアとアメリカだけで、ヨーロッパには出されていません。対象地域を絞っているのでしょうか。


佐々野 今のところ、ヨーロッパは考えていません。まずはASEANを優先してやっていきたいと思っています。人口を考えれば、ASEANだけでも相当なボリュームがありますからね。


―店舗食材や製造機器の内製化は、リンガーハットならではの強みです。一度はアメリカで失敗しているものの、将来的には海外に再び工場などを作る可能性はあるのでしょうか。

佐々野 少なくとも100店舗以上ないと採算が取れないので、まずは店舗を増やす方を優先してやっていくつもりです。ただいずれは国内と同じように、内製化したいですね。


1000店舗を目指し

第3の業態開発にも注力


―国内の事業については、どのような目標を立てているのでしょうか。


佐々野 これは海外も含めての数字ですが、店舗数については全体で1000店舗という具体的な目標を立てています。ただし、この目標を達成させるためには、ちゃんぽんと豚カツに次ぐ、新しい業態を開発する必要があると考えています。今、試行錯誤しながら何とか軌道に乗せようと取り組んでいるのが「とんかつ大學」というフードコートへの出店を想定した業態です。「濵かつ」よりもリーズナブルな価格帯にしているのが特徴で、ブラッシュアップをしながら、少しずつ店舗を増やしているところです。


 ちゃんぽんの方も、従来よりもワンランク上の「リンガーハットプレミアム」という店舗を展開しています。こちらは現在10店舗、より上質なスープや具材を使ったメニューを提供しています。最近だと、羽田空港の第一ターミナルに新店をオープンしました。


―「リンガーハット」単体では、今年3月末時点で687店舗を出店しています。「濵かつ」の出店計画はどのように考えていますか。


佐々野 「濵かつ」は九州と比べて、関東圏ではまだまだ知名度が低い。こちらでは「さぼてん」や「和幸」などの大手チェーンが強いですから、何とかこの牙城を崩したいと思っています。


ちゃんぽんを世界に広めるべく奮闘を続けている

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