飲食27業態を手がける老舗企業がそばFCに本格参入信州地産の食材をトッピングに用い商品力で差別化/小木曽製粉所 永瀬 完治 社長

王滝

(長野県松本市)

永瀬 完治 社長

コシのある固めの食感で、一度食べると癖になる信州そば。この特徴あるそばを長野から全国に広げようとしているのが王滝だ。同社が6年前に出店した「小木曽製粉所」は2年前にフランチャイズ展開を開始し、現在25店舗(直営12 /FC13)を出店している。大手競合チェーンも数ある中、どう差別化を図っているのか。同社率いる永瀬完治社長に聞いた。

(※2020年10月号「注目チェーン・トップインタビュー」より)

永瀬 完治 社長(70)

Profile ながせ・かんじ

1950年8月生まれ、長野県木曾郡木祖村出身。1973年、長野県松本市に7坪の寿司店を開業。1993年に株式会社王滝を設立。2020年8月現在、飲食事業を中心に、グループ企業4社・48事業所・27業態を展開。2016年に長野県出身の御嶽海公式スポンサーとなり、2018年には御嶽海後援会会長に就任。地域活性化にも努めている。

──小木曽製粉所がフランチャイズ展開し始めたのは、今から2年前。どのような経緯で参入を決めたのでしょうか。


永瀬 それは小木曽製粉所のことをお話しする前に、当社のことを少し説明した方がいいかもしれません。当社は今から43年前に松本市で創業し、元々は寿司屋からスタートしました。その後寿司屋をはじめ、海鮮居酒屋などを中心にグループで27業態、47店舗を運営するまでになりました。しかし近年、このまま既存事業が伸び続けるのは難しいと考えるようになりました。なぜなら競合店や大型店などがどんどん誕生し、外食産業自体が成長から安定、成熟へ移る。また少子化といった環境の変化もある。そのため、もう一つの軸が欲しいと思ったのです。


──それがそば業態だったわけですね。なぜ、そば事業に目を付けたのでしょうか。


永瀬 そばと、これまで当社が手掛けてきた寿司というのは、実は非常に似ている部分があるのです。それは商品の価格帯の空白地帯です。私が23歳の時に寿司屋を始めた当時、周りのお寿司屋さんは時価が当たり前で、一般の方は会計が怖くてなかなかお店に来れませんでした。その時私は、当時の築地の玉寿司さんを参考にして、均一価格を取り入れて繁盛店を作ることができました。その後回転寿司が登場し、より安価で食べられるお店も出てきました。そして今では、同じ食べ物だけれども安価と高価の両方の価格帯が存在している。

そば屋も同様で、軒先に水車が回っているようなお店ではランチでも1200円以上、天ぷらなども食べると1700~1800円する一方、安価に食せる駅そばなども存在する。そこにチャンスを感じたのです。


──とはいえ、新たに業態を立ち上げるのは容易ではありません。どのように今の小木曽製粉所を作っていったのですか。


永瀬 実は小木曽製粉所は、その時当社で既に運営していた「みよ田」というそば店がもとになっています。このお店はたまたま知人から譲り受けた店舗だったのですが、日本酒なども取り揃え、夜も繁盛していました。そこで出会ったのが、その時の店長で現在の当社の専務である高砂です。そば職人としての能力は申し分なく、彼と一緒にやればいい業態ができると思ったのです。


パイロット店で9年かけ原価を調整製粉を内製化し高品質を低価格で


──みよ田のオープンから小木曽製粉所の一店舗出店まで約9年あります。この間、そば業態を研究されたと思いますが、みよ田で得られたものは何だったのでしょうか。


永瀬 一番感じたのは、食材原価の重要性です。これまで当社で手掛けてきた業態の原価でいうと、海鮮居酒屋が38~40%、お寿司屋だと40%、回転寿司で45~50%もありました。つまり何を言いたいかと言うと、魚は素材直球型なんです。高く売れるのは、元が高いということです。しかしみよ田の数字をずっと見ていると、手を加えれば加えるほど、原価率30%を圧倒的に切ってくる。そこでまずはこの部分を専務と話して、ただ安価にするだけではなく、本物に近いものを安価で提供しようと考えたのです。


──原価のコントロールを図るためにどのようなことを行ったのですか。


永瀬 小木曽製粉所という店名通り、自社で製粉することで食材原価を下げています。これがそば粉を普通に大手のそば屋さんから購入していると、なかなかそうはいきません。製粉は本社近くの店舗敷地内にて、石臼と金臼製粉機を使い、独自のブレンドで製粉しています。


──そば粉を挽く際に一般的なのは、「ロール挽き」という金属のロールが回っているところを通して潰す手法です。臼だけだと、手間と時間がかかって効率が悪くなるのではないのでしょうか。


永瀬 そこは確かに非効率ではありますが、それよりも大切なのは美味しいそばを提供すること。美味しいそばを提供するためには手作り、つまり石臼で挽くことです。実際にロール挽きで製粉すると熱が発生し、そばの香りが飛んでしまいます。ですから工場を大きくして機械化、オペレーション化をして大量生産するという考えは、最初から持っていません。


──味を維持するために必要なアナログ化をどこまで追求できるかということですね。


永瀬 当社は製麺についても、本部から送られてきたそば粉を各店舗にある製麺機で行います。そばというものはシンプルですが、非常に繊細なものでもあります。その日の湿度のパーセンテージによって水量の配合なども変えなければなりませんから、ほとんど手仕事に近い。当社は寿司屋を行っていた頃から「海なし県に鮮度を」を合言葉にしてきました。そばも同様で、より本格的なものを目指しています。


将来的にフードコートの比率を半数にスタッフの労働環境改善にも

──小木曽製粉所は品質にこだわる一方で、ざるそばの小・中・大サイズをすべて500円で提供するなど、コストパフォーマンスが高いのも特徴です。

▲そばの質だけではなく、豊富なトッピングも特長


永瀬 客単価は720円で、イメージとしては大ざるにトッピングの天ぷらを食べるような形です。また当社はトッピングや季節メニューの開発も積極的に行っています。たとえば、信州木曽伝統の無塩漬物であるすんきを用いた「木曽すんきそば」や、信州山形村産の長芋をつかった「とろろ」、同じく信州山形産の新ごぼうを使った「ごぼうかき揚げ」などがあります。これらをトッピングの天ぷらとして提供したり、年に6回発表する季節メニューとして提供しています。地元の生産者の方たちと提携し、その地域のこだわりのあるブランドと合体させ、「信州発」というキーワードで発信していきたいと思っています。


──現在は25店舗を出店していますが、中長期的な出店計画は。


永瀬 3年後に50店舗、8~10年後の100店舗までを視野に入れています。そしてその内、半数の50店舗をフードコートにしたいと思っています。現状では路面店の比率の方がやや多いので、そこは徐々に変化していくと思います。

──フードコートでの出店比率を高める理由は。

永瀬 大きく2点あります。まず1点目が競合の少なさ。実はモールにはレストランとしてのそば屋はあるのですが、フードコートには本格的なそば屋がほとんどないのです。また2点目として、路面店は立地の取り合いが発生するので、その中で争っていくのはなかなか厳しい。

また仮に良い立地が獲れたとしても、路面店の賃料は負担も大きい。他社さんはその分を補うために朝の6時から夜の23時まで営業をしたり、300円台の低額ランチを出したりしていますが、私たちは朝から夜中までの営業は推奨しておらず、午前11時から夜の21時頃までを主体にしています。


──そば業態の魅力は。


永瀬 私自身、これまで長い間、様々な飲食事業を行ってきましたが、これほど安定した事業は少ないです。ですから事業として、もう一つの軸を作りたいという方に対して積極的に発信し、将来的には1社で3店舗くらい展開してもらえるのが理想ですね。


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